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魔法の使い手
しおりを挟む「本当に申し訳ございませんでした。」
目の前で大人が土下座してる。
ハムライさんが、凄い勢いで床にオデコをグリグリ押し付けてる。
や、もう、なんか逆に怖いよ。
「ま、まあ、その僕もほら、同意したし…顔あげて下さい。それより、なんか着るもの持ってきてくれませんか?」
フェロモンのせいだし、怒っても仕方がない。
「着るものならば、これで。」
ハムライさんが何か呪文のような言葉を唱えると、ドロドロになった服が綺麗になった。
なんか良い香りまでする。
「うわぁ!凄い、魔法ですか?」
「少し覚えがあるもので。」
石鹸で洗ったみたいに綺麗になった。
魔法かあ…魔力あっても使い方が分からないんだよな。
「ハムライさん、魔力ってどうやって魔法になるんですか?僕、魔力あるけど分からなくて。」
「そうですか。それでしたらギルドの魔法教室に通ってみたらいかがですか?私が教えるよりも、よっぽど確かですよ。」
「そういう教室あるんですね!行ってみます!」
魔法教室なんてあるんだ。
知らなかった。
普通の学校にも行けてないから、教室とか楽しそうだな。
家の外に出たら日が落ちてしまっていた。
急いでハムライさんとギルドに帰って、その日のうちに一軒家の家の賃貸契約をした。
もう今日から使っていいって。
このあとすぐに水も湯も出るように特別に手配してくれるそうだ。
ありがたい。
ベッドは無いけど、床があれば大丈夫!
その後、ギルドの教室カウンターで、一週間後の魔法教室に予約を入れた。
それまでに、家具とか色々揃えないと。
やることが増えてきて楽しいな。
あ、ちゃんとナックルさんにもお礼を伝えておかないと!
ギルドを出る前に、ハムライさんに声をかける。
「今日は色々見せてもらってありがとうございました。あの、ナックルさん…ギルド長さんに、金バッチ助かりました有り難う、って伝えて貰っても良いですか?」
「分かりました。今日は、色々とご無礼を致しました。申し訳ございません。ですが、お会いできてとても嬉しく思います。私は、ギルドで賃貸以外にも色々と担当しておりますので、何かお困りでしたらいつでもお越しくださいね。」
「ありがとう!ハムライさん。」
お礼を伝えて、ギルドを出る。
ナックルさんといい、ハムライさんといい、僕は出会いにも恵まれているなあ。
神様のおかげかなあ。
「はー、疲れた!!」
まだ何もない部屋のど真ん中にドサッと座る。
帰る途中で、お肉の刺さった串と果実水を買ってみた。
今日の晩御飯だ。
お肉は茶色いタレがかかってて良い匂いがする。
一本銅貨3枚だったから一本買おうと思ってたら、お店のおじさんが、もうお店閉めるからって余ってるのを三本も追加してくれた。
「動物のお肉、初めて食べる…美味しいのかな…」
まだ暖かいそれに、かぶりつく。
口の中に旨味が、じゅわ~っと広がった。
「んん~!!美味しいっ!!」
タレも染みてて味も濃くて。
肉の脂かな、それも口に溢れる。
こんなに美味しい物だったんだ。
そりゃあ、屋敷でも毎日のように食べるはずだ。
この前から知らない事ばかりで、感動しっぱなし。
勢いよく全部ペロリと食べてしまった。
口直しに紫色のブドウの果実水を一口。
「ぷはっ!は~お腹いっぱい…贅沢…」
ゴロンと寝転がり天井を見上げる。
昔は硬いベッドで寝てたから、床に寝るのと同じような感覚だった。
今だって、床に寝てる。
今日は床に寝るつもりだ。
だけど、こんなにも満たされてる。
以前のやるせなさとは違う。
お腹が膨らんで暖かい。
果実水も甘くて美味しい。
この後、お風呂にも入れる。
こんなに贅沢な事ばかり。
「ここが僕の家。…ワクワクするなあ。」
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