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本編
第13話_決着の時-3
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「…いつから意識するようになった?」
「! …あんまりはっきりしねぇけど、多分海行ってた時からかな」
「…まぁそうだろな。お前、あん時くらいから何かおかしかったもんな」
「うん。…なにしろ俺、誰か好きになったり付き合ったりしたことも無かったからさ。…だから蒼矢のことも、幼馴染とか親友としての好きだってずっと思ってきたけど、なんか違うな…ってなって…、そこから」
手元を見ながらぽつぽつと内なる思いを語る烈へ、影斗は更に問いかけていく。
「俺が言えた義理じゃねぇけど、自分の"恋愛対象"については?」
「…父ちゃんと母ちゃん見てきたから、疑問には思ったよ。そうじゃないよなって思い込もうとしてた…かも。でも影斗にこの前言われて、認めたくないってか、自分の中ではっきりさせたくないって思ってるだけだったってことに気付かせてもらった」
――女でも男でも構わねぇよ。性的に惹かれるとか、自分のものにしてぇとか、そういう風に感じた奴はいねぇのか?――
「それで、ちゃんと考え直して…やっぱり俺何もおかしくねぇなって、自分の中で納得出来たんだ」
「…なるほどな」
結果的に烈に気付きを与えてしまったことになったものの、長いこと膠着状態の立場に置かれていた影斗にとってはそれが狙いでもあったため、息をつくだけにとどまった。
「そっか、影斗もか…、俺やっぱり全然周り見えてなかったな。よく考えれば今までの影斗の行動もわかるし、俺もきっと同じことしてる」
「わかったところでもう遅いんだけどな」
「――いや、やっぱり言わせてくれ、影斗。…申し訳ないけど、やっぱりお前の期待には応えられないと思う」
「…あ?」
眉根を寄せ、不快感を表出する影斗へ、烈はまっすぐな、真剣な眼差しで見返していた。
「俺…蒼矢のこと好きだけど、影斗みたいに自分のものにしたいってはっきりとは思ってねぇんだ。あいつの方の気持ちだってあるし…女が好きかもしれねぇ可能性だって全然あるわけじゃん?」
「…!」
「もちろんちゃんと独占欲はあるし、何があっても絶対守るつもりではいる。でも、それ以外は無理強いしたくないんだ。蒼矢の気持ちを大事にしつつ、少しずつ気付いてくれたらいいなと思ってる」
頬を染め、言葉を慎重に選びながら思いのたけを伝えてくるその面差しに、影斗は険しかった表情を徐々に戻し、ぽかんと見返していたが、やがて長く息をつきながら目をそらした。
「! …まぁ、不満だとは思うけど…」
「いや。いやいや、もういいわ。…おトボケ同士で宜しくやってろよ、もう」
慌てる烈を置き、影斗は彼へ背を向けた。
「この話はこれでお開きだ。…切り替えてくぞ」
そう告げ、軽く振り返った影斗の視線には、既に別の鋭さが込められていた。
それを受けた烈も少し目を見開いたあと表情を緊張させ、瞳に闘志の炎を灯らせた。
「! …あんまりはっきりしねぇけど、多分海行ってた時からかな」
「…まぁそうだろな。お前、あん時くらいから何かおかしかったもんな」
「うん。…なにしろ俺、誰か好きになったり付き合ったりしたことも無かったからさ。…だから蒼矢のことも、幼馴染とか親友としての好きだってずっと思ってきたけど、なんか違うな…ってなって…、そこから」
手元を見ながらぽつぽつと内なる思いを語る烈へ、影斗は更に問いかけていく。
「俺が言えた義理じゃねぇけど、自分の"恋愛対象"については?」
「…父ちゃんと母ちゃん見てきたから、疑問には思ったよ。そうじゃないよなって思い込もうとしてた…かも。でも影斗にこの前言われて、認めたくないってか、自分の中ではっきりさせたくないって思ってるだけだったってことに気付かせてもらった」
――女でも男でも構わねぇよ。性的に惹かれるとか、自分のものにしてぇとか、そういう風に感じた奴はいねぇのか?――
「それで、ちゃんと考え直して…やっぱり俺何もおかしくねぇなって、自分の中で納得出来たんだ」
「…なるほどな」
結果的に烈に気付きを与えてしまったことになったものの、長いこと膠着状態の立場に置かれていた影斗にとってはそれが狙いでもあったため、息をつくだけにとどまった。
「そっか、影斗もか…、俺やっぱり全然周り見えてなかったな。よく考えれば今までの影斗の行動もわかるし、俺もきっと同じことしてる」
「わかったところでもう遅いんだけどな」
「――いや、やっぱり言わせてくれ、影斗。…申し訳ないけど、やっぱりお前の期待には応えられないと思う」
「…あ?」
眉根を寄せ、不快感を表出する影斗へ、烈はまっすぐな、真剣な眼差しで見返していた。
「俺…蒼矢のこと好きだけど、影斗みたいに自分のものにしたいってはっきりとは思ってねぇんだ。あいつの方の気持ちだってあるし…女が好きかもしれねぇ可能性だって全然あるわけじゃん?」
「…!」
「もちろんちゃんと独占欲はあるし、何があっても絶対守るつもりではいる。でも、それ以外は無理強いしたくないんだ。蒼矢の気持ちを大事にしつつ、少しずつ気付いてくれたらいいなと思ってる」
頬を染め、言葉を慎重に選びながら思いのたけを伝えてくるその面差しに、影斗は険しかった表情を徐々に戻し、ぽかんと見返していたが、やがて長く息をつきながら目をそらした。
「! …まぁ、不満だとは思うけど…」
「いや。いやいや、もういいわ。…おトボケ同士で宜しくやってろよ、もう」
慌てる烈を置き、影斗は彼へ背を向けた。
「この話はこれでお開きだ。…切り替えてくぞ」
そう告げ、軽く振り返った影斗の視線には、既に別の鋭さが込められていた。
それを受けた烈も少し目を見開いたあと表情を緊張させ、瞳に闘志の炎を灯らせた。
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