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本編

第2話_それぞれの転機の時-2

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彼の言う"こないだ"とは、約1か月前の戦闘で、とあるいきさつを経て[侵略者]に意識を支配された蒼矢アズライトがセイバーズと敵対し、一戦交えた時のことを指していた。
[侵略者]を倒すことでアズライトの意識を取り戻すことが出来たのだが、操られていた間の記憶は『現実世界』『転異空間』いずれで起きたことも、蒼矢ソウヤの頭から全て抜け落ちてしまっていたのだった。

当時の事案を覚えている側のアキラは、素直な感想を続ける。

「攻撃の速度も重さもめちゃくちゃだったし、装具のリーチ長いのに遠隔攻撃も出来ちまうし、挙句にはセルフ防御だろ? なんかもうひとりで完結しちゃってるじゃん。万能過ぎて俺ら要らないんじゃねぇかって思っちゃったもんね」

やや興奮気味に語る彼とは対照的に、当の評価されている蒼矢は手元に視線をやったまま、曇りのある表情を浮かべていた。

「…まぁ、蒼兄あおにぃが覚えてないんじゃあ、話しても仕方ねぇんだけどさ…、…ごめん」

そんな蒼矢を見、陽はばつが悪くなったのか口調が尻すぼまりになり、同じように視線を落とした。

沈黙が降りる中、影斗エイトが口を開ける。

「ポテンシャルがあるってことが判っただけでも収穫には違いねぇ。この先きっかけ増やせば使えるようになるだろ」
「そうだね…、今まで戦闘補助が主だったから前線に慣れてないってことも大きいしね。徐々にでいいと思うよ」
「――にしても、早く全力出せるようになるに越したことはねぇからな」

フォローするように相槌を打った葉月ハヅキだったが、影斗はすぐに翻した。

「折角『凍氷トウヒョウ』が使えるようになったんだ、貴重な攻撃手段を使わせねぇまま後衛に下げとくなんてことはできねぇ。…前も言った通り、お前には"俺の代わり"になって貰わなきゃ困る」
「…!」

その言葉に、蒼矢は顔を上げる。
強張り、緊張を帯びる面持ちに、影斗は淡々と続けた。

「攻撃手としても使えるようになった今、俺が抜ける穴を埋められるのは『アズライトお前』しかいねぇんだ。立ち回りは慣れてくにしても、自己防御は早く使えるようになれ。烈にいつまでも壁役やらせてやるな」
「…はい」

影斗からの指示に静かに、しかしはっきりと応える蒼矢の横顔を眺め、レツはみずからの眼前のテーブルへと視線を戻し、腕を組んだ。
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