25 / 32
夜の街道を走る
しおりを挟む
オレたちは今、ギルドが用意してくれた馬を駆って西の街道を走っている。
オレは知らなかったんだけど、男の2人乗りだと普通は馬が潰れてしまうんだそうだ。
だけど、今回借りた馬はもともと戦場を走り回っていた軍馬で、体格が普通の馬よりも2回りは大きい。引退してギルドの定期連絡用として払い下げられてはきたものの、その力強い走りは頼もしいのひとことに尽きる。
だがまあ。
「なあ。オレとタックで乗るんじゃなくて、タックとメルル、ミリゼットとオレのペアで乗れば馬の負担ももうちょい軽いんじゃなかったのか?」
「おいおい、そうしたらメルルちゃんが今のお前みたいにオレにしがみつくんだぞ? お前、それでもいいのかよ」
メルルがタックの腰に手を回してしがみつく様子を想像してみる。
「むぐ……それは嫌だな」
うむ、嫌だ。別にオレとメルルはそういう関係というわけではないけど、なにか嫌だ。
「だろう? だからこれでいいんだよ。それより、【ライト】で照らす場所が近すぎる。もう少し遠くを照らすようにできるか?」
「やってみる」
確か自動車のヘッドライトの基準は、ハイビームで100メートル先を照らせることだったよな。この時間、もう対向馬車もないだろうしそれをイメージして【ライト】を調整していく。
「おお、いい感じじゃねえか。ヒカリはやっぱり魔法の才能だけはたいしたもんだよな」
「そりゃどうも。この一件が終わったら魔法の特訓してやろうか?」
「いや、オレにはベティがいるからな。お前こそ筋肉鍛えたほうがいいんじゃないのか? 指名依頼安く請け負うぜ?」
筋肉か。本当はチャンネル登録者がどかんと伸びてくれればその特典で筋力アップや体力アップなんてことも考えていたんだけど、残念ながら今のとこ伸びがよくないんだよなあ。
他にも欲しいチートなんていくらでもあるんだ。地道に訓練して身に付けられるものは得ておいたほうがいいかもしれないな。
「んー、そうだな。考えておくよ」
「お、なんだ? 筋肉に興味あるクチか?」
「あまりやりすぎるとキャスカに嫌われるらしいからな。細マッチョ、筋持久力重視で頼む」
「おう、任せとけ」
こんな会話を続けることしばし。
「タック殿、ヒカリ殿、前にゴブリンの気配がある! どうする?」
オレたちのすぐ後ろをぴったりと付いてきていたミリゼットが声をかけてきた。
「強行突破する! こんなとこで時間かけてられねえからな。ヒカリ、念のためいつでも魔法撃てるように準備だけはしておけ。」
「「了解!」」
その後20秒もしないうちにゴブリンを視認。奴らも馬の足音に気付いたのか、こちらに走り出してきた。
「【サンダーレイン】!」
雷の雨がゴブリンの頭上に降り注ぐ。
ゴブリンたちはおそらく何が起こったのかも分からなかっただろう。完全なオーバーキルだ。
倒れたゴブリンたちの横をスピードを落とさず駆け抜けていく。
「やっぱすげえよヒカリ。その無詠唱っていうのか? ベティに教えてやってくれよ」
その後も何度かゴブリンや角オオカミと遭遇したが、同じような感じで街道を駆け抜けた。
チャッチャカレを出てから2時間もたっただろうか。
「ここで馬を降りるぞ」
タックの案内で全員が下馬して、馬を近くの木に繋ぐ。
「ここから先は歩きだ。盗賊どもは見張りを出している可能性が高いからな。見つからないよう慎重に進んでいくぞ」
オレは知らなかったんだけど、男の2人乗りだと普通は馬が潰れてしまうんだそうだ。
だけど、今回借りた馬はもともと戦場を走り回っていた軍馬で、体格が普通の馬よりも2回りは大きい。引退してギルドの定期連絡用として払い下げられてはきたものの、その力強い走りは頼もしいのひとことに尽きる。
だがまあ。
「なあ。オレとタックで乗るんじゃなくて、タックとメルル、ミリゼットとオレのペアで乗れば馬の負担ももうちょい軽いんじゃなかったのか?」
「おいおい、そうしたらメルルちゃんが今のお前みたいにオレにしがみつくんだぞ? お前、それでもいいのかよ」
メルルがタックの腰に手を回してしがみつく様子を想像してみる。
「むぐ……それは嫌だな」
うむ、嫌だ。別にオレとメルルはそういう関係というわけではないけど、なにか嫌だ。
「だろう? だからこれでいいんだよ。それより、【ライト】で照らす場所が近すぎる。もう少し遠くを照らすようにできるか?」
「やってみる」
確か自動車のヘッドライトの基準は、ハイビームで100メートル先を照らせることだったよな。この時間、もう対向馬車もないだろうしそれをイメージして【ライト】を調整していく。
「おお、いい感じじゃねえか。ヒカリはやっぱり魔法の才能だけはたいしたもんだよな」
「そりゃどうも。この一件が終わったら魔法の特訓してやろうか?」
「いや、オレにはベティがいるからな。お前こそ筋肉鍛えたほうがいいんじゃないのか? 指名依頼安く請け負うぜ?」
筋肉か。本当はチャンネル登録者がどかんと伸びてくれればその特典で筋力アップや体力アップなんてことも考えていたんだけど、残念ながら今のとこ伸びがよくないんだよなあ。
他にも欲しいチートなんていくらでもあるんだ。地道に訓練して身に付けられるものは得ておいたほうがいいかもしれないな。
「んー、そうだな。考えておくよ」
「お、なんだ? 筋肉に興味あるクチか?」
「あまりやりすぎるとキャスカに嫌われるらしいからな。細マッチョ、筋持久力重視で頼む」
「おう、任せとけ」
こんな会話を続けることしばし。
「タック殿、ヒカリ殿、前にゴブリンの気配がある! どうする?」
オレたちのすぐ後ろをぴったりと付いてきていたミリゼットが声をかけてきた。
「強行突破する! こんなとこで時間かけてられねえからな。ヒカリ、念のためいつでも魔法撃てるように準備だけはしておけ。」
「「了解!」」
その後20秒もしないうちにゴブリンを視認。奴らも馬の足音に気付いたのか、こちらに走り出してきた。
「【サンダーレイン】!」
雷の雨がゴブリンの頭上に降り注ぐ。
ゴブリンたちはおそらく何が起こったのかも分からなかっただろう。完全なオーバーキルだ。
倒れたゴブリンたちの横をスピードを落とさず駆け抜けていく。
「やっぱすげえよヒカリ。その無詠唱っていうのか? ベティに教えてやってくれよ」
その後も何度かゴブリンや角オオカミと遭遇したが、同じような感じで街道を駆け抜けた。
チャッチャカレを出てから2時間もたっただろうか。
「ここで馬を降りるぞ」
タックの案内で全員が下馬して、馬を近くの木に繋ぐ。
「ここから先は歩きだ。盗賊どもは見張りを出している可能性が高いからな。見つからないよう慎重に進んでいくぞ」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる