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本編

第13話_決着の時-2

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影斗エイトは、本殿の裏手へ回ってきたところで足を止める。
まばらに落ちる黄色く色付いた葉を踏みながら、同じく止まったレツへ振り返った。

「――葉月から聞いたけど。"襲われた"ってどういうことだ?」
「…!」

にわかな問いかけに、烈は少し目を見開き、ついで気まずげな表情を浮かべる。

「…悪い。油断しちまった」
「謝って欲しいわけじゃねぇよ。お前はそれで、悔しいとか情けねぇとか思わねぇのかってんだよ」

影斗は視線を鋭くさせ、黙ったまま眉を下げる烈へ畳みかけていく。

「首絞められたんだってな。…モーションもかけられたんじゃねぇか?」
「…」
「いくらあいつじゃない・・・・・・・にしたって、いいようにやられ過ぎだろ。逆に組み伏せて、言うこと聞かせるくらいしろよ。でけぇ図体してんだから、それくらい簡単にできるだろ」
「っ…そんなこと…」
「がっかりさせんなよ、俺を」

なにか言い訳を漏らそうとした烈を制し、影斗は彼の眼前にまで距離を詰めた。

「俺は、お前だから・・・引いたんだ。お前以外の奴相手なら手放す気なんざさらさら無かったし、どんな手使ってでも必ず俺のものにするつもりだった。…でもお前は、俺が絶対手に入れられないものを持ってるし、それが無きゃ絶対敵わねぇと思った。だから譲った」
「……!」
「今でもはらわた煮えくり返ってるし、その面ボコボコにしてやりてぇとも思ってる。でもそれと同じくらい、お前になら賭けていいとも思ってんだ。こいつになら任せてもいいってな」

爆発しそうな激情を抑え込み、影斗は鼻先の烈へ、憤怒の形相で静かに言い放った。

「前も言ったけど、お前を認めた俺の期待を裏切るな。…二度目はねぇぞ」

空気も震えあがるような彼の怒気を、烈は口を半開いたまま浴びていたが、やがて止めていた呼吸と共に、小さく言葉を呟いた。

「……影斗も、蒼矢ソウヤのこと好きだったのか…?」
「……あぁ!?」

その一言に、ついに声を荒げ、影斗は勢いで烈の胸ぐらを掴みあげた。

「…お前…、今なんつった!?」
「うわっ、ごめ…、影斗は、蒼矢が」
「言い直さなくていい!! 阿呆が!!」

思い切り突き飛ばすように解放したものの、数歩後ろへよろめくにとどまった烈へ舌打ちし、影斗は苛立ちを隠さないまま彼を睨んだ。

「…そうだよ。お前、今の今まで気付かなかったってのか?」
「うん。なんか…自分のことで結構いっぱいいっぱいで」
「じゃあ伊豆行った時の帰り、蒼矢あいつを自分のバイクに乗せてくって俺に宣言してったのは、なんだったんだ?」
「…無性に乗せたくなったから。前々から、いつも影斗ばっかり乗せててずるいなとも思ってたけど。でも、お前のバイクに乗せるのが当たり前みたいになってたから、…一応言わなきゃなって」
「…それが宣戦布告だと思ったあの時の俺の思考回路を、今すぐ消し飛ばしてぇ」
「ごめん…」
「謝んな! どいつもこいつもっ…」

再び怒鳴った後、影斗は大きく息を吐き出した。
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