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忠告8 side chiaki
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忠告8―― SIDE chiaki
「すみません、港区の――――までお願いします……」
ほどなくしてタクシーが到着し、桜さんを連れて乗り込む。
運転手は腕の中のピクリとも動かない彼女を見て一瞬顔しかめたものの、意識のはっきりした俺を確認し、仕方ないと言わんばかりタクシーを自宅へと動かしてくれた。
まったく……。今日は酒に困らされることはないと安心していたというに――。
『どうにか口説き落として連れて帰るつもりでいるから――』
とんだ災難だったな。やっぱり俺は、どうにもツイてないらしい。
あのあと、桜さんを探すきっかけとなった室長と、慌ただしそうな幹事の坪井、そして役員一部に断りを入れ、好奇の視線を浴びながら彼女を抱いたままラウンジを後にした。
念のため周囲を見回したが、クリスの姿はなかった。
もちろん無粋なマネはせずにそのまま帰ってきた。
明るく振舞っていたが……あれは本心ではないだろうから。
それもこれもお節介老人が、俺の聞こえる所で……それも、俺が業務中に私情を一切挟まないことを知りながら、あんなことをクリスに言うから……。
『――國井さんに恋人?』
『うん! 彼女、やっぱり僕が探していた人だったんだ!』
『ううむ、なるほど……恋人という存在はいないが……それよりも手強いのがいるかもしれないのぉ……。だが……積年の思いくらい伝えたらよかろう。歓迎会もあるのだから』
チラリと少し離れたそちらを気にしたとたん。困り兼ねたお節介老人と視線が合ったのは言うまでもなく。藤森と室長に至っては、まるで新しいオモチャでも見つけたような、不快な視線を俺へ向けてきた。
……ほんとに、なんなんだ。
「すみません、港区の――――までお願いします……」
ほどなくしてタクシーが到着し、桜さんを連れて乗り込む。
運転手は腕の中のピクリとも動かない彼女を見て一瞬顔しかめたものの、意識のはっきりした俺を確認し、仕方ないと言わんばかりタクシーを自宅へと動かしてくれた。
まったく……。今日は酒に困らされることはないと安心していたというに――。
『どうにか口説き落として連れて帰るつもりでいるから――』
とんだ災難だったな。やっぱり俺は、どうにもツイてないらしい。
あのあと、桜さんを探すきっかけとなった室長と、慌ただしそうな幹事の坪井、そして役員一部に断りを入れ、好奇の視線を浴びながら彼女を抱いたままラウンジを後にした。
念のため周囲を見回したが、クリスの姿はなかった。
もちろん無粋なマネはせずにそのまま帰ってきた。
明るく振舞っていたが……あれは本心ではないだろうから。
それもこれもお節介老人が、俺の聞こえる所で……それも、俺が業務中に私情を一切挟まないことを知りながら、あんなことをクリスに言うから……。
『――國井さんに恋人?』
『うん! 彼女、やっぱり僕が探していた人だったんだ!』
『ううむ、なるほど……恋人という存在はいないが……それよりも手強いのがいるかもしれないのぉ……。だが……積年の思いくらい伝えたらよかろう。歓迎会もあるのだから』
チラリと少し離れたそちらを気にしたとたん。困り兼ねたお節介老人と視線が合ったのは言うまでもなく。藤森と室長に至っては、まるで新しいオモチャでも見つけたような、不快な視線を俺へ向けてきた。
……ほんとに、なんなんだ。
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