8 / 62
本編
第2話_胸に残る澱-3
しおりを挟む
葉月は、苡月を蒼矢の隣に座らせる。
まだ少し紅潮していた苡月だったが、上目遣いに蒼矢へ見上げた。
「烈君は、土曜日なのに今日も配達ですか?」
「うん。酒屋さんは土日は休みじゃないからね…今日は都外まで配達周りに行くって連絡が来たよ」
会話の中に出てきた花房 烈は陽の従兄で、葉月の生徒である蒼矢とも幼馴染であるため、苡月も以前から度々会っている。
先だって苡月がこの神社へ住まいを移しに帰ってきた日も、烈は家業である酒屋の仕事が入っていたが夕方には顔を出し、夕食を囲った。
「忙しいんですね…そういえば、戻ってきてからまだ影斗さんに会えてないんです」
「!」
「たまに僕がこっちに遊びに来てたその度に、先にこの家に来ててお泊りしてる印象が強くて…そっちの方が本当は違和感なのに、今いない方がなんだか新鮮に思えます」
また、もう一人の宮島 影斗も葉月と親しく、もちろん苡月とも面識はあるし、会う度に可愛がって貰えていた。しかし先述の日、烈と同様夕食に合流するはずだった彼は姿を見せず、こちらへ戻ってきてから一度も会えていなかった。
「…影斗さんも忙しいんでしょうか?」
「…あぁ…、」
話題を作ろうと、少しはにかみながら話しかけた苡月だったが、蒼矢は再びわずかに言葉を詰まらせる。
「…影斗先輩は、忙しいというか…少しの間来られなくなったみたいで」
「えっ…来られなくなったって、何かあったんですか? 病気とかですか…?」
「ああ、えっと…先輩に何かがあったわけじゃなくて、理由は…俺もちょっと」
「…?」
蒼矢の言動と表情に、目をぱちくりさせる苡月の横から、またしても葉月が会話へ割って入る。
「――影斗は大学の方が忙しくなっちゃったみたいでね。しばらくこっちには来ないって、僕も聞いてるよ」
「影兄もあれで大学卒業年だしな! 俺はぶっちゃけ、いまだに本当に大学通ってんのか疑ってるけど」
「いやいや、彼はやるべきことはやってるよ。自分が損するような行動はしないタイプだからね」
「確かに―。ぬかりねぇんだよなぁ、あの人…」
「そうなんだ。…じゃあ、まだしばらくは会えないかな…」
「お前もうこっち住みなんだし、時期が過ぎればいくらでも会えるって! 影兄のSNS教えとくか?」
「! ううん…直接会って聞きたいから、大丈夫」
うまい具合に陽も会話に乗ってきて話が締まり、安堵する中に困惑と疑念を帯びた表情を浮かべながら見てくる蒼矢へ、葉月は微笑みを返した。
まだ少し紅潮していた苡月だったが、上目遣いに蒼矢へ見上げた。
「烈君は、土曜日なのに今日も配達ですか?」
「うん。酒屋さんは土日は休みじゃないからね…今日は都外まで配達周りに行くって連絡が来たよ」
会話の中に出てきた花房 烈は陽の従兄で、葉月の生徒である蒼矢とも幼馴染であるため、苡月も以前から度々会っている。
先だって苡月がこの神社へ住まいを移しに帰ってきた日も、烈は家業である酒屋の仕事が入っていたが夕方には顔を出し、夕食を囲った。
「忙しいんですね…そういえば、戻ってきてからまだ影斗さんに会えてないんです」
「!」
「たまに僕がこっちに遊びに来てたその度に、先にこの家に来ててお泊りしてる印象が強くて…そっちの方が本当は違和感なのに、今いない方がなんだか新鮮に思えます」
また、もう一人の宮島 影斗も葉月と親しく、もちろん苡月とも面識はあるし、会う度に可愛がって貰えていた。しかし先述の日、烈と同様夕食に合流するはずだった彼は姿を見せず、こちらへ戻ってきてから一度も会えていなかった。
「…影斗さんも忙しいんでしょうか?」
「…あぁ…、」
話題を作ろうと、少しはにかみながら話しかけた苡月だったが、蒼矢は再びわずかに言葉を詰まらせる。
「…影斗先輩は、忙しいというか…少しの間来られなくなったみたいで」
「えっ…来られなくなったって、何かあったんですか? 病気とかですか…?」
「ああ、えっと…先輩に何かがあったわけじゃなくて、理由は…俺もちょっと」
「…?」
蒼矢の言動と表情に、目をぱちくりさせる苡月の横から、またしても葉月が会話へ割って入る。
「――影斗は大学の方が忙しくなっちゃったみたいでね。しばらくこっちには来ないって、僕も聞いてるよ」
「影兄もあれで大学卒業年だしな! 俺はぶっちゃけ、いまだに本当に大学通ってんのか疑ってるけど」
「いやいや、彼はやるべきことはやってるよ。自分が損するような行動はしないタイプだからね」
「確かに―。ぬかりねぇんだよなぁ、あの人…」
「そうなんだ。…じゃあ、まだしばらくは会えないかな…」
「お前もうこっち住みなんだし、時期が過ぎればいくらでも会えるって! 影兄のSNS教えとくか?」
「! ううん…直接会って聞きたいから、大丈夫」
うまい具合に陽も会話に乗ってきて話が締まり、安堵する中に困惑と疑念を帯びた表情を浮かべながら見てくる蒼矢へ、葉月は微笑みを返した。
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
売れ残りオメガの従僕なる日々
灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才)
※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!
ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。
無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる