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第五章〜私達兄妹は冒険者になります〜
5-16 緊急会議と調査そして今後の対策
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街の近くにある森で"偶然"遭遇したS級クラスの魔物。
街に入る前に門前にてロドじぃーちゃん達に一連の事を私達の代わりに説明するドラしゃん。
どうやら私が使用した魔法は街でいたロドじぃーちゃん達にも気付かれていた様だったので、話は早かったみたい。
急に膨大な魔力を感じた為それぞれ建物の屋上から魔力を感じる方へ目を向けると光輝く槍の様なものが浮かんでいたと。
感じる魔力からしてドラしゃんやセバしゃんではない事はわかり...では誰の魔力??と皆が疑問に感じている中いち早くに気付いたのはお母さんとお父さんだった。
私の魔力だと気付いた二人は森に行こうとしたのを門番をしていたラディじぃーちゃんが全力で止めたという。
上空に浮いていた槍が森へと降り注いだと思ったら、とんでもない魔物を持って帰ってきたと報告が来るのでロドじぃーちゃん達の寿命はいくらか縮んだとお説教されたのだ。
「あれ程無茶をするなと言っていたのに...。」
この国の主要人物達には囲まれてお説教される私達の姿はとてもシュールだった...。
せっかく魔物退治してきたのに...。
今回倒した魔物については私達パーティーの功績となった。
素材等は全て私達に権限を委ねられることになった。
あと、討伐と素材集めに関しては今回の魔物退治でクリアとみなされた。
しかし、この魔物の登場によって各国々の主要者達は頭を抱える事となったのだ。
本来存在しない場所に、存在してはいけない魔物が出た事は何か不吉な事が起きる予兆ではないか?
そんな声も上がったからだ。
とりあえず私達は倒した魔物をギルドに預けて自宅待機を命じられた。
主要人物達のみギルドの会議室に集められて急遽話し合いとなった。
私とお兄ちゃんはと言うと、その会議になぜか参加させられることに。
会議室の話し合いには、魔法水晶にて各国の王様達も参加した。
「急な会議で申し訳ない。実は...。」
ロドじぃーちゃんが代表で話をしようとした時だった。
魔法水晶から各国の同盟国の国王様達から声が上がったのだ。
しかも...
「どうせリンかアキラがなんかしたんだろう?」
「多分九割でリンだな。」
「ああ。リンだな。」
「リンさんですね。」
まるでみてきたかのような物言いをされたので、私は頬を膨らませる。
皆は笑いを堪えるのに必死だった。
ここで笑ったら私が完全に拗ねるのがわかっているからだ。
「い、いやっ。リン...なんだが...ちょっと違うんだ。くくっ。」
必死に笑いを堪えながらロドじぃーちゃんが説明をしようとした。
「もう!皆失礼だよ!あのね!街の近くの森にでっかい可愛くない熊型の魔物がでたの!それを私が倒したの!」
私がそう叫ぶ様に説明したら、魔法水晶越しに国王様達は固まったのだ。
私の説明に付け足す様にドラしゃんとセバしゃんが補足説明をしてくれた。
「本日、魔物退治と素材集めの依頼を受けて街の近くの新人冒険者が使う森へと出向いたのです。」
『そこで、標高の高い山の奥にしか存在しないS級クラスの魔物である"ドルベアギング"が三頭も現れたのです。
それをお嬢様が魔法で仕留めました。と言う感じです。』
セバしゃんとドラしゃんの説明で王様達は口をパクパクさせる。
そんな王様達の様子を見て皆はうんうんと頷いていた。
まるでその気持ちわかるぞって言う感じに。
そんな王様達にロドじぃーちゃんは咳払いをして話を続ける。
「ごっほん。で、リンがどうこう言う前に、本来いるべきではない場所にS級クラスの魔物が存在したのが問題だ。
今回街の近くの森に出た。もしそれが街に来てたら大惨事だ。」
「そうだね。今回運良くリンが倒せたから良かったものの他の新人冒険者だったら...。そう考えるとね。」
ロドじぃーちゃんの言葉にルミばぁーちゃんも続いて発言する。
「確かに。それは言えている。他の奴なら今頃喰われていただろう。
それに街にもそれなりの被害があっただろう。一応この会議が終わったらワシとロドムカ、ラディーミルとカシムで森と近くの鉱山を見にいく予定だ。」
ムキじぃーちゃんもルミばぁーちゃんに続く形で真剣な表情で話をする。
じぃーちゃん達の話を聞いていてようやく頭が整理できた王様達が話に参加してきた。
「わかった。それならこたたらも近辺を各冒険者ギルドに連絡して調べさせるよ。」
「そうだな。こっちもそうしよう。」
「俺の所もすぐ手配するさ。」
「私達の所も早急にその様に対応します。」
「では、何かあれば必ず報告を。」
「「「「了解。」」」」
話し合いは思ったより短時間で終わった。
会議が終わると早々にムキじぃーちゃん、ロドじぃーちゃん、ラディじぃーちゃん、カシムじぃーちゃんは武装して街の外へと向かった。
じぃーちゃん達が帰ってくるまで警備は厳重にして必要以上に街から外に出ないようにルミばぁーちゃん達が街全体に通達をする。
もちろんル他の街にもこの話を伝えていた。
四方の街もそれぞれ近場の森や鉱山など冒険者が訪れる場所を調べに行ってもらえることになった。
あらかた対応がとれたのを確認して私とお兄ちゃんはドラしゃんに連れられて家に戻る。
両親も今日は工房での仕事を早めに切り上げて自宅へ戻って来てくれた。
この日は街全体に緊張感が走ることになったので、街で滞在していた冒険者達も街の警備に参加してくれることになった。
見張りの人数もいつもより多く対応していた。
私は日が沈む頃には歩ける様になった。
その頃には調査に出ていたムキじぃーちゃん達が無事に戻ってきていた。
S級クラスの魔物は今の所いなかったが、以前には見かけなかった高ランクの魔物が気持ち増えてきていると話すムキじぃーちゃん達。
とりあえず、場違いな魔物は間引いてきたとの事。
他の街からも特に異変はなかったが、警戒はしておくと連絡も次々と届いた。
後は同盟国からの連絡待ちとなった。
同盟国からの連絡は翌日に冒険者ギルドの方へ来た。
同盟国の方もその場にそぐわない魔物が
やはりいたという連絡が入ってきたのだ。
レベルはそこまで高くなかったが、なぜこの地にこんな魔物が?と言う感じだったとのこと。
もちろんそれらは冒険者達によって討伐されたとも報告があった。
この連絡を受けて私達もギルドに呼ばれて話し合いとなった。
「急にすまないなぁー。」
いつもながらロドじぃーちゃんの司会にて話し合いが始まった。
「どうやら他の国でもここみたいに、その地にそぐわない魔物の出現が確認された。幸いココほど魔物のレベルが高かったわけでもないがなぁ...。
ちゃんと冒険者によってそれぞれ討伐はされている。」
ロドじぃーちゃんの言葉に一堂安心の声が上がる。
しかしだ。
「しかしおかしいわね。なんで、今頃になってこんな事が起きてるだろうね。」
「季節的にもそこまで食べ物に困窮する様な状況ではないですしね。」
どうやら魔物も食べ物になるものが減るとたまに生息域からでてくる事があるそうだ。
しかしそれも滅多とない事。
じゃー...。
「じゃー今回のはなんだったの?」
私がそう質問すると皆が静かになり腕を組んで黙ってしまった。
「え???」
私があたりを見回していると...。
『まるで、"以前の世界"に戻りつつある様な気がしますね。』
ドラしゃんがボソッと呟く。
「えっ?以前の世界?」
『ええ。ムキファーや王などの異世界から人々が訪れるより遥か昔の状態に。
その頃は至る所に魔物が存在して魔物同士の争いなども頻繁にありましたからね。
弱者である人間は魔物の脅威に怯えなが暮らしてました。』
ドラしゃんは私の顔を見ながら淡々と昔話をするかの様に話し出した。
『魔物のおかげで人間達は住む場所を点々と変えて生活していました。
もちろん移動中も襲われたりもしてましたね。
このままでは自分達は滅んでしまうと考えた一部の人間が立ち上がり、"冒険者"と言うものを作ったはずです。』
ドラしゃんのその言葉にラミィお兄ちゃんも同調して話出す。
「ええ。その通りです。己を鍛え上げて、残った種族で支えてあって武器や防具も作り魔物に立ち向かってましたね。懐かしい話です。」
微笑しながら話すラミィお兄ちゃん。
ドラしゃん以外の人達は驚きながら話を聞いていた。
どうやらドラしゃんとラミィお兄ちゃんは同世代?で後は後輩に当たる感じなんだなぁーとこの時悟った。
『武装した人間達がなんとか束になってかかって魔物を退治していましたが、それでも太刀打ちできるにも限度がありましたね。
そこで傷つきながら帰ってくる旦那や恋人。中には遺体になって...いいえ。遺体すらなく遺品だけ返ってくる場合もありましたね。
そんな状況に打ちひしがれた女性たちが神様にお願いをしたんです。』
「そうでしたね。あまりに悲痛な願に神様も黙って見守っていられなくなり、異世界より人を招き入れ人類の全滅を防ごうとされたんですよね。」
ここに来てようやくムキじぃーちゃん達が話に参加してきた。
「そういや...ワシがこの世界に来た時に奴がなんや言うてたなぁー。
ちょうどワシのいた世界では戦争が続いていたからなぁー。
無益に散って行く命を有効利用させて欲しいとかも言っていたなぁー。」
「そういや私らの子供の頃からかね、"異世界人"と言うのが急に来て魔物を次々と討伐していってくれたんだよね。男も女も"異世界人"と呼ばれる人達は強く不思議な力をもってたんだよね。」
ルミばぁーちゃんもそう言って昔を懐かしみながら話してくれた。
「あの頃は次から次へと色んな奴らが来てたよなぁー。"異世界人"と"転生人"とな。どいつもこいつも強いし、見た目が特徴的だったからなぁー。俺も覚えてるわ。」
ロドじぃーちゃんもそう言って笑顔で話しをする。
なんやら年寄りの昔話大会みたいになりつつある会議。
しかしこの話は私達家族にとってはとても参考になる話でもあったので、皆黙って話を聞いていた。
「異世界から来た人々はね、見た目の割には幼く見えたんだよね。」
「ああ。それなのにえげつない程強いんだ。あんだけ親父達が苦労して退治していた魔物達を一気に殲滅させて行ったからなぁー。」
「その日を境に人々も一定の場所に住居を構えて生活出来る様になったんでしたよね?」
「ああ。それまでは地獄だったよ。」
「確かにね。異世界から来た人間の中には博識な者もいてね。魔物が侵入できない様な建物作りや街の構造とかも教えてくれてね。」
「あっ!あったなぁー!戦い方や植物の知識なんかも教えてもらったよなぁー。」
『魔物の数が減るごとに異世界から招かれる人の数も減ってきましたね。
確か旦那様達が最新の異世界人のはず。
それまでずっと異世界からの人は来てませんでしたから。』
「そうなんですか?」
父さんがそう言うと皆が頷いていた。
「俺たちの世界は一度滅びかけて、異世界の人達によって蘇ったんだよなぁー。」
「各国に皆が散っていて、少しずつ国を再建していったのさ。だから他の同盟国の連中も異世界人に対して偏見なかっただろう?」
ロドじぃーちゃんの言葉に私達家族は頷いた。
確かに皆は普通に接していてくれた。
そこで最初に話がもどった。
『ですから、もしかしてですが...以前の様な魔物がはびこる世の中に戻ろうとしているのではないでしょうか?』
ドラしゃんのこの言葉に皆がハッとした表情を浮かべてドラしゃんを見る。
それなら今回の件に少しながら納得がいくからだ。
しかし...。
「なんで今頃なんだ?」
「人が増えたからでしょうか?」
「はっ??」
「種族はともかく人の数が増えたからではないでしょうか?ですからパワーバランスを保つために...と考えたら...。」
ラミィお兄ちゃんの言葉に皆は驚愕する。
確かにそれなら今回の魔物の件に関して理解がしやすかった。
『どんな事が理由であれ今回みたいな事が起きることは十分予測されます。
冒険者の質の向上と魔物に対しての知識の向上。
自身の防衛と街の防衛について再度人々にする必要がありますね。』
ドラしゃんの言葉に皆は頷いた。
もちろん水晶中継で繋がっている王様達もだ。
この日から各国、街ごとに魔物に対しての自衛策が盛り込まれた。
冒険者だけでなく普通の人たちにもだ。
人種や身分など関係なく対応された。
私達の国も同じだ。
街ごとに伝達を出し、今回みたいな事が起きることは十分予測される事。
冒険者の質の向上と魔物に対しての知識の向上。
自身の防衛と街の防衛について再度人々にする必要がある事を伝え、手段についても各国統一して行う事にした。
そのために、ドラしゃんとラミィお兄ちゃんから魔物に対する知識を聞き出し本にした。
それを元に複製して、各国配布した。
その本には絵付きで、魔物の情報が細かく記載されているのだ。
それを国と冒険者ギルドを中心に配布して、そこからはそれぞれのトップに任せた。
わからないことはその都度私達の国連絡する様伝えてた。
こうして少しずつだが、魔物に対しての対応策を取る事にした。
過去の惨劇を繰り返さないために。
リン:
ドラしゃんとラミィお兄ちゃん。
どんだけ長寿なんだろう。
アキラ:
それより、皆んなもかなり長寿じゃない?
リン:
じゃーもしかして皆んな不死なんだろうか?
アキラ:
えっ?!それはないよ?!
でも...そうなのかなぁ?
街に入る前に門前にてロドじぃーちゃん達に一連の事を私達の代わりに説明するドラしゃん。
どうやら私が使用した魔法は街でいたロドじぃーちゃん達にも気付かれていた様だったので、話は早かったみたい。
急に膨大な魔力を感じた為それぞれ建物の屋上から魔力を感じる方へ目を向けると光輝く槍の様なものが浮かんでいたと。
感じる魔力からしてドラしゃんやセバしゃんではない事はわかり...では誰の魔力??と皆が疑問に感じている中いち早くに気付いたのはお母さんとお父さんだった。
私の魔力だと気付いた二人は森に行こうとしたのを門番をしていたラディじぃーちゃんが全力で止めたという。
上空に浮いていた槍が森へと降り注いだと思ったら、とんでもない魔物を持って帰ってきたと報告が来るのでロドじぃーちゃん達の寿命はいくらか縮んだとお説教されたのだ。
「あれ程無茶をするなと言っていたのに...。」
この国の主要人物達には囲まれてお説教される私達の姿はとてもシュールだった...。
せっかく魔物退治してきたのに...。
今回倒した魔物については私達パーティーの功績となった。
素材等は全て私達に権限を委ねられることになった。
あと、討伐と素材集めに関しては今回の魔物退治でクリアとみなされた。
しかし、この魔物の登場によって各国々の主要者達は頭を抱える事となったのだ。
本来存在しない場所に、存在してはいけない魔物が出た事は何か不吉な事が起きる予兆ではないか?
そんな声も上がったからだ。
とりあえず私達は倒した魔物をギルドに預けて自宅待機を命じられた。
主要人物達のみギルドの会議室に集められて急遽話し合いとなった。
私とお兄ちゃんはと言うと、その会議になぜか参加させられることに。
会議室の話し合いには、魔法水晶にて各国の王様達も参加した。
「急な会議で申し訳ない。実は...。」
ロドじぃーちゃんが代表で話をしようとした時だった。
魔法水晶から各国の同盟国の国王様達から声が上がったのだ。
しかも...
「どうせリンかアキラがなんかしたんだろう?」
「多分九割でリンだな。」
「ああ。リンだな。」
「リンさんですね。」
まるでみてきたかのような物言いをされたので、私は頬を膨らませる。
皆は笑いを堪えるのに必死だった。
ここで笑ったら私が完全に拗ねるのがわかっているからだ。
「い、いやっ。リン...なんだが...ちょっと違うんだ。くくっ。」
必死に笑いを堪えながらロドじぃーちゃんが説明をしようとした。
「もう!皆失礼だよ!あのね!街の近くの森にでっかい可愛くない熊型の魔物がでたの!それを私が倒したの!」
私がそう叫ぶ様に説明したら、魔法水晶越しに国王様達は固まったのだ。
私の説明に付け足す様にドラしゃんとセバしゃんが補足説明をしてくれた。
「本日、魔物退治と素材集めの依頼を受けて街の近くの新人冒険者が使う森へと出向いたのです。」
『そこで、標高の高い山の奥にしか存在しないS級クラスの魔物である"ドルベアギング"が三頭も現れたのです。
それをお嬢様が魔法で仕留めました。と言う感じです。』
セバしゃんとドラしゃんの説明で王様達は口をパクパクさせる。
そんな王様達の様子を見て皆はうんうんと頷いていた。
まるでその気持ちわかるぞって言う感じに。
そんな王様達にロドじぃーちゃんは咳払いをして話を続ける。
「ごっほん。で、リンがどうこう言う前に、本来いるべきではない場所にS級クラスの魔物が存在したのが問題だ。
今回街の近くの森に出た。もしそれが街に来てたら大惨事だ。」
「そうだね。今回運良くリンが倒せたから良かったものの他の新人冒険者だったら...。そう考えるとね。」
ロドじぃーちゃんの言葉にルミばぁーちゃんも続いて発言する。
「確かに。それは言えている。他の奴なら今頃喰われていただろう。
それに街にもそれなりの被害があっただろう。一応この会議が終わったらワシとロドムカ、ラディーミルとカシムで森と近くの鉱山を見にいく予定だ。」
ムキじぃーちゃんもルミばぁーちゃんに続く形で真剣な表情で話をする。
じぃーちゃん達の話を聞いていてようやく頭が整理できた王様達が話に参加してきた。
「わかった。それならこたたらも近辺を各冒険者ギルドに連絡して調べさせるよ。」
「そうだな。こっちもそうしよう。」
「俺の所もすぐ手配するさ。」
「私達の所も早急にその様に対応します。」
「では、何かあれば必ず報告を。」
「「「「了解。」」」」
話し合いは思ったより短時間で終わった。
会議が終わると早々にムキじぃーちゃん、ロドじぃーちゃん、ラディじぃーちゃん、カシムじぃーちゃんは武装して街の外へと向かった。
じぃーちゃん達が帰ってくるまで警備は厳重にして必要以上に街から外に出ないようにルミばぁーちゃん達が街全体に通達をする。
もちろんル他の街にもこの話を伝えていた。
四方の街もそれぞれ近場の森や鉱山など冒険者が訪れる場所を調べに行ってもらえることになった。
あらかた対応がとれたのを確認して私とお兄ちゃんはドラしゃんに連れられて家に戻る。
両親も今日は工房での仕事を早めに切り上げて自宅へ戻って来てくれた。
この日は街全体に緊張感が走ることになったので、街で滞在していた冒険者達も街の警備に参加してくれることになった。
見張りの人数もいつもより多く対応していた。
私は日が沈む頃には歩ける様になった。
その頃には調査に出ていたムキじぃーちゃん達が無事に戻ってきていた。
S級クラスの魔物は今の所いなかったが、以前には見かけなかった高ランクの魔物が気持ち増えてきていると話すムキじぃーちゃん達。
とりあえず、場違いな魔物は間引いてきたとの事。
他の街からも特に異変はなかったが、警戒はしておくと連絡も次々と届いた。
後は同盟国からの連絡待ちとなった。
同盟国からの連絡は翌日に冒険者ギルドの方へ来た。
同盟国の方もその場にそぐわない魔物が
やはりいたという連絡が入ってきたのだ。
レベルはそこまで高くなかったが、なぜこの地にこんな魔物が?と言う感じだったとのこと。
もちろんそれらは冒険者達によって討伐されたとも報告があった。
この連絡を受けて私達もギルドに呼ばれて話し合いとなった。
「急にすまないなぁー。」
いつもながらロドじぃーちゃんの司会にて話し合いが始まった。
「どうやら他の国でもここみたいに、その地にそぐわない魔物の出現が確認された。幸いココほど魔物のレベルが高かったわけでもないがなぁ...。
ちゃんと冒険者によってそれぞれ討伐はされている。」
ロドじぃーちゃんの言葉に一堂安心の声が上がる。
しかしだ。
「しかしおかしいわね。なんで、今頃になってこんな事が起きてるだろうね。」
「季節的にもそこまで食べ物に困窮する様な状況ではないですしね。」
どうやら魔物も食べ物になるものが減るとたまに生息域からでてくる事があるそうだ。
しかしそれも滅多とない事。
じゃー...。
「じゃー今回のはなんだったの?」
私がそう質問すると皆が静かになり腕を組んで黙ってしまった。
「え???」
私があたりを見回していると...。
『まるで、"以前の世界"に戻りつつある様な気がしますね。』
ドラしゃんがボソッと呟く。
「えっ?以前の世界?」
『ええ。ムキファーや王などの異世界から人々が訪れるより遥か昔の状態に。
その頃は至る所に魔物が存在して魔物同士の争いなども頻繁にありましたからね。
弱者である人間は魔物の脅威に怯えなが暮らしてました。』
ドラしゃんは私の顔を見ながら淡々と昔話をするかの様に話し出した。
『魔物のおかげで人間達は住む場所を点々と変えて生活していました。
もちろん移動中も襲われたりもしてましたね。
このままでは自分達は滅んでしまうと考えた一部の人間が立ち上がり、"冒険者"と言うものを作ったはずです。』
ドラしゃんのその言葉にラミィお兄ちゃんも同調して話出す。
「ええ。その通りです。己を鍛え上げて、残った種族で支えてあって武器や防具も作り魔物に立ち向かってましたね。懐かしい話です。」
微笑しながら話すラミィお兄ちゃん。
ドラしゃん以外の人達は驚きながら話を聞いていた。
どうやらドラしゃんとラミィお兄ちゃんは同世代?で後は後輩に当たる感じなんだなぁーとこの時悟った。
『武装した人間達がなんとか束になってかかって魔物を退治していましたが、それでも太刀打ちできるにも限度がありましたね。
そこで傷つきながら帰ってくる旦那や恋人。中には遺体になって...いいえ。遺体すらなく遺品だけ返ってくる場合もありましたね。
そんな状況に打ちひしがれた女性たちが神様にお願いをしたんです。』
「そうでしたね。あまりに悲痛な願に神様も黙って見守っていられなくなり、異世界より人を招き入れ人類の全滅を防ごうとされたんですよね。」
ここに来てようやくムキじぃーちゃん達が話に参加してきた。
「そういや...ワシがこの世界に来た時に奴がなんや言うてたなぁー。
ちょうどワシのいた世界では戦争が続いていたからなぁー。
無益に散って行く命を有効利用させて欲しいとかも言っていたなぁー。」
「そういや私らの子供の頃からかね、"異世界人"と言うのが急に来て魔物を次々と討伐していってくれたんだよね。男も女も"異世界人"と呼ばれる人達は強く不思議な力をもってたんだよね。」
ルミばぁーちゃんもそう言って昔を懐かしみながら話してくれた。
「あの頃は次から次へと色んな奴らが来てたよなぁー。"異世界人"と"転生人"とな。どいつもこいつも強いし、見た目が特徴的だったからなぁー。俺も覚えてるわ。」
ロドじぃーちゃんもそう言って笑顔で話しをする。
なんやら年寄りの昔話大会みたいになりつつある会議。
しかしこの話は私達家族にとってはとても参考になる話でもあったので、皆黙って話を聞いていた。
「異世界から来た人々はね、見た目の割には幼く見えたんだよね。」
「ああ。それなのにえげつない程強いんだ。あんだけ親父達が苦労して退治していた魔物達を一気に殲滅させて行ったからなぁー。」
「その日を境に人々も一定の場所に住居を構えて生活出来る様になったんでしたよね?」
「ああ。それまでは地獄だったよ。」
「確かにね。異世界から来た人間の中には博識な者もいてね。魔物が侵入できない様な建物作りや街の構造とかも教えてくれてね。」
「あっ!あったなぁー!戦い方や植物の知識なんかも教えてもらったよなぁー。」
『魔物の数が減るごとに異世界から招かれる人の数も減ってきましたね。
確か旦那様達が最新の異世界人のはず。
それまでずっと異世界からの人は来てませんでしたから。』
「そうなんですか?」
父さんがそう言うと皆が頷いていた。
「俺たちの世界は一度滅びかけて、異世界の人達によって蘇ったんだよなぁー。」
「各国に皆が散っていて、少しずつ国を再建していったのさ。だから他の同盟国の連中も異世界人に対して偏見なかっただろう?」
ロドじぃーちゃんの言葉に私達家族は頷いた。
確かに皆は普通に接していてくれた。
そこで最初に話がもどった。
『ですから、もしかしてですが...以前の様な魔物がはびこる世の中に戻ろうとしているのではないでしょうか?』
ドラしゃんのこの言葉に皆がハッとした表情を浮かべてドラしゃんを見る。
それなら今回の件に少しながら納得がいくからだ。
しかし...。
「なんで今頃なんだ?」
「人が増えたからでしょうか?」
「はっ??」
「種族はともかく人の数が増えたからではないでしょうか?ですからパワーバランスを保つために...と考えたら...。」
ラミィお兄ちゃんの言葉に皆は驚愕する。
確かにそれなら今回の魔物の件に関して理解がしやすかった。
『どんな事が理由であれ今回みたいな事が起きることは十分予測されます。
冒険者の質の向上と魔物に対しての知識の向上。
自身の防衛と街の防衛について再度人々にする必要がありますね。』
ドラしゃんの言葉に皆は頷いた。
もちろん水晶中継で繋がっている王様達もだ。
この日から各国、街ごとに魔物に対しての自衛策が盛り込まれた。
冒険者だけでなく普通の人たちにもだ。
人種や身分など関係なく対応された。
私達の国も同じだ。
街ごとに伝達を出し、今回みたいな事が起きることは十分予測される事。
冒険者の質の向上と魔物に対しての知識の向上。
自身の防衛と街の防衛について再度人々にする必要がある事を伝え、手段についても各国統一して行う事にした。
そのために、ドラしゃんとラミィお兄ちゃんから魔物に対する知識を聞き出し本にした。
それを元に複製して、各国配布した。
その本には絵付きで、魔物の情報が細かく記載されているのだ。
それを国と冒険者ギルドを中心に配布して、そこからはそれぞれのトップに任せた。
わからないことはその都度私達の国連絡する様伝えてた。
こうして少しずつだが、魔物に対しての対応策を取る事にした。
過去の惨劇を繰り返さないために。
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どんだけ長寿なんだろう。
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それより、皆んなもかなり長寿じゃない?
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でも...そうなのかなぁ?
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未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。
彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。
モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
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