【R18】アールグレイの昼下がり ー双子の姉・乙編ー

Silence

文字の大きさ
140 / 166
トリプルゲーム

トリプルゲーム5

しおりを挟む
「野中、踊らないか?」
「え?」

唐突に放たれた乙の言葉は、瀾に困惑を誘った。
瀾は、少し俯くと口を開く。

「あの…でも、私…」
「俺が相手じゃ、迷惑か?」
「そんな事…!!」
「輝李が来るまでの間でいい…」
「でも、私…ダンスなんて…」
「この間は踊れただろ?
大丈夫、踊れるよ」

優しく微笑む乙の眼差しに、瀾はその手をとらずには居られなかった。
曲の節目が来ると、ダンスホールで踊る二人の姿は、やはり視線を集めた。

他生徒からは無名に近い瀾が、乙とパートナーを組み踊る姿に小さなざわめきすら起こっている。

「…あの、先輩…」
「気にするな、俺を見て…」
「は、はい…」

ダンスを躍りながら、瀾の脳裏には不思議な感覚が走った。

先日ではない夜の…何処かで見たような瞳。

二人の体が離れ、クルリと瀾の体が回った時だった。


綺麗にダンスの波に乗り、スルリと体を預けると目の前には、大きな瞳に中性的な顔、栗色の髪の王子がいる。

「え…」

瀾は目の前の人物に驚き、後ろを振り向くと、そこには先程まで手を取り合っていたクールな瞳と目が合う。

目の前に居たのは他でもない輝李だった。

「クス、捕まえた。
今度は僕と踊ろう♪」

スッポリと腕の中に入ったプリンセスにニッコリと微笑むと輝李は乙と目を合わせた。
表情を変えずとも解る。
それは友好的な眼差しではなかった。

乙もトンビに油揚げを拐われたようなタイミングにお互いのプライドに火を付けたらしい。

ダンスが再開されると、瀾は輝李のエスコートに華麗に舞う。
相手を気遣うものは変わらなくとも乙のスマートさとは少し違う、優しいエスコート。

ダンスの最中にパートナーを拐われる事はブライドの高い乙にとって、この上ない屈辱だった。
さすがは乙の双子の妹だ。
姉の性格を知りつくし、冷静な乙を確実に逆撫でする方法を知っている。

瀾と躍りながらも時折見せる輝李の挑発的な視線は、宿命のカウントダウンだった。
瀾が華麗に踊る中、またクルリと回ると彼女は再び驚く事になる。

「え…」
「野中、お帰り…♪」


そう、瀾のパートナーは再び乙に変わっていたからだ。
後ろを見ると、今度は輝李と目が合う。

腰に片腕を置き、目を細め乙に不機嫌そうに視線を投げている。
乙を見上げると、輝李に向けるその視線も明らかに威嚇的だった。
いくら鈍感な瀾とはいえ、輝李と乙の互いの間に火花が散るのが見えるようだった。


瀾のダンスのパートナーは、その後も交互に目まぐるしく変わっていく。

乙…輝李…乙…再び輝李と。


それは慌ただしく余裕のないものではなく、スムーズに隙のない入れ替わり。
それはまるで一人と踊っているような、双子だからこそできる二対一体の動きだった。

勿論、このバトルに周りが注目しないわけがない。
三人の踊るスペースは広く空き、パーティー全員の視線を集めた。

やがて曲が終わると瀾の背中には、乙と輝李の腕がプリンセスを支え、二人の眼差しが向けられた。
それはまるで絵に描いたような夢のような光景だった。

ホールには拍手と歓声すら上がっていた。



「こりゃ…嵐が来そうだな」

遠くから見ていた神流がポツリと呟く。

そのまた少し遠い距離で、一人の少女がホールを出ていく姿を神流は、チラリと視界に入れた。

「…本当の嵐はこれからかもな…
嵐だけで済めば良いけど…」

神流は心配そうに目を伏せ、溜め息ついたのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

せんせいとおばさん

悠生ゆう
恋愛
創作百合 樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。 ※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合短編集

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

処理中です...