世界の秩序は僕次第

虎鶫

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メインストーリー1

メルダールの章

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森の中を進んでいくと、大きな大木が現れた。
上を見上げたがてっぺんが見えない。
「おいおい、初めて見たわけでもあるまいし、何をそんなにじっくり見ているんだ?」
いや、初見だから仕方が無い。

メルダールの章

その大木に取り付けられた階段状の物を登って行き、途中にある木の中に入った。
木の中にあるとは思えないぐらい立派な部屋だ。
部屋の中には似た姿の者が複数居た。

「プリダルエさん、なぜかリクドが現れましたが、人間が追い払ってました。それと、こいつが隠れていた別の人間を始末しました」
目を閉じたまま足を組んで中央に座っている者に向って報告をしていた。
見た目は他の者と同じ感じだが雰囲気は段違いなのがよくわかる。

目を開くと僕に向って声をかけてきた。
「よくやった、メルダール。だが、何か様子が変だぞ」
す、するどい。
この場をどう切り抜けようか返答に詰まっていると、一緒に居たやつが割って入ってきた。
「ちっさい小僧を後ろから射抜いたから罪悪感でも生まれたんじゃないですかね」
「フーリエ、お前には聞いてない。が、小僧とはいえ、いずれは討伐する相手。成長する前に芽を摘むのも大切だ。よくやった」
何もしてないがなんとか切り抜けられそうだ。

隣のやつはフーリエというのか。
で、プリダルエがここの大将という感じか。
状況を理解するので精一杯なので、何も言わず頭を下げた。

プリダルエが話を続ける。
「最近セキダイコ周辺が騒々しいといく報告も入った。建物が光ったり大きな爆発があったらしい。リクドが現れたのもその影響かもしれんな」

言っている事の前半は理解できた。
僕が関係しているからだ。
しかし後半が理解できない。

「プリダルエさん、次はどうします?」
フーリエが次の命令を求めて聞いていた。
「ふむ、リクドを追い払った人間もギノツに向うだろう。そうなるとギノツの制圧にはさらに時間がかかりそうだな」

ギノツ?
ロキさんが行けばわかるというのはこの事か。

「鉱山を手中に収めるための拠点として、丁度いい場所にあるから攻め落としておきたかったが一旦撤収させるか。聴いてただろ、おい、行ってこい」
『は、はい』
プリダルエがそういうとビビーが部屋から出て行った。
「ククク、早めにインツを捕獲しておいてよかった。伝達が楽になる」
インツ?
また新しい名前だ。

「全員戻ってきてから次の作戦を伝える。それまで各自、持ち場で待機しておけ」
ぞろぞろと部屋から出て行った。
ぼーっとしている僕にフーリエが声をかけてきた。
「おい、メルダールいくぞ」
「お、おう」
完全に言われるがままである。

「確かにプリダルエさんの言う通り、おまえなんだかへんだぞ?」
フーリエが聞いてきた。
「いや、ちょっと記憶が飛んでしまったようだ」
「おいおい、冗談にしてはきついぞ・・・でも、おまえが冗談をいうようなやつでもないし」
フーリエが考え込んでしまった。
「なんか、すまない」
思わず謝った。

フーリエは何かを察したのか、それとも察してもらえなかったのか、良く分からないが何も聞いてないのに色々と説明してくれた。

僕は今、ダールエ族らしい。
この森は元々ビビーの領地だったが大将のインツを捕らえて、ビビーを伝令役として使っているらしい。

・・・え!

「急にどうした?」
僕が突然立ち止まったので、フーリエが聞いていた。
「あ、いや、なんでもない」
フーリエは不思議そうな顔をしていたが、また歩き出した。

考えたくは無いが、想像どおりの展開なら最悪だ。
かといって、今の僕には何もできない。
とにかく何をするにしても今の状況を把握するのが先か。

見張り小屋に着いた。
どうやらここが僕の持ち場らしい。
フーリエも居るってことは一緒の持ち場か。
べらべらと聞いてない事まで話すので情報を引き出すには丁度いいかもしれない。

「プリダリエ・・・さんは、何故鉱山を?」
「うーん、オレもよくは知らないんだが、あそこで取れる鉱石が欲しいみたいだ」
「あそこの鉱石は特別ってのは聞いたな。でも何に使うんだろう」
「さぁ?オレが知るわけないだろ」

「ここから鉱山まで距離があるとしても、村を迂回すればいいだけじゃないのか?」
「それはみんな思ってることだ。でも鉱山にはワフ族がいるからなぁ。面倒な相手の所に行く途中で人間共に出会っても厄介だしな。だから先に村を制圧して拠点にするつもりだったんだろうな」
「なるほど・・・」

ワフ族・・・それは本で見たことがある。
確かに鉱山ならワフ族が居てもおかしくない。
フーリエの言う事も筋が通る。

・・・

「おまえ、本当に記憶が無いのか?何も知らないかと思えば、ワフ族の事とかは知っているような感じだし」
鋭い疑問だが実際そうだから仕方が無い。
「本当に記憶は無い」
「なんか都合のいい記憶だな」
呆れた感じで返された。

ダールエ族の事はわからないが、メインの武器は弓なんだろうな。
実際、矢に射抜かれたわけだし。
知能も高そうだからある程度の魔法も使えそうな気がする。
村を陥落できてないってことは、戦力的にはナトリ街のギルドからの援軍と互角といった感じか。
もっとも、ナトリ街のギルド員はルーナさんとロキさんしか知らないが。

ルーナさんには申し訳ないがダールエ族とは相性が悪い。
サーカさんは・・・プリダルエの実力次第だろう。
プリダルエからは何か秘めたものを感じる。
そういう意味ではサーカさんも特殊だが。

激突したらどっちが勝つだろう。
いや、僕はどっちを応援すればいい?
サーカさんの力にはなりたいが、サーカさんからすると僕は敵。
人間からもダールエからも袋叩きにあうだろう。

なんにしてもこれ以上考えていても仕方が無い。
明日、プリダルエからの指示を待とう。

翌朝:木の中の部屋

部屋に入ると昨日は見なかった、主戦力(と思う)のダールエ達が集まっていた。
昨日の場所にはプリダルエが同じ姿勢で座っている。
相変わらず威圧感が凄い。

・・・

しばらくの沈黙の後にプリダルエの目が開いた。
場の空気がピリピリしだす。

「策を告げる!」

声量はそれほどでもないが、なぜかプリダルエの言葉はお腹にずっしりと来る。
他のみんなも同じ感じ思いんだなろう。
でも、プリダルエの言葉を聞き逃さずに真剣な顔だ。

・・・
みんながザワつきだした。

「・・・という事だ。特にフーリエとメルダール。この作戦の成否はお前らにかかっている。頼んだぞ」

声には出さないが、周りのみんなは自分じゃなくて良かったと安堵の表情になっていた。
僕ももちろんイヤだ。
拒否できるのなら拒否したい。
しかし拒否はできない。
横目でフーリエを見ると同じ表情になっていた。

恐ろしい。
策としては単純な策だ。
確かにこの策のカギを握るのは僕達だ。
多少の危険は伴うだろうが、それが恐ろしいのではない。
平然とした顔でこの策を立てたプリダルエが恐ろしい。

もしかすると拒否して罰を受けたほうがマシなのかもしれない。
でも、それも無理だろう。
苦し紛れに聞いてみた

「本当にこの策は上手くいくのですか?」
フーリエの顔が真っ青になった。
内心では、なんてこというんだ!と思っているだろう。
いや、その場にいた全員が思っただろう。
【こいつ何を言い出すんだ】と。

ギラリとこっちに目線を向けた。
しかし、表情は平然としていて読めない。
睨んだ表情の方が分かりやすくてマシなのかもしれない。
目を合わせると自分が石になるモンスターが居るという本を読んだのを思い出した。
まさにそういう状況だ。

プリダルエは怒る事も無く平然と答えた。
「絶対に上手くいく」
その一言が全てだった。

この自信はどこから来るのだろうか。
それこそ失敗するとすれば、僕達がヘマをした時ぐらいだろう。
他に失敗する要素が見つからない。
プリダルエは未来でも見えているのだろうか。

プリダルエが指をパチンと鳴らすとビビーが何かを持って現れた。
「それを持っていけ」

「は、はい」
もうこれ以外の言葉が見つからない。
受け取ると肩を落としたフーリエと一緒に部屋を出た。

外に出るとみんなが、お気の毒といわんばかりの顔をしている。
「ま、まぁ、気をつけてな」
みんなの労いの言葉が逆に悲しい。

とにかく、僕達は何が何でもこの任務を果たさないといけない。
僕が逃げ出したところで、フーリエがコレを届けるだろう。

道順はフーリエが知っているようなので、着いていくことにした。
コレの中身はわからない。
大切にしまいこんで大木を後にした。

メルダールの章つづく
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