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忠告5 今夜、あなたの時間をください
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忠告5―― 今夜、あなたの時間をください
「――ちょっと……なんで、いつの間に結婚なんてことになってるのよ!」
――とまぁ、そんな生活が唐突にはじまったものの、もちろん周囲が黙っていてくれるわけもなく。
「……えっと――だから、朝説明したように、この前の会長からの呼び出しが、引き合わせのお伺いでさ――」
「にしても、うまくいきすぎじゃない……? 二週間で結婚なんて――あんた、なにかに利用されてるんじゃないの……!?」
「――ごふっ、……ま?! まさか……! あ、あはは……そんなことないって――」
――偽装結婚の承諾から二週間。
本日の朝礼で英子室長より、島田さん改め……ち、智秋さんと私の結婚がみんなに知らされた。
『――というわけで、めでたいことに國井は先日、あんたたちの大好きな島田と入籍したわよ~。今まで通り仕事中は國井で通すけど、人妻ってこと忘れないように。明日からあいつも、本格的にこっちでの勤務になるから、みんなで仲良くすんのよーー!』
もちろんのこと秘書室内は天地がひっくり返ったように騒ぎ出し、室長の雷が落ちるまで、もみくちゃにされた……
『くにいーー?! いや島田?! いやいや! 國井でいいんだよな?! 相棒の俺に、なんの報告もなしとか冷たくねぇか?!』
ゴリラのように雄叫びをあげる藤森さんに悪気なく首を絞められたり。
『國井ちゃん……妄想じゃないよね……?』
坪井さんに爽やかな笑顔でさりげなくひどいことを言われたり。
『……桜、午前休憩で――顔かしなさい……』
めでたい席なはずなのに、ずっと報告できていなかった親友からは般若のような顔で迫られたりして――
そんなわけで、秘書室の隣に併設された休憩室で、私は親友による手厳しい取り調べを受けている。
でも、さすがの友子にも『偽装結婚』のことは言えない……。
言ったら友子はすぐさま智秋さんを問いただしそうだし……。
だから。
「――ふぅん……会長からの縁を大切にしたくて、ゼネマネからその日のうちにプロポーズねぇ……」
と、いうことにさせてもらった。どっかで聞いた話だけど(ふたりで話し合った)。
「……まぁ、なんとなく訳ありそうでものすごく気になるけど……、ひとまずおめでとうと言っておく。桜の長年の恋が実ったわけだしね?」
まだ疑わしそうだけれど、これ以上聞かないでいてくれるのも、友子なりの優しさだ。
黙っていたお詫びとして奢った紙パックジュースがジュルジュルと音を立てる。
「この前、友子が背中を押してくれたおかげだよ。それがなかったら、私も突然過ぎて戸惑ってたと思うし」
「――何いってんの。桜の執念でしょ。まぁ、よくわからないけど、せいぜい逃げられないように、胃袋なり床なり掴んで、主導権握っておきなさい」
――ぶっ!
感謝の気持ちに対し、友子らしいおかしな応援が返ってきた。
――でもほんとこの二週間、あっと言う間だった。
まさか、彼がこんなにも積極的に動いてくれるだなんて。
休憩を終えて仕事に戻りながらも、頭はふと、今日までの目まぐるしい記憶を遡る。
「――ちょっと……なんで、いつの間に結婚なんてことになってるのよ!」
――とまぁ、そんな生活が唐突にはじまったものの、もちろん周囲が黙っていてくれるわけもなく。
「……えっと――だから、朝説明したように、この前の会長からの呼び出しが、引き合わせのお伺いでさ――」
「にしても、うまくいきすぎじゃない……? 二週間で結婚なんて――あんた、なにかに利用されてるんじゃないの……!?」
「――ごふっ、……ま?! まさか……! あ、あはは……そんなことないって――」
――偽装結婚の承諾から二週間。
本日の朝礼で英子室長より、島田さん改め……ち、智秋さんと私の結婚がみんなに知らされた。
『――というわけで、めでたいことに國井は先日、あんたたちの大好きな島田と入籍したわよ~。今まで通り仕事中は國井で通すけど、人妻ってこと忘れないように。明日からあいつも、本格的にこっちでの勤務になるから、みんなで仲良くすんのよーー!』
もちろんのこと秘書室内は天地がひっくり返ったように騒ぎ出し、室長の雷が落ちるまで、もみくちゃにされた……
『くにいーー?! いや島田?! いやいや! 國井でいいんだよな?! 相棒の俺に、なんの報告もなしとか冷たくねぇか?!』
ゴリラのように雄叫びをあげる藤森さんに悪気なく首を絞められたり。
『國井ちゃん……妄想じゃないよね……?』
坪井さんに爽やかな笑顔でさりげなくひどいことを言われたり。
『……桜、午前休憩で――顔かしなさい……』
めでたい席なはずなのに、ずっと報告できていなかった親友からは般若のような顔で迫られたりして――
そんなわけで、秘書室の隣に併設された休憩室で、私は親友による手厳しい取り調べを受けている。
でも、さすがの友子にも『偽装結婚』のことは言えない……。
言ったら友子はすぐさま智秋さんを問いただしそうだし……。
だから。
「――ふぅん……会長からの縁を大切にしたくて、ゼネマネからその日のうちにプロポーズねぇ……」
と、いうことにさせてもらった。どっかで聞いた話だけど(ふたりで話し合った)。
「……まぁ、なんとなく訳ありそうでものすごく気になるけど……、ひとまずおめでとうと言っておく。桜の長年の恋が実ったわけだしね?」
まだ疑わしそうだけれど、これ以上聞かないでいてくれるのも、友子なりの優しさだ。
黙っていたお詫びとして奢った紙パックジュースがジュルジュルと音を立てる。
「この前、友子が背中を押してくれたおかげだよ。それがなかったら、私も突然過ぎて戸惑ってたと思うし」
「――何いってんの。桜の執念でしょ。まぁ、よくわからないけど、せいぜい逃げられないように、胃袋なり床なり掴んで、主導権握っておきなさい」
――ぶっ!
感謝の気持ちに対し、友子らしいおかしな応援が返ってきた。
――でもほんとこの二週間、あっと言う間だった。
まさか、彼がこんなにも積極的に動いてくれるだなんて。
休憩を終えて仕事に戻りながらも、頭はふと、今日までの目まぐるしい記憶を遡る。
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