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ダークブレット日本支部崩壊6
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エミルとイシェルは現実世界でも仲がいい同士。まさかそれが互いに敵意を持って向かい合うことになるなど、イシェルには想像もしていなかったことだろう……。
「……なんでなん? なんでそんな女守るんよ。エミル!!」
「…………」
だが、その返答に答えることもなく、エミルは無言のまま剣を抜くとイシェルに襲い掛かった。
エミルの攻撃は吸い込まれるように神楽鈴に当たると、小さくチリンと鈴が音を立てる。
微かに掠めただけなのだが、イシェルには攻撃によるダメージよりも、精神的なダメージの方が大きいのだろう。
何と言っても、今まで互いを尊重し合い喧嘩すらしたことのなかったエミルが、自分に対して剣を向けたのだ――いや、それどころか彼女は自分に攻撃を仕掛けてきたのだ。
口をあんぐりと開け信じられないという表情のまま、神楽鈴を握り締めるイシェルの耳元に、エミルの震えた声が飛び込んできた。
「イシェ……ご、ごめんなさい。でも、今は……今はこうするしかないのよ。分かってちょうだい……」
「そんなの信じられん! 信じたくない! なあ、エミルも本当は……」
そこまで言葉を口にして、イシェルは口を閉ざす。
それもそのはずだ。次に顔を上げてエミルの顔を見たイシェルの瞳に飛び込んできたのは、彼女の涙で潤む澄んだ青い瞳だった。
彼女の心の奥に秘めた思いを、イシェルは彼女のその瞳から、言わなくても『止む終えない』事情があると感じ取ることができた。
それが分かって少し安心したのか、イシェルは大きく息を吐き出して武器を手放し両手を上げた。
距離を取って二撃目に入ろうとしていたエミルはそんな彼女の突然の行動に驚きながら、ただただ呆気にとられて目を丸くさせている。
「――うちの完敗やね……あんたの好きにしたらええ……」
イシェルはそう吐き捨てるように呟き、したり顔で勝ち誇った様な視線を向けているライラを見つめた。
まあ、今の状況下ではイシェルがどんなにライラと戦いたいと思っていても、前を遮ってくるエミルとの戦闘は避けられない。
武器を持っていても戦えないのだから、その存在には何の意味もない。
それよりも武器を捨てて戦闘の意志を放棄したと思わせた方が、エミルの思惑通りに事を運びやすいだろうという彼女なりの配慮だったのだろう。
ライラは不敵な笑みを浮かべながら2人に歩み寄ると、ゆっくりとエミルの体を後ろから抱きしめる。
「……あっ。おっ、お姉様……なにを……」
いたずらな笑みを浮かべながら、エミルの首筋に指を滑り込ませると、エミルの顔を自分の方へと引き寄せて思わせぶりに呟いた。
「ふぅ~ん。別に貴女には用事はない……でも、可哀想だから……今夜、エミルと一緒に可愛がってあげましょうか?」
ライラのその発言に、イシェルの肩がピクピクと小刻みに揺れ始める。それは明らかに戦意を喪失したイシェルへの追い打ちとも言える行動だった……。
怒りで震えるイシェルに、エミルは驚きながら慌ててライラの方を向く。
「お姉様! それはいけません!! ……んっ」
エミルはライラの首に腕を回すと、強引に引き寄せ唇を重ねた。それをまじまじと見せつけられ、イシェルはあまりのことに怒りを通り越して、もはや言葉を失う。
そのやり取りを無言のまま見ていたエリエも思わず顔を赤らめ、その行動を食い入る様に見つめている。それを余所に、2人はしばらく抱き合いながら濃厚なキスをするとゆっくりと顔を離した。
ライラは熱を帯びて潤んだ瞳を向けるエミルの頬を優しく撫でると、猫撫で声でささやく。
「――可愛いわね、エミル。そう。貴女は私と2人きりがいいのね~」
「……はい」
頬を赤らめたエミルが潤んだ瞳でライラの顔を上目遣いで見ると、ライラが静かに頷く。
「分かったわ。貴女も私を他の子に取られたくないってことね……本当はその子に私達の仲の良さを見せつけてやろうと思ったんだけど、可愛い妹分の心を尊重してあ・げ・る♪」
ライラはそう呟いてエミルの頬に軽くキスをすると、心ここにあらずという感じに放心状態のイシェルを横目で見る。その後、エリエを呼び寄せると、4人はテレポートでサラザ達の居る場所へと戻った。
テレポートすると、エミルは眠ったままの星を見て慌てた様子で駆け寄ってその手で抱き寄せる。
「ああ、星ちゃん。良かった。良かったわ。本当に良かった……」
瞳に涙を浮かべながら何度も「良かった」と口にするエミルを見ていたエリエは、少し複雑な気持ちになる。
(……やっぱり。私なんかより、エミル姉が一番気にしてたんだ……それなのに私は、自暴自棄になって自分だけ焦って……本当に子供みたい……)
そう心の中で呟き、エリエは自分の手を見つめる。
結局戻ってきたのは星の体だけ、心は記憶と共にこの騒動の元凶にして、このゲームをデスゲームという名の牢獄へと変えた首謀者の狼の覆面を被った男の企みによって消されてしまった。
「……なんでなん? なんでそんな女守るんよ。エミル!!」
「…………」
だが、その返答に答えることもなく、エミルは無言のまま剣を抜くとイシェルに襲い掛かった。
エミルの攻撃は吸い込まれるように神楽鈴に当たると、小さくチリンと鈴が音を立てる。
微かに掠めただけなのだが、イシェルには攻撃によるダメージよりも、精神的なダメージの方が大きいのだろう。
何と言っても、今まで互いを尊重し合い喧嘩すらしたことのなかったエミルが、自分に対して剣を向けたのだ――いや、それどころか彼女は自分に攻撃を仕掛けてきたのだ。
口をあんぐりと開け信じられないという表情のまま、神楽鈴を握り締めるイシェルの耳元に、エミルの震えた声が飛び込んできた。
「イシェ……ご、ごめんなさい。でも、今は……今はこうするしかないのよ。分かってちょうだい……」
「そんなの信じられん! 信じたくない! なあ、エミルも本当は……」
そこまで言葉を口にして、イシェルは口を閉ざす。
それもそのはずだ。次に顔を上げてエミルの顔を見たイシェルの瞳に飛び込んできたのは、彼女の涙で潤む澄んだ青い瞳だった。
彼女の心の奥に秘めた思いを、イシェルは彼女のその瞳から、言わなくても『止む終えない』事情があると感じ取ることができた。
それが分かって少し安心したのか、イシェルは大きく息を吐き出して武器を手放し両手を上げた。
距離を取って二撃目に入ろうとしていたエミルはそんな彼女の突然の行動に驚きながら、ただただ呆気にとられて目を丸くさせている。
「――うちの完敗やね……あんたの好きにしたらええ……」
イシェルはそう吐き捨てるように呟き、したり顔で勝ち誇った様な視線を向けているライラを見つめた。
まあ、今の状況下ではイシェルがどんなにライラと戦いたいと思っていても、前を遮ってくるエミルとの戦闘は避けられない。
武器を持っていても戦えないのだから、その存在には何の意味もない。
それよりも武器を捨てて戦闘の意志を放棄したと思わせた方が、エミルの思惑通りに事を運びやすいだろうという彼女なりの配慮だったのだろう。
ライラは不敵な笑みを浮かべながら2人に歩み寄ると、ゆっくりとエミルの体を後ろから抱きしめる。
「……あっ。おっ、お姉様……なにを……」
いたずらな笑みを浮かべながら、エミルの首筋に指を滑り込ませると、エミルの顔を自分の方へと引き寄せて思わせぶりに呟いた。
「ふぅ~ん。別に貴女には用事はない……でも、可哀想だから……今夜、エミルと一緒に可愛がってあげましょうか?」
ライラのその発言に、イシェルの肩がピクピクと小刻みに揺れ始める。それは明らかに戦意を喪失したイシェルへの追い打ちとも言える行動だった……。
怒りで震えるイシェルに、エミルは驚きながら慌ててライラの方を向く。
「お姉様! それはいけません!! ……んっ」
エミルはライラの首に腕を回すと、強引に引き寄せ唇を重ねた。それをまじまじと見せつけられ、イシェルはあまりのことに怒りを通り越して、もはや言葉を失う。
そのやり取りを無言のまま見ていたエリエも思わず顔を赤らめ、その行動を食い入る様に見つめている。それを余所に、2人はしばらく抱き合いながら濃厚なキスをするとゆっくりと顔を離した。
ライラは熱を帯びて潤んだ瞳を向けるエミルの頬を優しく撫でると、猫撫で声でささやく。
「――可愛いわね、エミル。そう。貴女は私と2人きりがいいのね~」
「……はい」
頬を赤らめたエミルが潤んだ瞳でライラの顔を上目遣いで見ると、ライラが静かに頷く。
「分かったわ。貴女も私を他の子に取られたくないってことね……本当はその子に私達の仲の良さを見せつけてやろうと思ったんだけど、可愛い妹分の心を尊重してあ・げ・る♪」
ライラはそう呟いてエミルの頬に軽くキスをすると、心ここにあらずという感じに放心状態のイシェルを横目で見る。その後、エリエを呼び寄せると、4人はテレポートでサラザ達の居る場所へと戻った。
テレポートすると、エミルは眠ったままの星を見て慌てた様子で駆け寄ってその手で抱き寄せる。
「ああ、星ちゃん。良かった。良かったわ。本当に良かった……」
瞳に涙を浮かべながら何度も「良かった」と口にするエミルを見ていたエリエは、少し複雑な気持ちになる。
(……やっぱり。私なんかより、エミル姉が一番気にしてたんだ……それなのに私は、自暴自棄になって自分だけ焦って……本当に子供みたい……)
そう心の中で呟き、エリエは自分の手を見つめる。
結局戻ってきたのは星の体だけ、心は記憶と共にこの騒動の元凶にして、このゲームをデスゲームという名の牢獄へと変えた首謀者の狼の覆面を被った男の企みによって消されてしまった。
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