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とある受付嬢の独白
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わたしはチャッチャカレの冒険者ギルドで働く受付嬢です。
受付は何と言ってもその施設の顔ですから、ある程度の容姿が求められます。
そしてわたしはその中でも筆頭! 自画自賛しても許されるくらいには顔立ちもスタイルも、性格だっていいほうだと思うのです。
最近は女性の冒険者の肩も増えてきましたが、それでもまだまだ男性が幅を利かせていることに変わりはありません。
そんな職場ですから、男性から声をかけられることもしばしばです。
でも、わたしはいちどもお誘いを受けたことはありません。決してコミュ障というわけではありませんよ? 職場の仲間との飲み会では男性職員とも仲良く話せますからね。
じつはわたし、筋肉ムキムキだったり汗臭かったりやたらと威張り散らしたり偉そうにしたりしてる人は嫌いなんです。
そりゃあ仕事ですから、カウンターごしにやりとりする分にはきちんと笑顔で応対はさせていただきます。でもそこまでです。プライベートなお時間ではお相手したいと思えるような男性はいませんでした。
じゃあ別の仕事をすればいい出会いがあるんじゃないかですって?
確かにその通りです。ですが、簡単には今のお仕事をやめられない理由もあるのです。
ずばり、お給金。 時には荒事に巻き込まれることもあるお仕事ですが、その分お給金も高額です。わたしが役職持ちということもあるかもしれませんが、同年代の男性のお給金と比べてもずっと高額です。
女性は家を守るべきという考えがまだまだ強いこの国では、女性のお仕事はまだまだ多くありません。
まあ、わたしの見た目なら色を売るお仕事でもトップになれる自信はありますが、さすがにそれはちょっとと思いますしね。
そんなわたしですから、いつの間にか男性嫌いなのではという噂が立ったこともあるようですが、それは誤解です。男性は好きです。暑苦しい人が嫌いなだけ!
いつも通りに仕事をこなしていたある日のこと。
かららん
ギルドのドアを開けて一組の男女が入ってきました。どちらも見かけたことは無かったと思いますが、どうも街の人たちとは纏っている空気が違うように感じられます。
おっと、わたしのカウンターに来ましたね。お仕事お仕事。
お若いですね。17歳くらいでしょうか? え? 24歳? 失礼じました。でも、よく若く見えるって言われませんか?
黒髪の男性はあまり筋肉もついておらずスラっとした手足。あまり日にも焼けていないようですし、いいところのご子息か何かなのでしょうか。
お連れの銀髪の女性なんて、どこからどう見ても貴族のご令嬢にしか見えません。服装こそわたしたちと似たようなものを着ていらっしゃいますが……あ、もしかしてお忍びでしょうか? それで男性のほうが付き添いの護衛とか? 貴族お抱えの魔法使いなら筋肉を鍛える必要もあまりないですもんね。
違いました。遠くから流れてきた旅人だそうです。
それで冒険者になりたいけど、ノウハウが無いからいちど冒険者を雇って実地でいろいろと勉強したいと。
はい、承りました。ちょうどおすすめの冒険者パーティーがいますよ。タックさんとベティーさんの2人組です。男女のペアで活動しているので、ヒカリさんたちとあれやこれやで揉めることもないと思います。
あれよあれよという間に、Eランク昇格試験を受けられるようになりました。
ずいぶん早いですね?
力や体力はあるけど魔力が全くないということで白眼視されていたダークエルフの方とパーティーを組んでうまくやっていらっしゃるようです。
どうやらヒカリさんとメルルさんおふたりとも優秀な魔法使いだったようで、ミリゼットさんの近接戦闘能力はパーティーにぴったり合うようですね。
でもまだ万全とは言えません。
今はミリゼットさんが斥候も兼ねているようですが、彼女はあくまでも近接戦士タイプ。専門家にはかないません。
そこでご提案ですが、わたしなんてどうですか? これでも昔は女性だけの4人パーティーで斥候と弓の達人だったんですよ? わたし以外の全員が結婚してパーティー解散という裏切り行為にあいましたが、腕はまだまだ落ちていません。解体もお手の物です。ぜひ!わたしを!
力説しているうちにいつの間にかいなくなっていました。
というか、何度か名乗っているはずなのにいまだにわたしのことを受付嬢さんとしか呼んでくれません。もしかして、名前も覚えてもらえていないのでしょうか。
数日後、運よく手に入れたというアイテム袋からダイヤモンドタートルの甲羅を取り出して渡されました。あの、Eランク試験ですよ? カッパータートルの若いのでいいって言いませんでしたっけ?
というか、どうやって倒したんですか? 首の骨が折れている以外外傷が見当たらないのですが……。いえ、そもそもミリゼットさんがいるとはいえFランク冒険者のパーティーで勝てる相手ではないはずなのですが。
ミリゼットさんが仮メンバー扱いから正式メンバーになりました。感動的でした。
あの、ぜひわたしも! 迷惑そうな顔しないでください。祝勝会するんですよね? いいお店知ってますから案内します! お仕事は早退しちゃいますから、今からすぐに行きましょう! 大丈夫です、みんなわたしが嫁き遅れにならないようにチャンスがあったら行けって言ってくれてますから。
ダイヤモンド目当てじゃありませんよ。わたしはお金には困っていませんから。
暑苦しくなく若くて前途有望な優しい冒険者、逃すわけにはいきません。
まずは名前をなんとしても今日覚えてもらいますからね。
わたしはキャスカ。 冒険者に復帰する予定の女。
受付は何と言ってもその施設の顔ですから、ある程度の容姿が求められます。
そしてわたしはその中でも筆頭! 自画自賛しても許されるくらいには顔立ちもスタイルも、性格だっていいほうだと思うのです。
最近は女性の冒険者の肩も増えてきましたが、それでもまだまだ男性が幅を利かせていることに変わりはありません。
そんな職場ですから、男性から声をかけられることもしばしばです。
でも、わたしはいちどもお誘いを受けたことはありません。決してコミュ障というわけではありませんよ? 職場の仲間との飲み会では男性職員とも仲良く話せますからね。
じつはわたし、筋肉ムキムキだったり汗臭かったりやたらと威張り散らしたり偉そうにしたりしてる人は嫌いなんです。
そりゃあ仕事ですから、カウンターごしにやりとりする分にはきちんと笑顔で応対はさせていただきます。でもそこまでです。プライベートなお時間ではお相手したいと思えるような男性はいませんでした。
じゃあ別の仕事をすればいい出会いがあるんじゃないかですって?
確かにその通りです。ですが、簡単には今のお仕事をやめられない理由もあるのです。
ずばり、お給金。 時には荒事に巻き込まれることもあるお仕事ですが、その分お給金も高額です。わたしが役職持ちということもあるかもしれませんが、同年代の男性のお給金と比べてもずっと高額です。
女性は家を守るべきという考えがまだまだ強いこの国では、女性のお仕事はまだまだ多くありません。
まあ、わたしの見た目なら色を売るお仕事でもトップになれる自信はありますが、さすがにそれはちょっとと思いますしね。
そんなわたしですから、いつの間にか男性嫌いなのではという噂が立ったこともあるようですが、それは誤解です。男性は好きです。暑苦しい人が嫌いなだけ!
いつも通りに仕事をこなしていたある日のこと。
かららん
ギルドのドアを開けて一組の男女が入ってきました。どちらも見かけたことは無かったと思いますが、どうも街の人たちとは纏っている空気が違うように感じられます。
おっと、わたしのカウンターに来ましたね。お仕事お仕事。
お若いですね。17歳くらいでしょうか? え? 24歳? 失礼じました。でも、よく若く見えるって言われませんか?
黒髪の男性はあまり筋肉もついておらずスラっとした手足。あまり日にも焼けていないようですし、いいところのご子息か何かなのでしょうか。
お連れの銀髪の女性なんて、どこからどう見ても貴族のご令嬢にしか見えません。服装こそわたしたちと似たようなものを着ていらっしゃいますが……あ、もしかしてお忍びでしょうか? それで男性のほうが付き添いの護衛とか? 貴族お抱えの魔法使いなら筋肉を鍛える必要もあまりないですもんね。
違いました。遠くから流れてきた旅人だそうです。
それで冒険者になりたいけど、ノウハウが無いからいちど冒険者を雇って実地でいろいろと勉強したいと。
はい、承りました。ちょうどおすすめの冒険者パーティーがいますよ。タックさんとベティーさんの2人組です。男女のペアで活動しているので、ヒカリさんたちとあれやこれやで揉めることもないと思います。
あれよあれよという間に、Eランク昇格試験を受けられるようになりました。
ずいぶん早いですね?
力や体力はあるけど魔力が全くないということで白眼視されていたダークエルフの方とパーティーを組んでうまくやっていらっしゃるようです。
どうやらヒカリさんとメルルさんおふたりとも優秀な魔法使いだったようで、ミリゼットさんの近接戦闘能力はパーティーにぴったり合うようですね。
でもまだ万全とは言えません。
今はミリゼットさんが斥候も兼ねているようですが、彼女はあくまでも近接戦士タイプ。専門家にはかないません。
そこでご提案ですが、わたしなんてどうですか? これでも昔は女性だけの4人パーティーで斥候と弓の達人だったんですよ? わたし以外の全員が結婚してパーティー解散という裏切り行為にあいましたが、腕はまだまだ落ちていません。解体もお手の物です。ぜひ!わたしを!
力説しているうちにいつの間にかいなくなっていました。
というか、何度か名乗っているはずなのにいまだにわたしのことを受付嬢さんとしか呼んでくれません。もしかして、名前も覚えてもらえていないのでしょうか。
数日後、運よく手に入れたというアイテム袋からダイヤモンドタートルの甲羅を取り出して渡されました。あの、Eランク試験ですよ? カッパータートルの若いのでいいって言いませんでしたっけ?
というか、どうやって倒したんですか? 首の骨が折れている以外外傷が見当たらないのですが……。いえ、そもそもミリゼットさんがいるとはいえFランク冒険者のパーティーで勝てる相手ではないはずなのですが。
ミリゼットさんが仮メンバー扱いから正式メンバーになりました。感動的でした。
あの、ぜひわたしも! 迷惑そうな顔しないでください。祝勝会するんですよね? いいお店知ってますから案内します! お仕事は早退しちゃいますから、今からすぐに行きましょう! 大丈夫です、みんなわたしが嫁き遅れにならないようにチャンスがあったら行けって言ってくれてますから。
ダイヤモンド目当てじゃありませんよ。わたしはお金には困っていませんから。
暑苦しくなく若くて前途有望な優しい冒険者、逃すわけにはいきません。
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