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夜の街道を走る
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オレたちは今、ギルドが用意してくれた馬を駆って西の街道を走っている。
オレは知らなかったんだけど、男の2人乗りだと普通は馬が潰れてしまうんだそうだ。
だけど、今回借りた馬はもともと戦場を走り回っていた軍馬で、体格が普通の馬よりも2回りは大きい。引退してギルドの定期連絡用として払い下げられてはきたものの、その力強い走りは頼もしいのひとことに尽きる。
だがまあ。
「なあ。オレとタックで乗るんじゃなくて、タックとメルル、ミリゼットとオレのペアで乗れば馬の負担ももうちょい軽いんじゃなかったのか?」
「おいおい、そうしたらメルルちゃんが今のお前みたいにオレにしがみつくんだぞ? お前、それでもいいのかよ」
メルルがタックの腰に手を回してしがみつく様子を想像してみる。
「むぐ……それは嫌だな」
うむ、嫌だ。別にオレとメルルはそういう関係というわけではないけど、なにか嫌だ。
「だろう? だからこれでいいんだよ。それより、【ライト】で照らす場所が近すぎる。もう少し遠くを照らすようにできるか?」
「やってみる」
確か自動車のヘッドライトの基準は、ハイビームで100メートル先を照らせることだったよな。この時間、もう対向馬車もないだろうしそれをイメージして【ライト】を調整していく。
「おお、いい感じじゃねえか。ヒカリはやっぱり魔法の才能だけはたいしたもんだよな」
「そりゃどうも。この一件が終わったら魔法の特訓してやろうか?」
「いや、オレにはベティがいるからな。お前こそ筋肉鍛えたほうがいいんじゃないのか? 指名依頼安く請け負うぜ?」
筋肉か。本当はチャンネル登録者がどかんと伸びてくれればその特典で筋力アップや体力アップなんてことも考えていたんだけど、残念ながら今のとこ伸びがよくないんだよなあ。
他にも欲しいチートなんていくらでもあるんだ。地道に訓練して身に付けられるものは得ておいたほうがいいかもしれないな。
「んー、そうだな。考えておくよ」
「お、なんだ? 筋肉に興味あるクチか?」
「あまりやりすぎるとキャスカに嫌われるらしいからな。細マッチョ、筋持久力重視で頼む」
「おう、任せとけ」
こんな会話を続けることしばし。
「タック殿、ヒカリ殿、前にゴブリンの気配がある! どうする?」
オレたちのすぐ後ろをぴったりと付いてきていたミリゼットが声をかけてきた。
「強行突破する! こんなとこで時間かけてられねえからな。ヒカリ、念のためいつでも魔法撃てるように準備だけはしておけ。」
「「了解!」」
その後20秒もしないうちにゴブリンを視認。奴らも馬の足音に気付いたのか、こちらに走り出してきた。
「【サンダーレイン】!」
雷の雨がゴブリンの頭上に降り注ぐ。
ゴブリンたちはおそらく何が起こったのかも分からなかっただろう。完全なオーバーキルだ。
倒れたゴブリンたちの横をスピードを落とさず駆け抜けていく。
「やっぱすげえよヒカリ。その無詠唱っていうのか? ベティに教えてやってくれよ」
その後も何度かゴブリンや角オオカミと遭遇したが、同じような感じで街道を駆け抜けた。
チャッチャカレを出てから2時間もたっただろうか。
「ここで馬を降りるぞ」
タックの案内で全員が下馬して、馬を近くの木に繋ぐ。
「ここから先は歩きだ。盗賊どもは見張りを出している可能性が高いからな。見つからないよう慎重に進んでいくぞ」
オレは知らなかったんだけど、男の2人乗りだと普通は馬が潰れてしまうんだそうだ。
だけど、今回借りた馬はもともと戦場を走り回っていた軍馬で、体格が普通の馬よりも2回りは大きい。引退してギルドの定期連絡用として払い下げられてはきたものの、その力強い走りは頼もしいのひとことに尽きる。
だがまあ。
「なあ。オレとタックで乗るんじゃなくて、タックとメルル、ミリゼットとオレのペアで乗れば馬の負担ももうちょい軽いんじゃなかったのか?」
「おいおい、そうしたらメルルちゃんが今のお前みたいにオレにしがみつくんだぞ? お前、それでもいいのかよ」
メルルがタックの腰に手を回してしがみつく様子を想像してみる。
「むぐ……それは嫌だな」
うむ、嫌だ。別にオレとメルルはそういう関係というわけではないけど、なにか嫌だ。
「だろう? だからこれでいいんだよ。それより、【ライト】で照らす場所が近すぎる。もう少し遠くを照らすようにできるか?」
「やってみる」
確か自動車のヘッドライトの基準は、ハイビームで100メートル先を照らせることだったよな。この時間、もう対向馬車もないだろうしそれをイメージして【ライト】を調整していく。
「おお、いい感じじゃねえか。ヒカリはやっぱり魔法の才能だけはたいしたもんだよな」
「そりゃどうも。この一件が終わったら魔法の特訓してやろうか?」
「いや、オレにはベティがいるからな。お前こそ筋肉鍛えたほうがいいんじゃないのか? 指名依頼安く請け負うぜ?」
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他にも欲しいチートなんていくらでもあるんだ。地道に訓練して身に付けられるものは得ておいたほうがいいかもしれないな。
「んー、そうだな。考えておくよ」
「お、なんだ? 筋肉に興味あるクチか?」
「あまりやりすぎるとキャスカに嫌われるらしいからな。細マッチョ、筋持久力重視で頼む」
「おう、任せとけ」
こんな会話を続けることしばし。
「タック殿、ヒカリ殿、前にゴブリンの気配がある! どうする?」
オレたちのすぐ後ろをぴったりと付いてきていたミリゼットが声をかけてきた。
「強行突破する! こんなとこで時間かけてられねえからな。ヒカリ、念のためいつでも魔法撃てるように準備だけはしておけ。」
「「了解!」」
その後20秒もしないうちにゴブリンを視認。奴らも馬の足音に気付いたのか、こちらに走り出してきた。
「【サンダーレイン】!」
雷の雨がゴブリンの頭上に降り注ぐ。
ゴブリンたちはおそらく何が起こったのかも分からなかっただろう。完全なオーバーキルだ。
倒れたゴブリンたちの横をスピードを落とさず駆け抜けていく。
「やっぱすげえよヒカリ。その無詠唱っていうのか? ベティに教えてやってくれよ」
その後も何度かゴブリンや角オオカミと遭遇したが、同じような感じで街道を駆け抜けた。
チャッチャカレを出てから2時間もたっただろうか。
「ここで馬を降りるぞ」
タックの案内で全員が下馬して、馬を近くの木に繋ぐ。
「ここから先は歩きだ。盗賊どもは見張りを出している可能性が高いからな。見つからないよう慎重に進んでいくぞ」
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