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本編

第7話_繋がれる首輪-4

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気分で閃いただけの惨酷な契約に、蒼矢ソウヤの双眸は瞬時に見開かれ、[木蔦ヘデラ]へと凝視したまま固まった。

「それでも、お前の要求については何の保証もしないがね。俺の気が変わればお前はお役御免だし、この先いつでも花房 烈ハナブサ レツの身体を頂くだろう」

反応を失った獲物へ、[木蔦ヘデラ]は冷たく嗤う。

「…言っておくが、彼に[俺の正体]を明かすなどという下手な真似はするなよ。彼には"種"を植え付けてあってね…既に[俺]の"所有物"になっている」

そう言うと、[木蔦ヘデラ]は口の中から指のひと関節ほどの大きさの"種"を現して舌に載せ、指に摘んで取り出す。
それを倒れる蒼矢へ見せつけるように示すと、ついで少し離れて倒れる先ほどの青年へ視線を動かし、種を指で弾く。

失神したまま放置されていた青年の身体の上に、弾かれた種が落ちる。
すると、周りの地面から突如おびただしい蔦が生えて出て、うごめきながらするすると彼の身体を這っていく。
青年は見る間に深緑の蔦に全身を覆われ、その衣服の一片も残らず蔦の繭に閉じ込められると、繭ごと徐々に薄くなり、溶けるようにその場から姿を消していく。

「……っ!!」

視線を誘導され、その光景の一部始終を眼前に捉えた蒼矢は、言葉を発せずにただ息を飲む。
青年は[木蔦ヘデラ]の手により[異界]へ送られたのだろうと、何の疑いもなく断定出来た。
硬直するその面差しへ、向き直った[木蔦ヘデラ]は続けた。

「"これ"を植え付けられた人間の末路だ。…意味は解るよな?」
「……」
「…俺が[侵略者]と知れた時点で、花房 烈はすぐさま[異界]送りにする。…今日のように、お前が少しでも俺に抵抗する素振りを見せた場合でも、同じように彼が犠牲になるぞ」

[木蔦ヘデラ]は蒼矢の上着を探り、彼のスマホを抜き取る。そして蒼矢の手を取って指紋認証でロックを解除すると、勝手に操作し始める。

「――俺の連絡先を登録しておいた。SMSが届いたら、指定する場所へすぐ来るように。…俺の気に触れないよう、せいぜい励めよ…人間を守護する『セイバー』として、お前も本望だろう?」

そう言い捨てると、[木蔦ヘデラ]はロングコートを翻し、元来た道を引き返していく。

姿が消え、路地裏の空間にひとり残された蒼矢は重く気だるい身をゆっくりと起こし、背後の壁に寄り掛かった。

「…」

地面へ打ち捨てられた『起動装置』をぼんやりと見やり、ついで傍らに転がるスマホへと視線を流す。

――彼に手を出して欲しくないんだろう? だったらお前が代わりに俺の糧となり、その身を全て捧げろ――

蒼矢は拾いあげたスマホを固く握り、顔を膝に埋めた。

…烈…!!
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