魔拳のデイドリーマー

osho

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第14章 混沌庭園のプロフェッサー

第251話 猫の住処見学ツアー・後編

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今回、久々に?一挙2話投稿になります。
説明っぽい上に長くなったので、真ん中くらいで切りました。

先に更新した第250話とあわせてどうぞ。
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さて、というわけで引き続き『キャッツコロニー』のご案内に。
午前中は内部を見てたわけだけど、午後はその周囲に広がる大自然(魔改造済み)と、そこの住人達を見に行っている。

前にも言ったと思うけど、現在この『キャッツコロニー』周辺の自然は、僕の手によって魔改造され、通常とは大きく異なる生態系を築いている。

『コロニー』部分を外に出ると、まず広がっているのは広大な森林。というか樹海。
コレは、アドリアナ母さんの故郷の森を再生したものだ。無計画な開発その他でかなりダメージを負っていたけど、精霊魔法と外部からの各種エネルギー供給、それと、僕が新開発した、魔法式環境改善用ナノマシンの組み合わせで、問題なく再生することができた。

ついでに面積も大きく広げたので、豊富な生き物が暮らしている。元々いた種族もいれば、僕が新たに『品種改良』で作り出して放ったものもいるけど。

そして、その樹海部分を囲む形で……さらにその周囲に、様々な環境・気候のエリアがある。

もともとの『リアロストピア』の大地を思わせる、ほとんど何もない荒地のエリア。

沼地や大きな川が各所にあり、全体的に涼しくてじめじめしている湿地のエリア。

対照的に、暑くて熱い上に、険しい岩肌の大地が続く火山のエリア。

その近くにあるせいで、地熱その他で乾燥しまくっていて、砂の大地が広がる砂漠のエリア。

北部一帯に広がっていて、荒地のエリアと続いている、ツンドラ的に肌寒いエリア。

火山と同様に丘陵地形が広がっているけど、密林部分同様に緑に覆われている山地のエリア。

その他、細かいところを上げていけばきりがないけど……こんな感じで、あるものはゼロから、またあるものはもともとそうだった気候や地形に手を加えて僕が作り上げた結果、多種多様な気候が、大陸中心部のこの『ローザンパーク・南部』のエリアに集まっているのだ。

そして、それらに適応した様々な動植物、それに魔物が息づいている。

現在僕らは、あらかじめ用意しておいた、空飛ぶバスみたいな乗り物で、各地をサファリパーク的な感じで回るというアトラクションを楽しんでいる。楽しんでもらっている。

国王様にメルディアナ王女にリンスレット王女、エルビス王子にルビスにレジーナ、オリビアちゃん(隣にザリー。完全にデート気分)、そして、護衛でついてきている兄さん達もだ。

ガラス窓一枚隔てた向こうを、ティラノサウルスが闊歩しているのを見る機会なんて、そりゃあるわけないだろうから、当然かもね。

もっとも、兄さんたちは……迫力よりも、見たこともない魔物や動植物がたくさんいるところに気をひかれるようで、時たま僕に『アレは何だ?』って聞いて来たりしてるし。

ちなみに、ここに放している魔物たちの中には、僕が研究の末に『品種改良』で作り出して放った魔物も結構多い、ってのはすでに話したけど……その『作った』魔物や動植物達は、その用途というか目的によって、大きく2つに分けられる。

1つ目は、侵入者の撃退等のための戦闘用。
主に、僕の趣味と興味本位で考え付いた魔物をメインに作り出してこの辺に放っている。もちろん、きちんと生態系の一部として組み込まれるように調整したうえで。

もう1つは、食用。
そのまま肉や果実を食べたり、その活動の1つとして食料品を生み出すような――ハチミツを作る蜂みたいな感じ――魔物や動植物を作り出している。
僕らの食生活に直結してくる部分なので、かなり力と気合いを入れている。

それに、収穫したやつは、イオ兄さん達のところにもおすそ分けしたり、ノエル姉さんやジェリーラ姉さんのところに卸したりもしている。
結構いい収入になるし、『収穫』は結構いい運動になるんだよね。要するに狩りだから。

そんな感じで色々な魔物がいて、それを見るツアーを楽しんでもらってるんだけど……実は、今回のメインは、その『見物』じゃないんだよね……。

各エリアを回り、その締めくくりとして最後に出向く場所。
そこに、今日の午後のメインイベントにして……この『キャッツコロニー』の核的な存在の1つと言っていい、『あるもの』があるのだ。

☆☆☆

場所は、『コロニー』を出た周囲に広がっている樹海。

ここにも当然、僕が作って放した魔物たちがわんさか住み着いている。
そしてその多くは、この森を守り、育む役に立つ類の習性を持つように調整してある。

『ティラノサウルス』を筆頭に、『トリケラトプス』『プテラノドン』『モササウルス』等、龍族をベースに色々と掛け合わせて調整して作った『恐竜シリーズ』、

それらの被捕食者として、しかしそれ以外の動植物にとっては捕食者足りうる存在として放っている、巨大猪『バーバリアンボア』や肉食の暴れ牛『ヘルバッファロー』などの中間捕食者、

あと、パッと思いついた勢い重視で作ってみた感じの、『エビドラゴン』やら『シシャモドラゴン』やら『サーモンドラゴン』といったネタ枠(ちゃんと美味しく食べられるけど)等々。

それに、動物のみならず植物も豊富だ。
無論、魔改造済みの食材枠が。

野菜や果物、各種山菜やキノコなんかも品種改良してあって、美味みは増してるわサイズは大きくなってるわでびっくりするものがたくさん。

パーティにも出した『スノーホワイト』などの超高級フルーツに始まり、果実みたいに瑞々しい大根とか、1mを超えるサイズのマイタケとかマツタケとか、生のままでご飯のお供になりそうななほど濃厚で芳醇な葉野菜とかもあるし。

……っとと、いつの間にか盛大に脱線したな。

まあ、そんな感じの大自然(?)を見物しつつ、この樹海およびその周辺を見て回っていたわけだけども……そのラストに僕らは、生い茂った植物によりバスでは進めないエリアに入った。
なので、バスから降りてゆっくり歩きつつ、皆である場所に向かう。
『歩くから動きやすい服装で来てね』って、前もって言っておいてよかったよ。



そして、そのおよそ15分後。
僕らは……お目当ての場所にたどり着いた。


「「「おぉ……!」」」


それを見た全員が、そんな感じに声をそろえていた。
そうなっても無理のない光景が、目の前に広がっている。

そこにあるのは……巨大な樹だ。

高さ、幹の太さ、その力強さ、生い茂る葉っぱの多さ……あらゆる点で、おそらくは今までで見てきた中で最大というか、比較対象になるような木などなかったであろうレベルの、荘厳な見た目の巨大樹――そう、アドリアナ母さんの部族のシンボルだった『御神木』である。

王女様たちだけでなく、ドレーク兄さんやアクィラ姉さんまで、驚きや感嘆を隠せない様子で、様々な神秘をその身の内に内包した大樹を見上げていた。

まあ、見た目や雰囲気もそうだけど……2人は『ハイエルフ』だからなあ、本能的あるいは直感的に、感じ取ってるのかもしれない。この樹に宿る、不思議な『力』を。

そして、この樹と共に在り、この樹を守る者達の存在を……

……って、言ってるそばから、来たか。

「「…………!」」

その気配に、最初に気づいたのは……彼らと『縁』を持つ、僕。
そのコンマ数秒後に、ドレーク兄さんとアクィラ姉さん。

3人でほぼ同時に、樹の上のある一点を見上げる。
パッと見は何もない、しかし確かに『何か』の気配を感じ取れた場所を。

するとそこに、木々の葉と同じ柔らかな緑色の光が集まったかと思うと……その数秒後、光の中に、人型の何かが、ゆっくりと滲み出すようにして現れた。
現れると同時に、光をタンポポの綿毛のようにふわりと周囲に散らしながら、その存在は……自らも羽のように軽やかに、そしてゆっくりと地上に向けて降りてきた。

降りて来たのは……『天使』だった。

美少女と言っていい顔立ちで、年のころは僕と同じか少し年上って感じ。
明るい緑色の、腰まである長い髪に、木の葉で作られた髪飾り。
色白の肌に、だいたい僕と同じかほんの少し高いかな、ってくらいの背丈。
緑色を基調とした、法衣のような服に身を包み……手には木製の、しかし一目で只物ではないと、業物であるとわかる魔法の杖を携えている。

そして、最大の特徴は……言うまでもなく、その背中にある、翼である。
遠目に見ると、柔らかな羽毛……というか、人の背中に生えているため、思いっきり天使の羽に見えるそれだが、近くで見ると、羽毛に形の近い植物の葉が無数に集まったものである。

なお、頭の上に天使の輪っかが浮いてたりはしない。

その天使の少女は……その顔に、うれしそうな楽しそうな笑みを浮かべながら、背中の羽をふぁさっ、ふぁさっ、とやわらかく羽ばたかせて、僕らのところへ降りてくる。

一瞬、ドレーク兄さんとアクィラ姉さんが、見知らぬ人物(?)の接近に警戒しそうになるが、僕が特にそういった様子を見せないことや、敵意・害意を感じないことから、不要だと悟ったらしく、油断こそしないものの、目立った反応を見せることなく成り行きを見守っている。

そんな2人の心中を知ってか知らずか、王女様たちの唖然とした視線にもさらされつつも、特に気にした様子もなく彼女は、ふわりと着地……文字通り『降臨』した。

そして、

「お待ちしておりました、ミナトさん! それにお客様方も! ようこそいらっしゃいました! えっと……何もないところですが、どうぞゆっくりしていってくださいね!」

「いやいや……何もない、ってこたないでしょ、ネールちゃん」

多少緊張しつつも、それ以上に、僕や僕の兄弟や仲のいい人に尋ねてきてもらえたことが嬉しいのか……満面の笑みを浮かべている彼女は、何を隠そう、あのネールちゃんである。

☆☆☆

彼女のことを兄さん達に紹介すると共に、必要事項の説明等も同時に済ませておくことにした。色々あるから、順番に1つずつ。

まず最初に……見りゃわかることではあるんだけども、彼女、また『進化』している。
『ミネット』での一件の際に、僕の『他者強化』を使った時と同じように。

あの時は彼女は、ランクにしてせいぜいCかB程度の『アルラウネ』から、ランクAA相当の『フェスペリデス』に進化したけど、今回彼女は、そのさらに上位の種族になった。

ちょっと前、彼女がここに引っ越してきた時に……ここで活動しやすくなるために、御神木と『契約』なるものをしたことを覚えているだろうか。
森と縁を作り、彼女は森から力を授かってその能力を増し、森は彼女の『フェスペリデス』としての力の恩恵をより大きく受けやすくなり、ダメージの回復や繁栄に役立つ。

そういう形を作るための『契約』だったわけだけど……この時、予想外のことが起こった。
『御神木』の内包していた力があまりに強すぎて、それに引っ張られる形で、さらにネールちゃんが進化することとなってしまったのだ。

フェスペリデスはかなり高位の植物精霊だから、契約相手の樹に影響を受けて力が上下するなんてことはほぼないらしいんだけど、さすがに『シャーマン』が代々信奉してきた、強大な精霊力の塊と言ってもいい存在である『御神木』相手では、そうもいかなかったようだ。

長い年月をかけて成長し、『格』とでも呼ぶべきものを極限まで上げていた霊木。さらにその内部には、還元して取り込んだシャーマンの魂や力そのものが息づいていた。
いうなれば、それを起点にして森が広がっている、森そのものの核といってもいい存在。

そんな『御神木』と契約した結果、彼女は『進化』することとなったのだ。

そう、御神木が原因なのだ。あくまでも。

……だから、そう……その御神木や周辺の森の再生のために僕が散布していた魔法薬とか、御神木の解析のために僕が周囲に用意していたいろんな魔法の術式とか、ネールちゃんが『契約』に手こずってたのでちょっと手伝うつもりでかけてあげた『他者強化・虚数属性付加超パワーUP版』なんかは関係ないのだ。
御神木のせいなのだ。たぶん。おそらく。きっと。

……その御神木も、最近いろいろと進化というか変質して、性能とか生命力とかが別物にランクアップを遂げてて……今度から『世界樹』って呼ぼうかどうか迷っているくらいのところだけど、きっとこれも全部御神木と歴代のシャーマンたちのせいなのだ。

で、だ。その結果ネールちゃんの種族は……一晩寝て起きると、また変わっていた。
そして僕は、師匠のところの資料でそれを知っていた。

その名も……『ユグドラシルエンジェル』。
ランクはなんと、驚きの『測定不能』。

植物系の魔物や精霊の中で最強と呼ばれる存在。植物を自由自在に操る力を持ち、周囲に緑がある環境下では、たとえ龍族の大群が相手だろうと圧倒できる、伝説の種族。

アンデッド系のカテゴライズで言えば、あのテラさんに匹敵すると言っていい種だ。

そして……うん、思えばあの時ネールちゃんは、森の繁栄を見守り手助けする精霊の一柱から、四国くらいの面積がある超巨大樹海の守護神へランクアップしたんだ。

さらには、その『進化』の際にまき散らされた膨大なエネルギーの影響なのか、彼女の……そうだな、『眷属』とでも呼ぶべき魔物が4種類ほど生み出され、常にこの樹を守っている。

複数の頭部を持ち、胴体の太さ2mはあろう巨体とそれに見合った怪力、鋭い牙とそこから滴る猛毒、さらには土属性の魔法をも使える大蛇の魔物『ラードーン』。

普段は枝にとまっていて、外敵が来ると超高速で飛来して襲い掛かり、そのくちばしと足の爪、そして風属性の魔法で猛襲する鷲の魔物『フレースヴェルグ』。

人間の肩に乗るくらいの小さな体ながら、全属性の強力な魔法を操り、さらに爪と牙を使った接近戦闘能力も決して侮れないリスの魔物『ラタトスク』。

そして、劣化版ユグドラシルエンジェルとでもいうべき存在であるが、知能は高く、実力的にはフェスペリデスと互角以上という人型の精霊種『トレントフェアリー』。

下はAAランク、上はSランクというこれらの魔物たちが守っている『御神木』は、そこらの砦より断然強力かつ堅牢な防備を備えていると言っていい。
強さはもちろん、戦いにでもなればネールちゃんの力で、周囲の環境全てが敵に回るのだ。

味方には無害、敵には有害な毒ガスとか花粉とかも出せるし、敵の足だけを絡めとる茨をあたり一面にしきつめることもできる。森全体で光合成をおこなってほぼ無尽蔵に魔力を生み出して使ったり、先に述べた4種以外にも森に棲む魔物たちに手伝わせることもできる。

ぶっちゃけ、大国の正規軍でも勝つのは無理だと思う。
ドレーク兄さんとか、アクィラ姉さんあたりの超実力者が来れば別だけど。

そんな軍団の頂点に立つこととなったネールちゃんは、最初こそ慌てふためいて戸惑っていたものの……今ではすっかり慣れて、ちょっとずつだが『ユグドラシルエンジェル』としての強力な能力を使いこなせるようになってきている。適応力すごいな、マジで。

そして、そのネールちゃんに、ここに住む代わりに、ってわけじゃないけど、僕の方から1つ、頼み事というか、役割を引き受けてもらっている。
この森の……『管理人』だ。

今までちょくちょく、この森の植生や生態系、魔物の縄張りや侵入者などについて、僕が追加した魔物その他も含めてきちんと完璧に管理できている……と言っていたが、それを担ってくれているのが、ネールちゃんなのだ。

元々彼女の力は、種族柄、森全体に及ぶ。

そこに、僕のある発明品によるサポートを用意し、十全以上にその力を発揮できるようにしてあげていることで……侵入者の感知から、野菜・果物の収穫時期にいたるまで、森の現状を逐一把握し、必要に応じて手を加えたりして管理下に置くことが可能になっているのだ。

そんな、名実ともに森の守護神であるネールちゃんに、兄さん達や王女様達を紹介した理由は、まあ……単なる挨拶とか、自己紹介だ。

これから、この森の内外で関わる機会が増えるかもしれない面々なので……最初にこうして面を通しておけば、少なくともネールちゃんの力が及ぶ範囲の魔物や植物からは襲われることはなくなる。魔物については、そう多くはないけど。

何らかの理由でこの森に入らなきゃいけないような時の危険性が格段に少なくなるはずだ。あんまりそんな機会ないだろうけど。

あとは……後日にでも『あいつら』にも面を通しておけば万全だろうな。

とりあえず、王女様達および兄さん達には、このネールちゃんと、彼女を中心にしたこの森全体の管理システムについて話しておいた。

「なんと……ランク測定不能の、最上位精霊とは……」

「そんな方と協力関係を結んでいるなんて……ミナト様、さすがですね!」

「……ここに近づくにつれて、異質なほどに澄んだ魔力の気配を感じてはいましたが……てっきり、話に聞いていた『御神木』とやらのせいかと思ってました」

第一王女様、第二王女様、そしてアクィラ姉さんの、それぞれの感想。
前2人はともかく、さすがアクィラ姉さん……その正確な正体はともかく、ここに『何か』がある、もしくはいる、ってことに気付けるとは。

『ユグドラシルエンジェル』であるネールちゃんの存在は、精霊魔法でこの場所、および『御神木』ごと隠蔽されている。そのため、満ち溢れている魔力の大きさとは裏腹に、目前にでもしないかぎりはその『存在感』を感じることはできないのだ。

まあ、実際に目にすれば、今度はその大きさと存在感に圧倒されることになるんだけど。

しかし、そこは魔法の専門家にして王国魔法分門の頂点『魔法大臣』、そして自然を味方につけるハイエルフだからということなのか……アクィラ姉さんは、逆にその『澄みすぎている』魔力を感じ取れていたようだ。

「それだけじゃなく……そこからつながりが感じられる、妙な『何か』の存在も感じていましたよ? 今思うと……おそらくはアレが、あなたの新発明とやらだと思われますが」

「おー……さすがアクィラ姉さん。ご明察」

おまけにそんなところまで見抜いてくるとは……お見事。さすがだ。
その通り……おそらくその気配、僕がネールちゃんの補助のために用意した『ある発明品』のことだろう。たしかに、もともとの能力の高さももちろんだけど……ネールちゃんはそれのおかげもあって、この森全体をより詳細に、かつ限りなく少ない負担で管理下に置いている。

まあそもそも、ネールちゃんだけのために、ってわけじゃないんだけどね。
正確に言えば、彼女はあくまで『アレ』へのアクセス権限を持っているだけ。『アレ』の本体は『キャッツコロニー』の内部にあり、森の管理以外にも様々な用途に使っている。

もちろん僕も使える。まあ、普段から使っているわけじゃないけど。

そして、肝心の『アレ』の正体については……

「秘密、ってことで一つ」

「あら……教えてもらえないんですか?」

軽い感じでそう返してくるが、目はかなり真剣だった。
これだけの大森林を完全に管理下における(おそらくは僕の自作の)マジックアイテムだ、そりゃ、知りたいと思うだろう。いくら過剰な詮索は禁物だ、とわかってても。

ちらっと見れば、メルディアナ王女や国王様、エルビス王子やルビス、ドレーク兄さんら護衛グループまで、為政者や軍幹部としての目でこちらに視線を向けていた。
純粋に感心しているだけなのは……レジーナとリンスレット王女だけだ。

「……悪いけど、ホントに教えらんないからね? 師匠や母さんにも相談した結果として、『やばすぎるから情報秘匿』って決まったやつだから。よそに流したり、悪用したりするつもりは毛頭ないから、そこだけは安心してくれていい……っていうか、それで納得してください」

「それ聞いて余計に興味が出て来たんだが……むう……まあ、仕方がないか」

「そうだな。どのみち、聞いたところで我々の手に負えるようなものではあるまい。無用な争いの火種にでもなるのがオチだ」

と、メルディアナ王女とルビス。しぶしぶにではあるけど、納得してくれたようだ。
他のメンバーもそれにならうつもりの様子。ご理解どうも。

まあ、代わりにってわけじゃないけど、この森やその周辺で採れる食材とか、後でどっさりお土産に持って帰れるようにするから、それで納得して。

そして今日はその後、軽く雑談したり、ここんとこの現況をネールちゃんから聞いた後、王女様達全員分の魔力を『御神木』に記録させ、ネールちゃんにも『敵じゃない人たち』として記憶してもらったところで、お開きとなった。


『……ああ、そうだネールちゃん。どう? 使い心地は?』

『え? ……あ、ああ、あの、ま、ま……『ま両親こんビター』でしたっけ? ええと、この間つないでもらったあれですよね? すごく使い心地いいですよ! 能力を使っても全然負担少なくて、助かってます! まだまだ余裕もって、いろんなことができそうです!』

『『魔量子コンピューター』ね。それならよかった。ああでも、一応何か新しいことやろうとするときは、事前にこっちにも相談してね。念のためにこっちもモニタリングしとくし……何かあった時やいざという時には助けてもらえるように言っとくから。アドリアナ母さんに』

『はい、ありがとうございます!』


……そんなやりとりを、ひそかに『念話』でかわして。



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