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激闘 ヴェルガノン帝国
第125話 ヴリトラ討伐戦
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各地の収穫が終わった晩秋のある日の早朝、マコトは僧兵およそ11000とダークエルフやジャック・オー・ランタンら魔術師1000を集めて出陣式を行う。
「各員、本来なら収穫祭のところだが無理を言って集まってもらった。すまない、それは謝ろう。
だが今は非常事態だ。ヴリトラの手により水源が枯れ果てようとしている。そうなれば春の種まきで作物が芽吹くことが無くなり、渇きと飢えが西大陸を覆うことになりかねない。
それを防ぐために君たちに集まってもらった。この戦いでヴリトラを討ち西大陸の、いや世界の平和を守るために戦ってほしい。以上だ」
山脈の隙間を縫うようなけもの道を歩いていると、魔力の扱いに長けたダークエルフや僧兵たちの表情が徐々にこわばる。ヴェルガノン帝国の帝都で見た、あの圧倒的な魔力と瘴気を見て圧迫感を感じていた。
やがて、台地に着くとそこにはあばら骨がはっきりと見える灰色のドラゴンという、先客がいた。
「グルルル……」
ヴェルガノン帝国での戦いの傷がまだ完全に癒えてないヴリトラはうなり声をあげながら生者たちをにらんだ。
マコト率いるハシバ国軍はヴァジュラ、あるいは現在では5門に増えたヴァジュラヘッドを中心とした6つの隊に分け、兵を配置する。
「閣下。各隊配置につきました。いつでも戦えます!」
「よし、ヴリトラを仕留めろ! 砲撃開始!」
ヴァジュラに乗り込んだマコトがヴァジュラヘッドに指示を飛ばす。戦争の火ぶたが切って落とされた。
砲から、ドォン! ドォン! という腹に響くような重低音とともに砲弾を発射する。
魔力による加速機構のついた砲弾は空中で加速しつつ敵であるヴリトラに撃ち込まれ、腕に2発、胴体に2発命中する。
「グルルルルル……!」
今度はヴリトラの番。低空飛行でヴァジュラヘッドの内の1門に急接近し、至近距離からブレスを放つ!
「防御魔法展開!」
大隊長の指揮の元、防御魔法を展開しヴァジュラヘッドをブレスから守る。その直後、ヴリトラは腕を振り下ろして攻撃してくる。だがこれも防御魔法でしのぐ。
お返しと言わんばかりに突っ込んできたヴリトラに対し砲兵たちが一斉に砲を向け、砲弾を発射する。背中に3発、胸に2発着弾する。
それでも相手は止まらずブレスを吐き、殴る蹴ると追い込んでいく。防御魔法によるシールドにヒビが入っていく。
「ダメです! もう持ちません!」
「クソッ! ここまでか! 総員退避! ブレスの直撃は食らうな! 散れ!」
ヴリトラのブレスがシールドを貫通し、ブレスが兵士たちに降り注いだ。
「第4隊被害甚大! 3割強がアンデッド化!」
「怯むな! ここが正念場だ! 相手も弱っている! 今ならトドメをさせるぞ! それまで踏ん張れ! 生者の意地を見せろ!」
(……なるほど。私じゃないとまともに相手はできない、か)
戦場で戦況を読んでいたシグリッドは自分が配下も上官もいない自分一人だけの部隊に配属されていた理由を察する。ただの人間が本気を出した吸血鬼であるシグリッドについていけないからだろう。
彼はヴェルガノン帝国戦で使った墨のように黒いロウソクに火をともした。
筋肉で膨れ上がった図体に似合わない程、早馬のように早く駆けヴリトラの足元に潜り込み、ドラゴンの足の小指を全力でぶん殴った。
「グゥア!?」
人間がタンスの角に小指をぶつけて痛がるのと同様に痛みを感じていた。その怒りを込めた右腕をシグリッド目がけて振り下ろす。もちろん彼はそんなのに当たるような間抜けではなく、いともたやすく回避する。
灰色のドラゴンがうるさいハエを追い払ったその直後! 砲弾が飛んでくる。足元に気を取られていたヴリトラは回避できずに食らってしまう。胸に3発と腹に1発、直撃する。
「グルルルル……」
ヴリトラはうなり声をあげた後、形勢が悪くなったのを見てか、翼を広げて上空へと飛び立とうと羽ばたきをしていた。
「あいつ! また逃げる気だ!」
「そうはさせん!」
システィアーノが入力機構のある魔導器具を操作しながらヴァジュラやヴァジュラヘッドの砲弾に残した秘策を披露する。
「ヴァジュラやヴァジュラヘッドの砲弾には魔力が残っておる。たとえヴリトラの身体に命中したものにも、な。それを使えば……こうじゃ!」
ヴリトラの身体にめり込んだ砲弾から虹色の鎖が飛び出し、翼に絡みつく!
「ガアア!?」
空中で翼を縛られるという突然の事態に慌てるヴリトラは垂直落下し、ズズーン。という轟音を立てて背中から地面に着地した。
「今じゃ! やれ!」
「人間を舐めるんじゃねえ! うおおおお!」
慌てて姿勢を直そうとするヴリトラに向けて、砲兵達は砲弾を一斉に撃った。胸と腹にそれぞれ2発、砲弾がめり込む。
「ギアアアア!」
相手は不意を突かれたのが効いたのか苦痛に歪んだ声をあげる。砲撃は効いているようだ。
「グウウ……ウオアアア!」
ヴリトラはよろよろとした動きだが、そばにいたヴァジュラに近づき、両手でつかみ、持ち上げる。
「! しまった!」
「か、閣下! ヤバイですぜ!」
「落ち着け! 今こそチャンスだ! 奴がブレスを吐き出す直前、口を開けた瞬間に砲弾を叩き込め!」
マコトは指示を飛ばす。
ヴリトラ大きく息を吸い、ブレスを吐き出そうと口を開けようとした、まさにその瞬間……。
「今だ!!」
その絶妙のタイミングでそこ目がけて砲弾を放つ。敵の喉を貫通し大きな穴が空いた。
【次回予告】
その日、4000年前のエルフたちですら成し遂げられなかった偉業が、成された。
最終話 「ヴリトラ殺しの偉業」
「各員、本来なら収穫祭のところだが無理を言って集まってもらった。すまない、それは謝ろう。
だが今は非常事態だ。ヴリトラの手により水源が枯れ果てようとしている。そうなれば春の種まきで作物が芽吹くことが無くなり、渇きと飢えが西大陸を覆うことになりかねない。
それを防ぐために君たちに集まってもらった。この戦いでヴリトラを討ち西大陸の、いや世界の平和を守るために戦ってほしい。以上だ」
山脈の隙間を縫うようなけもの道を歩いていると、魔力の扱いに長けたダークエルフや僧兵たちの表情が徐々にこわばる。ヴェルガノン帝国の帝都で見た、あの圧倒的な魔力と瘴気を見て圧迫感を感じていた。
やがて、台地に着くとそこにはあばら骨がはっきりと見える灰色のドラゴンという、先客がいた。
「グルルル……」
ヴェルガノン帝国での戦いの傷がまだ完全に癒えてないヴリトラはうなり声をあげながら生者たちをにらんだ。
マコト率いるハシバ国軍はヴァジュラ、あるいは現在では5門に増えたヴァジュラヘッドを中心とした6つの隊に分け、兵を配置する。
「閣下。各隊配置につきました。いつでも戦えます!」
「よし、ヴリトラを仕留めろ! 砲撃開始!」
ヴァジュラに乗り込んだマコトがヴァジュラヘッドに指示を飛ばす。戦争の火ぶたが切って落とされた。
砲から、ドォン! ドォン! という腹に響くような重低音とともに砲弾を発射する。
魔力による加速機構のついた砲弾は空中で加速しつつ敵であるヴリトラに撃ち込まれ、腕に2発、胴体に2発命中する。
「グルルルルル……!」
今度はヴリトラの番。低空飛行でヴァジュラヘッドの内の1門に急接近し、至近距離からブレスを放つ!
「防御魔法展開!」
大隊長の指揮の元、防御魔法を展開しヴァジュラヘッドをブレスから守る。その直後、ヴリトラは腕を振り下ろして攻撃してくる。だがこれも防御魔法でしのぐ。
お返しと言わんばかりに突っ込んできたヴリトラに対し砲兵たちが一斉に砲を向け、砲弾を発射する。背中に3発、胸に2発着弾する。
それでも相手は止まらずブレスを吐き、殴る蹴ると追い込んでいく。防御魔法によるシールドにヒビが入っていく。
「ダメです! もう持ちません!」
「クソッ! ここまでか! 総員退避! ブレスの直撃は食らうな! 散れ!」
ヴリトラのブレスがシールドを貫通し、ブレスが兵士たちに降り注いだ。
「第4隊被害甚大! 3割強がアンデッド化!」
「怯むな! ここが正念場だ! 相手も弱っている! 今ならトドメをさせるぞ! それまで踏ん張れ! 生者の意地を見せろ!」
(……なるほど。私じゃないとまともに相手はできない、か)
戦場で戦況を読んでいたシグリッドは自分が配下も上官もいない自分一人だけの部隊に配属されていた理由を察する。ただの人間が本気を出した吸血鬼であるシグリッドについていけないからだろう。
彼はヴェルガノン帝国戦で使った墨のように黒いロウソクに火をともした。
筋肉で膨れ上がった図体に似合わない程、早馬のように早く駆けヴリトラの足元に潜り込み、ドラゴンの足の小指を全力でぶん殴った。
「グゥア!?」
人間がタンスの角に小指をぶつけて痛がるのと同様に痛みを感じていた。その怒りを込めた右腕をシグリッド目がけて振り下ろす。もちろん彼はそんなのに当たるような間抜けではなく、いともたやすく回避する。
灰色のドラゴンがうるさいハエを追い払ったその直後! 砲弾が飛んでくる。足元に気を取られていたヴリトラは回避できずに食らってしまう。胸に3発と腹に1発、直撃する。
「グルルルル……」
ヴリトラはうなり声をあげた後、形勢が悪くなったのを見てか、翼を広げて上空へと飛び立とうと羽ばたきをしていた。
「あいつ! また逃げる気だ!」
「そうはさせん!」
システィアーノが入力機構のある魔導器具を操作しながらヴァジュラやヴァジュラヘッドの砲弾に残した秘策を披露する。
「ヴァジュラやヴァジュラヘッドの砲弾には魔力が残っておる。たとえヴリトラの身体に命中したものにも、な。それを使えば……こうじゃ!」
ヴリトラの身体にめり込んだ砲弾から虹色の鎖が飛び出し、翼に絡みつく!
「ガアア!?」
空中で翼を縛られるという突然の事態に慌てるヴリトラは垂直落下し、ズズーン。という轟音を立てて背中から地面に着地した。
「今じゃ! やれ!」
「人間を舐めるんじゃねえ! うおおおお!」
慌てて姿勢を直そうとするヴリトラに向けて、砲兵達は砲弾を一斉に撃った。胸と腹にそれぞれ2発、砲弾がめり込む。
「ギアアアア!」
相手は不意を突かれたのが効いたのか苦痛に歪んだ声をあげる。砲撃は効いているようだ。
「グウウ……ウオアアア!」
ヴリトラはよろよろとした動きだが、そばにいたヴァジュラに近づき、両手でつかみ、持ち上げる。
「! しまった!」
「か、閣下! ヤバイですぜ!」
「落ち着け! 今こそチャンスだ! 奴がブレスを吐き出す直前、口を開けた瞬間に砲弾を叩き込め!」
マコトは指示を飛ばす。
ヴリトラ大きく息を吸い、ブレスを吐き出そうと口を開けようとした、まさにその瞬間……。
「今だ!!」
その絶妙のタイミングでそこ目がけて砲弾を放つ。敵の喉を貫通し大きな穴が空いた。
【次回予告】
その日、4000年前のエルフたちですら成し遂げられなかった偉業が、成された。
最終話 「ヴリトラ殺しの偉業」
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