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ダークブレット日本支部崩壊7
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その手はとても細く小さく感じた。
『何も出来なかった……』
そんな思いだけが、エリエの心を締め付ける。
アジトに行って星を取り戻す為に必死に戦った。だが、結果。絶体絶命の状況で二度も星に救われた挙句に、お礼を言おうにも今の星には記憶がない。
楽しかった日々の出来事の全てを、この一時の事件で全て奪われてしまったのだ。
その責任をエリエが感じるのは無理もない……。
まだエミルはその事実を知らないからか、星を抱きしめながらとても嬉しそうに微笑み掛けている。それが失意の中にいるエリエの心の傷を更に深く抉っていた。
* * *
その頃、デイビッド達は目の前で音を立てて崩れる城を遠巻きに眺め、その場にいた全員が呆然としていた。
敵の兵士達もこれまでの生活していた拠点がなくなったことで、そこら中から不安の声が上がっている。
瞬く間に灰になっていく城を見て、メルディウスは呆然としながら大きくため息を漏らしていた。
「――どうすんだよ。これ……」
その言葉に答えるように、隣に立っていたバロンが腰に手を当て他人事の様に呟く。
「とりあえず。これはもう住めないだろ……」
「そうだね。なら街に戻ろうか、ここにはもう用事はないからね」
「――って、うおっ! デュラン。脅かすなよ!」
突然なんの脈絡もなく隣に現れた白いマントを羽織った男に、メルディウスが大きく仰け反る。
「俺は今、ディーノと名乗っている。呼ぶならディーノで頼むよ」
大げさに身を反らせるメルディウスに、デュランが呆れ顔でため息を漏らす。
それを聞いて、メルディウスが顔を真っ赤にして叫ぶ。
「ばか野郎が! ゲーム内ではパーティー以外に名前が表示されないからって、お前は偽名を使い過ぎんだよ! ってか、俺達以外にパーティーなんて組んだことねぇーだろお前!!」
デュランは激昂するメルディウスを余所に。
「僕に仲間は必要ないからね」
っとさらっと答える。
だが、それは今の状況下では火に油を注ぐようなものだ――その言葉に、更に激怒するメルディウスを無視して、デュランは歩いていった。
どうしても掴み所のない彼に、メルディウスは悔しそうに歯を噛み締めた。
その横に立っていたバロンが、そんなメルディウスの脇腹を小突く。
「いでっ! なっ、なにしやがるバロン!」
「ふん。バカじゃないのか? それで俺様達はどうするんだ? こんだけの数の人間を連れて移動するのは結構な手間だぜ……」
行き場を失ったダークブレットの兵士達を見渡すと我に戻り、状況をもう一度整理するようにメルディウスは唸る。
この状況では、ダークブレットの者達の受け入れ先が重大な問題である。
数十人くらいならまだしも、地を覆い尽くすほどの人集りに、これだけの量になるとさすがにもう一つ街を作った方が早いレベルだ。
だが、そのまま捨て置くわけにもいかない問題でもある。今はリーダーをデュランが討ち取ったことと、生活の拠点であった城がなくなったことで敵は意気消沈している。
ずっとこのまま大人しくしててくれればいいのだが、そうもいかないだろう。自然分裂を起こせば、相当数が生活資金と寝床を求めてまた犯罪に手を染めかねない。
メルディウスとバロンは腕組みしながら立ち尽くしていると、ちょうど小虎と話をしていたフィリスが手を振りながら戻ってきた。
「お兄ちゃ~ん!」
さすがに実の妹には甘いのか、駆けて来る妹の姿に眉を吊り上げ険しい表情を浮かべていたバロンの表情が和らぐ。
「おう。どうした、我が妹よ」
「もう! その妹ってのやめてよね! 私にはちゃんと考えた名前があるのよ!?」
頬を膨らませて、不満を口にするフィリスに、困り顔でバロンが頭を掻いている。
すると、今度は小虎と紅蓮がやってきて、その隣で顎に手を当てて唸っているメルディウスに紅蓮が声を掛けた。
「メルディウス。マスターから伝言です」
「――んっ? なんだ? 紅蓮。ジジイがなんだって?」
「はい。『一段落着いたら始まりの街に戻ってこい』だ、そうです」
無表情のまま紅蓮がそう伝えると、メルディウスの顔を見上げる。
メルディウスは不機嫌そうに眉を寄せながら呟く。
「けっ、あのジジイ。大事な時に居ねぇーくせに、命令してきやがるとはいい度胸じゃねぇーか」
不服そうに顔を引き攣らせながら口元に笑みを浮かべて遠くを見つめるメルディウスに、紅蓮が難しい顔をして言った。
「メルディウス。私もマスターの意見に賛成です。このままここに留まっていても何にもなりません」
「……くっ、分かった。とりあえず。あのバカにも伝えてくる!」
紅蓮がマスターの肩を持つような発言をしたことで、更に不機嫌になりながらもメルディウスはデュランの方へと向かって歩き出した。
『何も出来なかった……』
そんな思いだけが、エリエの心を締め付ける。
アジトに行って星を取り戻す為に必死に戦った。だが、結果。絶体絶命の状況で二度も星に救われた挙句に、お礼を言おうにも今の星には記憶がない。
楽しかった日々の出来事の全てを、この一時の事件で全て奪われてしまったのだ。
その責任をエリエが感じるのは無理もない……。
まだエミルはその事実を知らないからか、星を抱きしめながらとても嬉しそうに微笑み掛けている。それが失意の中にいるエリエの心の傷を更に深く抉っていた。
* * *
その頃、デイビッド達は目の前で音を立てて崩れる城を遠巻きに眺め、その場にいた全員が呆然としていた。
敵の兵士達もこれまでの生活していた拠点がなくなったことで、そこら中から不安の声が上がっている。
瞬く間に灰になっていく城を見て、メルディウスは呆然としながら大きくため息を漏らしていた。
「――どうすんだよ。これ……」
その言葉に答えるように、隣に立っていたバロンが腰に手を当て他人事の様に呟く。
「とりあえず。これはもう住めないだろ……」
「そうだね。なら街に戻ろうか、ここにはもう用事はないからね」
「――って、うおっ! デュラン。脅かすなよ!」
突然なんの脈絡もなく隣に現れた白いマントを羽織った男に、メルディウスが大きく仰け反る。
「俺は今、ディーノと名乗っている。呼ぶならディーノで頼むよ」
大げさに身を反らせるメルディウスに、デュランが呆れ顔でため息を漏らす。
それを聞いて、メルディウスが顔を真っ赤にして叫ぶ。
「ばか野郎が! ゲーム内ではパーティー以外に名前が表示されないからって、お前は偽名を使い過ぎんだよ! ってか、俺達以外にパーティーなんて組んだことねぇーだろお前!!」
デュランは激昂するメルディウスを余所に。
「僕に仲間は必要ないからね」
っとさらっと答える。
だが、それは今の状況下では火に油を注ぐようなものだ――その言葉に、更に激怒するメルディウスを無視して、デュランは歩いていった。
どうしても掴み所のない彼に、メルディウスは悔しそうに歯を噛み締めた。
その横に立っていたバロンが、そんなメルディウスの脇腹を小突く。
「いでっ! なっ、なにしやがるバロン!」
「ふん。バカじゃないのか? それで俺様達はどうするんだ? こんだけの数の人間を連れて移動するのは結構な手間だぜ……」
行き場を失ったダークブレットの兵士達を見渡すと我に戻り、状況をもう一度整理するようにメルディウスは唸る。
この状況では、ダークブレットの者達の受け入れ先が重大な問題である。
数十人くらいならまだしも、地を覆い尽くすほどの人集りに、これだけの量になるとさすがにもう一つ街を作った方が早いレベルだ。
だが、そのまま捨て置くわけにもいかない問題でもある。今はリーダーをデュランが討ち取ったことと、生活の拠点であった城がなくなったことで敵は意気消沈している。
ずっとこのまま大人しくしててくれればいいのだが、そうもいかないだろう。自然分裂を起こせば、相当数が生活資金と寝床を求めてまた犯罪に手を染めかねない。
メルディウスとバロンは腕組みしながら立ち尽くしていると、ちょうど小虎と話をしていたフィリスが手を振りながら戻ってきた。
「お兄ちゃ~ん!」
さすがに実の妹には甘いのか、駆けて来る妹の姿に眉を吊り上げ険しい表情を浮かべていたバロンの表情が和らぐ。
「おう。どうした、我が妹よ」
「もう! その妹ってのやめてよね! 私にはちゃんと考えた名前があるのよ!?」
頬を膨らませて、不満を口にするフィリスに、困り顔でバロンが頭を掻いている。
すると、今度は小虎と紅蓮がやってきて、その隣で顎に手を当てて唸っているメルディウスに紅蓮が声を掛けた。
「メルディウス。マスターから伝言です」
「――んっ? なんだ? 紅蓮。ジジイがなんだって?」
「はい。『一段落着いたら始まりの街に戻ってこい』だ、そうです」
無表情のまま紅蓮がそう伝えると、メルディウスの顔を見上げる。
メルディウスは不機嫌そうに眉を寄せながら呟く。
「けっ、あのジジイ。大事な時に居ねぇーくせに、命令してきやがるとはいい度胸じゃねぇーか」
不服そうに顔を引き攣らせながら口元に笑みを浮かべて遠くを見つめるメルディウスに、紅蓮が難しい顔をして言った。
「メルディウス。私もマスターの意見に賛成です。このままここに留まっていても何にもなりません」
「……くっ、分かった。とりあえず。あのバカにも伝えてくる!」
紅蓮がマスターの肩を持つような発言をしたことで、更に不機嫌になりながらもメルディウスはデュランの方へと向かって歩き出した。
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