【完結】アーティ~太陽の様な笑顔を守りたい~

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オラネコBL編

8.お人好し(アーティ視点)

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 ~アーティ視点~


 俺は、涙が出てきそうになってしまって、とっさに寝たふりをした。

 なんであんたが謝るのさ。アイツは一言も僕に謝らなかったのに。ただ、愛する妻と子の元に帰れるのが嬉しいという事を全く隠さない顔で、俺に別れを告げただけだったのに。
 むしろ、この三年間寝床と飯の心配をしなくてよくて、助かっただろう?と言わんばかりだった。俺の方からの感謝の言葉を待ってすらいる雰囲気だった。
 アイツにとっては、俺を飼うこと自体が俺に対する施しで、性行為はその代償。

 若い俺は愛情を期待してしまっていたけれど、俺の気持ちなんて、少しも気が付いてくれていなかった。
 いや。気が付いていても、見て見ぬふりをしていたのかもしれない。
 アイツにとっては俺は、駐在期間中限定の使い捨てのおもちゃに過ぎなかったんだから。


 あ~あ。変な事思い出しちまったじゃねーか。そんな同情的な事を言うんなら、俺を抱いてお金をくれたら良いのに。それもしない。
 そんな中途半端なやさしさじゃ、逆に俺を傷つけるだけだとなぜ解らないんだ…。

 俺は馬鹿らしくなって、寝てしまう事にした。


 翌朝。ソイツが俺に「どこか美味しい朝食が食べられるところはないかい?」と聞くので、腹いせにちょっと贅沢な朝食屋さんに連れて行って、たらふく食べてやった。へへん!
 中途半端なやさしさで、俺を傷つけた罰だ!

 と思ったのに、別にソイツはなんでもない顔でお会計を払った。あまつさえ、「美味しかったね!良いお店を紹介してくれてありがとう。」だなんて、お礼を言われた。

 は?コイツ、頭湧いてんのか?このレベルの料理なら、もっと安くで食べられるところ、きっと幾らでもあるんだぞ?

 まぁ、いいや。久しぶりに腹いっぱい食べれたし、お陰様で明日の朝くらいまでは持ちそうだ。寝床と朝食、シャワー。しかも朝起きたら俺の服まで洗って乾かしていてくれていた。宿の人に頼んで洗ってもらったそうだ。

 なんて良い奴なんだ。違う違う。なんて勿体ない事を!その金があったら俺にくれよ。明日の食事代にするのに。


 店から出て、並んで歩く。

「良かったら、寺まで案内しようか?」
 なんとなく離れがたくて、気づくとついそんなことを口走ってしまっていた。

「良いのか??」

「あぁ、別に暇だから着いて行ってやるよ。」

 そう。日中から男を買う様な客は客は少ない。だから、俺にとってはほぼ自由時間だった。昨日は夜も良く眠れたし、別に日中に寝だめしておく必要もない。

「じゃあ、もしアーティが良ければだけど、俺がここに居る残りの二泊三日、ずっと観光案内してくれない?食事と寝床は用意するし、謝礼も用意するからさ!」

「え?いいのか?」

「うん。もしアーティの居場所が無くならなきゃだけど。」

「三日位なら平気!やりぃ~。」

 俺はこの三日間を、楽しむ事にした。だって、飯と寝床の心配をしなくてよいんだぜ?こんなの久しぶりだ。

 ふふふ~ん。同情万歳だな。昨日お涙頂戴の話をして良かったかもしれない。こういうお人好しには効くんだな。今度から覚えとこうっと。
 あ。でも、お人好しはわざわざスラムまで来て男は買わないんだった。あ~~~無駄知識が増えただけかぁ。

 次こんな幸運に巡り合えるのは、一体いつだろうか。
 もう一生こんな幸運に巡り合えなくても、不思議じゃない。
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