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第二部 冒険者になってやろう!
第三十八話 ボースハイトを追ってやろう!
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コレールが先頭に立ち、ボースハイトの後を追う。
グロルは最後尾で唇を尖らせている。
コレールは首をぶんぶんと振って、ボースハイトを捜すが、ボースハイトの姿はない。
「ボース、飛ぶの早いよ……」
コレールはふと立ち止まって、周囲にボースハイトの姿がないか、捜し始める。
本当にこっちであってるのか、不安になっている様子だ。
こういうときに役に立つ魔法がある。
《魔力探知》だ。
頭のないゾンビフラットリーがボースハイトを探すために使っていた魔法だ。
我が輩は目を閉じ、ボースハイトの魔力を探す。
十時の方向に、ボースハイトの魔力を見つけた。
「こっちだ」
我が輩は目を開け、ボースハイトの魔力が感じられる方向へと歩き出す。
「え? ボース、いた!?」
「ああ」
コレールが我が輩に急ぎ足でついてくる。
その後ろにふてくされたグロル、そして、無表情のバレットが続く。
グロルがわざとゆっくりと歩いたため、ボースハイトにはなかなか追いつけなかった。
□
ようやく、砂漠を抜けた。
砂漠特有の暑さが鳴りを潜めた頃、一つの村が見えてきた。
「ボースも、ここに立ち寄ってるかもしれないな」
「確かに。この村の中にいる」
ボースハイトの魔力からすると、この村に滞在しているのは間違いない。
「それにしても、妙だな……」
「何がだ?」
「これまで、ボースハイトは我が輩達から逃げるように動き続けていた。だが、先程から一切動いていない」
「え? そ、それって、ボースに、何かあったってことか?」
「どうだろうな」
「は、早く、合流しよう。今、ボースが立ち止まってるなら、追いつける」
我が輩達は村へと足を踏み入れた。
この村は祭りの最中のようだ。
通りには多くの出店が開かれ、村の何処にいても、陽気な音楽が聞こえてくる。
「す、凄い人の数だ。ボース、見つかるかな……」
「この人混みの中から、ボースハイトを見つけるのはそう難しくないだろう。周りを見てみろ」
祭りに参加しているのは、グロルと同じ法衣を着た者ばかりだ。
そのため、グロルは自分が背教者だとバレないように、お淑やかに振る舞っている。
ボースハイトの服装は法衣ではなく、魔法使いのローブだから、この村の中にいるのなら見つけやすかろう。
「……ん?」
祭りには法衣を着た者ばかり?
それってまさか……。
「この村はフラットリーの祭りでもしてるのか」
「はい。ここはフラットリー教の聖地・ブジャルド。今日はフラットリー様が初めて我々に力をお貸し下さった記念の日ですから、それを祝しているのですな」
「あいつ、聖地と祭りもあるのか」
フラットリーの奴、我が輩のいる世で本当に好き放題しおって……。
「今年はフラットリー様が我々に力をお貸し下さってから千年の節目の年ですから、例年より盛大に執り行われていますな」
「バレット、お前何度も来てるのか」
「一応、信者でしたからな」
そういえば、そういう設定だった。
「穢れている……」
そんな呟きが人混みの中から聞こえた。
コレールにもそれが聞こえたのか、恥ずかしそう目を伏せる。
我が輩は誰が言ったのかと、周囲を見回した。
周囲の人間は皆、我が輩達を見て、こそこそと話している。
「我が輩達は歓迎されていないようだな」
「し、仕方ないよ……。信者じゃない魔法使いは魔族で、魔法が使えない戦士は穢れている、って、教えの聖地なんだから……」
コレールはそう答える。
「この村の中では、我が輩達の方が異様か……」
だからといって、法衣など絶対に着てやらん。
我が輩はフン、と鼻を鳴らした。
「──フラットリー様の生まれ変わりが現れたそうですよ!」
信者の一人が周りに聞こえる声で叫んでいる。
何、フラットリーの生まれ変わりだと。
「祭壇の前にいらっしゃるって!」
「行きましょう、行きましょう!」
噂を聞いた信者達がばたばたと走っていく。
フラットリー信者というより、ただの野次馬だ。
それにしても、フラットリーの生まれ変わりが現れた、か。
……丁度良いな。
「我が輩達もフラットリーの顔を拝みに行くぞ」
「ええ!?」
グロルが驚きの声を上げる。
「ウィナって、結構ミーハーなんだな……」
「勘違いするな。我が輩は好きだから見に行く訳じゃない」
殴りに行くのだ。
□
祭壇の前は信者共で溢れかえっていた。
故に、フラットリーの生まれ変わりの姿が全く見えない。
まあ、殴るために近づくのだから、今は見えなくても良い。
「道を開けよ」
我が輩は目の前に手を出し、聖フラットリー展のときと同じように、風魔法で人を退けた。
人間の合間を縫って、前に出る。
コレールとグロルも我が輩の後ろに続いた。
最前列まで来て、顔を上げる。
祭壇に立つ〝奴〟の姿が見えた。
やっと、会えたな。
「ボース!?」
祭壇に立っていたのは、ボースハイトだった。
ボースハイトは煌びやかな法衣を身につけ、装身具を身体の至る所につけている。
何故、そこにボースハイトが立っている?
そして、何故、そんな服装をしている?
聞きたいことは色々あった。
ボースハイトはいつも通り、意地の悪そうな顔で笑う。
「あっれえ? なんでお前らがここにいるの? 『フラットリーなんざクソ食らえ』とか何とか言ってなかったっけ?」
グロルは周りの視線に気づき、ささっと体裁を整える。
「貴方こそ、何故そこにいるんです?」
「見てわかんない? 僕、フラットリー様の生まれ変わりなんだってさ」
ボースハイトは衣装を見せつけるようにくるりと回った。
宝飾がシャラシャラと鳴る。
グロルはそれを馬鹿にするように鼻で笑った。
「貴方がフラットリー様の生まれ変わりですって? 何かの間違いでしょう」
「嘘だと思うなら、そこの大司教に聞いてみたら?」
ボースハイトは横目で祭壇の近くにいる人間を見た。
そいつは他の信者とは違い、上等な服を着ていたため、フラットリー教の大司教ということが一目でわかった。
「間違いではありません」
大司教は冷静に答える。
「燃えるような赤い髪に、左右の色の違う双眸。そして何より、人々の思念を読み取る力。フラットリー様の生まれ変わりで間違いありません」
「……ってことらしいんだよね」
ボースハイトは得意げに胸を張った。
僅かな動作でも、服の宝飾がキラキラと光っている。
「貴方が生まれ変わりなんて、世も末ですね……」
グロルも呆れている。
ボースハイトは「はあ」とため息をついた。
「お前さ、さっきから誰に向かって口聞いてんの?」
「……は?」
「僕はフラットリーの生まれ変わりだよ? ただの信者のお前と、生まれ変わりの僕じゃ、住む世界が違う訳。口を慎めよな、信者グロル」
「なっ……!」
グロルが顔を真っ赤にして、口をはくはくと動かしている。
あまりの怒りに言葉が出ていないようだ。
喧嘩別れしたのを追いかけてきた相手に、その言い方はない。
グロルが怒るのも当然だ。
ボースハイトが素直に謝るとは思ってなかったが……。
「そろそろ祭儀を始めます。ボースハイト様、お喋りはここまでにして下さい」
「わかったよ。じゃあね、信・者・グ・ロ・ル」
ボースハイトはくすくすと笑って、グロルをしっしと追い払った。
グロルは無言のまま、くるりと踵を返し、がに股でズカズカと歩いていて、祭壇から離れる。
そこにお淑やかさは微塵もない。
信者達があまりの変わりように驚き、グロルのために道を空けている始末だった。
「何だよ、あいつ! 絶対謝ってやんねーからな!」
グロルは腕を組んで、フンッと顔を背けた。
コレールは「まあまあ」とグロルを宥める。
「祭儀が終わったら、ボースとゆっくり話せるはずだ」
コレールは祭壇の上のボースハイトに目を向ける。
「ま、まさか、ボースが、フラットリーの生まれ変わりだったなんて、信じられないな……。本当……なのか?」
「さあ……。フラットリー様の生まれ変わりの特徴なんて私も聞いたことがないですな」
バレットも初耳のようだ。
まあ、大嘘つきのフラットリーのことだ。
預言もどうせ嘘でだろう……。
グロルは最後尾で唇を尖らせている。
コレールは首をぶんぶんと振って、ボースハイトを捜すが、ボースハイトの姿はない。
「ボース、飛ぶの早いよ……」
コレールはふと立ち止まって、周囲にボースハイトの姿がないか、捜し始める。
本当にこっちであってるのか、不安になっている様子だ。
こういうときに役に立つ魔法がある。
《魔力探知》だ。
頭のないゾンビフラットリーがボースハイトを探すために使っていた魔法だ。
我が輩は目を閉じ、ボースハイトの魔力を探す。
十時の方向に、ボースハイトの魔力を見つけた。
「こっちだ」
我が輩は目を開け、ボースハイトの魔力が感じられる方向へと歩き出す。
「え? ボース、いた!?」
「ああ」
コレールが我が輩に急ぎ足でついてくる。
その後ろにふてくされたグロル、そして、無表情のバレットが続く。
グロルがわざとゆっくりと歩いたため、ボースハイトにはなかなか追いつけなかった。
□
ようやく、砂漠を抜けた。
砂漠特有の暑さが鳴りを潜めた頃、一つの村が見えてきた。
「ボースも、ここに立ち寄ってるかもしれないな」
「確かに。この村の中にいる」
ボースハイトの魔力からすると、この村に滞在しているのは間違いない。
「それにしても、妙だな……」
「何がだ?」
「これまで、ボースハイトは我が輩達から逃げるように動き続けていた。だが、先程から一切動いていない」
「え? そ、それって、ボースに、何かあったってことか?」
「どうだろうな」
「は、早く、合流しよう。今、ボースが立ち止まってるなら、追いつける」
我が輩達は村へと足を踏み入れた。
この村は祭りの最中のようだ。
通りには多くの出店が開かれ、村の何処にいても、陽気な音楽が聞こえてくる。
「す、凄い人の数だ。ボース、見つかるかな……」
「この人混みの中から、ボースハイトを見つけるのはそう難しくないだろう。周りを見てみろ」
祭りに参加しているのは、グロルと同じ法衣を着た者ばかりだ。
そのため、グロルは自分が背教者だとバレないように、お淑やかに振る舞っている。
ボースハイトの服装は法衣ではなく、魔法使いのローブだから、この村の中にいるのなら見つけやすかろう。
「……ん?」
祭りには法衣を着た者ばかり?
それってまさか……。
「この村はフラットリーの祭りでもしてるのか」
「はい。ここはフラットリー教の聖地・ブジャルド。今日はフラットリー様が初めて我々に力をお貸し下さった記念の日ですから、それを祝しているのですな」
「あいつ、聖地と祭りもあるのか」
フラットリーの奴、我が輩のいる世で本当に好き放題しおって……。
「今年はフラットリー様が我々に力をお貸し下さってから千年の節目の年ですから、例年より盛大に執り行われていますな」
「バレット、お前何度も来てるのか」
「一応、信者でしたからな」
そういえば、そういう設定だった。
「穢れている……」
そんな呟きが人混みの中から聞こえた。
コレールにもそれが聞こえたのか、恥ずかしそう目を伏せる。
我が輩は誰が言ったのかと、周囲を見回した。
周囲の人間は皆、我が輩達を見て、こそこそと話している。
「我が輩達は歓迎されていないようだな」
「し、仕方ないよ……。信者じゃない魔法使いは魔族で、魔法が使えない戦士は穢れている、って、教えの聖地なんだから……」
コレールはそう答える。
「この村の中では、我が輩達の方が異様か……」
だからといって、法衣など絶対に着てやらん。
我が輩はフン、と鼻を鳴らした。
「──フラットリー様の生まれ変わりが現れたそうですよ!」
信者の一人が周りに聞こえる声で叫んでいる。
何、フラットリーの生まれ変わりだと。
「祭壇の前にいらっしゃるって!」
「行きましょう、行きましょう!」
噂を聞いた信者達がばたばたと走っていく。
フラットリー信者というより、ただの野次馬だ。
それにしても、フラットリーの生まれ変わりが現れた、か。
……丁度良いな。
「我が輩達もフラットリーの顔を拝みに行くぞ」
「ええ!?」
グロルが驚きの声を上げる。
「ウィナって、結構ミーハーなんだな……」
「勘違いするな。我が輩は好きだから見に行く訳じゃない」
殴りに行くのだ。
□
祭壇の前は信者共で溢れかえっていた。
故に、フラットリーの生まれ変わりの姿が全く見えない。
まあ、殴るために近づくのだから、今は見えなくても良い。
「道を開けよ」
我が輩は目の前に手を出し、聖フラットリー展のときと同じように、風魔法で人を退けた。
人間の合間を縫って、前に出る。
コレールとグロルも我が輩の後ろに続いた。
最前列まで来て、顔を上げる。
祭壇に立つ〝奴〟の姿が見えた。
やっと、会えたな。
「ボース!?」
祭壇に立っていたのは、ボースハイトだった。
ボースハイトは煌びやかな法衣を身につけ、装身具を身体の至る所につけている。
何故、そこにボースハイトが立っている?
そして、何故、そんな服装をしている?
聞きたいことは色々あった。
ボースハイトはいつも通り、意地の悪そうな顔で笑う。
「あっれえ? なんでお前らがここにいるの? 『フラットリーなんざクソ食らえ』とか何とか言ってなかったっけ?」
グロルは周りの視線に気づき、ささっと体裁を整える。
「貴方こそ、何故そこにいるんです?」
「見てわかんない? 僕、フラットリー様の生まれ変わりなんだってさ」
ボースハイトは衣装を見せつけるようにくるりと回った。
宝飾がシャラシャラと鳴る。
グロルはそれを馬鹿にするように鼻で笑った。
「貴方がフラットリー様の生まれ変わりですって? 何かの間違いでしょう」
「嘘だと思うなら、そこの大司教に聞いてみたら?」
ボースハイトは横目で祭壇の近くにいる人間を見た。
そいつは他の信者とは違い、上等な服を着ていたため、フラットリー教の大司教ということが一目でわかった。
「間違いではありません」
大司教は冷静に答える。
「燃えるような赤い髪に、左右の色の違う双眸。そして何より、人々の思念を読み取る力。フラットリー様の生まれ変わりで間違いありません」
「……ってことらしいんだよね」
ボースハイトは得意げに胸を張った。
僅かな動作でも、服の宝飾がキラキラと光っている。
「貴方が生まれ変わりなんて、世も末ですね……」
グロルも呆れている。
ボースハイトは「はあ」とため息をついた。
「お前さ、さっきから誰に向かって口聞いてんの?」
「……は?」
「僕はフラットリーの生まれ変わりだよ? ただの信者のお前と、生まれ変わりの僕じゃ、住む世界が違う訳。口を慎めよな、信者グロル」
「なっ……!」
グロルが顔を真っ赤にして、口をはくはくと動かしている。
あまりの怒りに言葉が出ていないようだ。
喧嘩別れしたのを追いかけてきた相手に、その言い方はない。
グロルが怒るのも当然だ。
ボースハイトが素直に謝るとは思ってなかったが……。
「そろそろ祭儀を始めます。ボースハイト様、お喋りはここまでにして下さい」
「わかったよ。じゃあね、信・者・グ・ロ・ル」
ボースハイトはくすくすと笑って、グロルをしっしと追い払った。
グロルは無言のまま、くるりと踵を返し、がに股でズカズカと歩いていて、祭壇から離れる。
そこにお淑やかさは微塵もない。
信者達があまりの変わりように驚き、グロルのために道を空けている始末だった。
「何だよ、あいつ! 絶対謝ってやんねーからな!」
グロルは腕を組んで、フンッと顔を背けた。
コレールは「まあまあ」とグロルを宥める。
「祭儀が終わったら、ボースとゆっくり話せるはずだ」
コレールは祭壇の上のボースハイトに目を向ける。
「ま、まさか、ボースが、フラットリーの生まれ変わりだったなんて、信じられないな……。本当……なのか?」
「さあ……。フラットリー様の生まれ変わりの特徴なんて私も聞いたことがないですな」
バレットも初耳のようだ。
まあ、大嘘つきのフラットリーのことだ。
預言もどうせ嘘でだろう……。
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