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第3章 テイマーが大人気
24. 王国からの報奨
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王国から報奨されると、王城発表されたロック。
爵位叙勲の噂もあり、商人や下級騎士等が、アゥゴーの街にロックを訪ねてくるようになった。
尤も、ロックは冒険者ギルドやテイマーズギルドには所属しているものの、アゥゴーに住んでいる訳ではない。常宿や住居を訪ね、アゥゴーに存在しない事を知り気落ちする者。『わざわざ訪ねて来たのに』とギルド等に喰ってかかる者。領主アルナーグ辺境伯にとりなしを頼む者。色々いたのだが、中々ロックと会えなかったのだった。
中にはタラム村へ行こうとする猛者もいたが、以前と違い結界が無くなっている為、B ~ Cランクの魔物がうろうろする3つ首竜の森を抜けねばならず、つまりはBランク以上の冒険者パーティーを雇う必要がある為、ハードルがかなり高い。
それでも、会える奴は会える。
アゥゴー・ギルドの訓練場。
冒険者達が合間を縫って鍛練や特訓、模擬戦を行う場所。結構高ランクの冒険者が見守る中、木剣で戦っている子供が2人。
子供らしからぬ剣術!
フェイントや魔力を込めた1激!
子供同士の模擬戦とは思えないハイレベルな剣戟。
だが、小柄な方が少し推している様にも見える。
「剣技の実力は伯仲。だが魔力は…」
「あの魔力に勝てるのは神竜位ね。私ですら足元にも及ばないもの」
止めの1激とも言える魔力の込められた必殺剣で、悉く大柄な方が推し負けているのだ。
大きい少年がジャン=ノリス。
小さい方がロックだ。
両親、アランとティアの見守る中、ジャンがロックと模擬戦を行っている。同じ歳の2人だが、アラン似の体格を持つジャンが、2 ~ 3 歳は違うのでは? と言える位大柄であり、勿論力も比例して強かった。
だが、2人共に魔力を込める剣技の使い手であった事から、剣の威力が変わってきた。単純な力もだが、込められた魔力量も威力に関わってくる。伝説竜にも匹敵する魔力量を誇るロックに、ガチで魔力を込められてしまえば、その威力は木剣と言えど半端無いものがある。母ティアに言われてわかっていた事とは言え、これ程の体格差を跳ね返されては、ジャンとしても簡単には引き下がれない。
「本当に同じ歳かよ? 父さんと戦う時みたいに重い剣戟だ」
「流石はアランさんの子供。同じ歳だなんて、羨まし過ぎ」
「剣じゃなければどうだ?」
木剣を投げ、控えの武器がある一角から長めの棒、棍と言える木棒を構えるジャン。
飛んでくる木剣を弾くと、同じ様に棍に持ちかえるロック。
「棒術も槍術も、厳しく仕込まれてます。負けませんよ!」
槍の様に突いたり、棒術として振り回す2人。
技量としては、これも互角だ。
「頼もしいな。流石は次世代トップの2人だ」
ギルドの幹部で、技量指導監督も勤めているリックが子供とは思えない技量に感心する。
「ウィンドカッター!」
「アースウォール」
ロックが風の刄を放てば、ジャンは土壁で防御する。
「サンダー・ジャッジメント!」
「サンダー・ガード」
ジャンが放ったのは雷属性上位魔法。だがロックの雷属性防御魔法で軽く防がれてしまう。
「『ジャッジメント』を『ガード』で防ぐ? どうしても魔力量の差が出るわね。タイプ的には2人共に魔法戦士だし」
感心するティア。回りで見ている魔法使いも、
「普通は『ガイアシールド』なのに。大地属性上位防御魔法でも使わないと『ジャッジメント』は防げないのに…。何かもう、常識超えすぎだわ」
「本当に、ある意味魔法使い泣かせよ? コミリア?」
「大丈夫! 剣士の私も常識疑ってる。って言うか、元々姉より強い弟なのよ、彼奴」
7つも歳上のコミリアが、先日ランクアップしてC。ロックはB。先日までは2ランクの差があったのだ。
「あれ? まだB? 功績考えるとAに上がっても?」
「依頼件数が昇格基準を満たしていないんだ。実力は誰が見てもAだと思うんだが」
そんなリックの呟きに、
「もうSだと思うぞ! 俺がガチで相手してんだ」
アランの声に、驚嘆と、ある意味ため息。
「アゥゴー初のSSも夢じゃないんじゃね?」
アゥゴー処か、世界中で数名しかいないSS。
『黒き大賢者』も噂ではこのランクらしい。あくまでも『薬師』と言い張った偏屈爺は冒険者登録等していない。だが武芸十八般と言われ、伝説的な武具道具を造り上げた錬金術師というのを考えると、Sでも不足?と思ってしまう。何せ、ロックの戦技と魔法の師匠なのだ。莫大な魔力があっても、魔法を知らなければ意味は無い。ロックが高位呪文処か、遺失に近い古の呪文を使えるのは、師の極悪非道に無理矢理な『脳転写』のお蔭なのだから。
この辺り女神ルーシアンの仕事は、やはり神業である。後付けなのに、コルニクスの関係者全員に弟子苛め?の記憶を入れているのだから。
なので、タラム村の出身者にとっては、幼い子供の悲鳴?と愉しげな老人の笑い声は日常茶飯事だったのだ。
「そのお蔭で、ロックは遺失呪文すら使えるのよ」
「剣士の私は、つくづく魔法使いじゃなくて良かったと思っていたけどね」
姉弟子と幼友達の魔法使いとの凶悪な会話。
ティア以下の魔法使いにとっては、『御愁傷様』としか言い様が無い。
「私もした方が良かったのかな? でも、躊躇するわね」
魔力もだが、覚えている魔法の差も出始めているのを見ると、息子に無理矢理にでも魔法を覚えさせていれば良かったのかと思うティアである。
「普通はしないと思う。師匠の性格の悪さは天下一品だったから。私も…」
「散々セクハラされてたしね」
コミリアの呟きに同情するマッキー。
「何かあれば、直ぐ胸を触るの。何度、あの手を斬り捨てようと思った事か」
「ププッ、『大賢者』様、コミリアの胸を育てる事に凄い情熱持ってたからね。良かったじゃない。人並み以上に育ったわよ」
「マッキー? そう言えば他人事だったわよね」
少し愉しげなマッキーと仏頂面のコミリア。
「チックショー」
推されだしたジャンの忍耐が切れかけている。
剣技もだが、やはり魔法の連続技が『やってられっか』というレベルになっているのだ。
「ロック、本当に風属性が好きね」
「ウィンドカッターって、あんなに連射が効くの?」
「効くわ。相手の体勢を崩すのには、本当に手っ取り早い呪文だし。あれ、魔力も溜めも、それほど必要無いし」
ティアにしてもマッキーにしても、咄嗟に使おうと思った時、やはり1番使うのは『ウィンドカッター』だろうという意識はある。これはもう、魔法使い全般と言って良い。
尤も、咄嗟で出す風の刄は5 ~ 6位が普通なのだが。
「連射で30近い刄を出されてはねぇ」
勿論、溜めも魔力も使っていない刄なので威力もほとんど無い。魔力を込めた棒の1振りで飛散してしまう。…のだが、その魔力込めの暇を与えてくれない為、必死に避ける羽目になる。回避しか出来なくなるのだ。
この事はジャンに、身体的より精神に大変な負担を強いている。本来攻撃的なジャンに、回避のみを強いているのだから。
「戦術、相手の分析、対応。2手3手先を読む力。わかってはいたけど、やはりあの子には高い壁ね」
「へっ。納得はしても諦めはしねぇよ。俺達の子はな」
ニヤリと笑う夫婦。息子への期待の高さ。
「くっ、ここまでかよ! 降参だ! でも次はこうはいかねぇ。いかせねぇ!!」
棒を放り出すジャン。ロックも構えを解き、魔力を収める。
「次? 次は従魔を使っていい? 僕はテイマーなんだけど? 剣士でも魔法戦士でもないんだけど?」
「何で勝ってる方の味方が増えんだよ? それに従魔って、まさかトライギドラスじゃねぇだろうな!?」
反則にも程がある。そう言いたいジャンに笑う回りの大人達。11歳の子供らしい、ある意味子供のケンカに近いやり取りが微笑ましいのだ。なまじ剣術や魔法が大人顔負けな分、言ってる事が子供っぽいのに皆ホッとしていた。
「み、見つけました! ロックさん、ロックさんですよね? あぁ、やっとお会い出来たぁー! あの私、下級騎士家のウォーレン=パッコンと言いまして」
訓練場に飛び込んできた…、まだ少年と言っていいかもしれない男。明るい、めげない、へこたれない、諦めない少年ウォーレン、この時13歳。騎士爵位家の5男という、未来も前途も無い存在だった。
なので、おそらくは男爵位を叙勲されるであろうロックに、自分を売り込みに来たのだ。
「えーと、叙勲は…無いと思うし、…あっても…断るつもりだから…」
「そ、そんなぁ…」
泣き崩れるウォーレン。
「パッコン家の5男? あぁ、気持ちは分かるけどなぁ」
ジャンが頷く。
「ジャン、って言うか、アランさんの処は? 貴族…」
「ウチも下級騎士爵位。冒険者やってんだから、それ以外の訳ないだろ?」
ムリムリ! と、ばかりに手を振るジャン。アランとティアは? 見ないふりをしている?
「貴族って一杯いるだろ? 何でロックの処に?」
「家というか爵位というか、枠というか、兎に角数決まっていて、ほとんど世襲制です。長男かあっても次男。それ以下に枠なんか回って来ないんです! だから新設は滅多に無いチャンスなんです!そう思って、やっとお会い出来たと思ったのに…」
「元々何処の陪臣?その関係には空きがないの?」
「ラフシモンズ男爵家です。旧来の家臣でガッチリ固まってまして」
「いっそ冒険者になったら? せっかくアゥゴーに来たんだし」
回りの冒険者が声をかける。貴族なんかよりいいぞぉー! そんな声も聞こえるが…。
「若者にあまり無責任な事を言うなよ?」
流石に注意を促すリック。アランも苦笑している。
「アランさんも、何処かの陪臣なんですか?」
ロックの素朴な疑問。
「いや。まぁ、ある程度功績のある冒険者に叙勲するのは、そこまで珍しい事ではないんだ」
「Aランクだと王国からの依頼もある。本当に国家レベル、世界レベルの災厄や難事件の解決依頼もあるの。それを達成すると、王国の危機を救った報奨という位の話になる訳。金は勿論、名誉も与えられるので叙勲されるの。まぁ、でも、騎士爵位を得た冒険者が領地を得たりというのは殆ど無いし、騎士として支えないといけない事もない。勿論騎士として誰彼の貴族に支えたいというのも有り。で、私達ノリス家は名誉としての騎士爵位を持っていると思えばいいわ」
アランの話をティアが補足する。領地も主も無い、名前だけの騎士がいる事を。
「それでも、ジャンも貴族の子としての権利を持つ事になる。地味に大きいのよ、この権利」
姓があるのは、やはり特別な存在なのだ。
「話は戻って、『戦争の勝利に貢献』と『不治の病の原因特定と特効薬の製法』だろ。さっき言った国家への貢献と世界レベルの災厄の解決。誰に聞いても納得するぞ?叙勲されなきゃ、国家の体裁が悪い。世界がライカー王国をケチンボと思う。国家の信用・信頼が揺らぐよ、これ。なので、叙勲されるのは諦めとけ」
リックの解説は正論だ。あまり納得いかないが、ロックも仕方ないのかな、と諦めつつあった。
それを見て、少し希望を持つウォーレン。男爵位でも叙勲されれば! 瞳キラキラさせているウォーレンを見ない振りをして、ロックは再度アルナーグ辺境伯を訪ねようと思っていた。
冒険者が訪ねて来た。アポがあった訳では無い。
いつもならば、その様な冒険者は追い返される。
執務室で書類に埋もれていたケイン=アルナーグ辺境伯は、ロックの訪問に驚き、何とか時間を作り応接室に招き入れた。
「珍しいね。君の方から訪ねてくるとは? うん、どうしたね、ロック君」
「忙しい処をすみません、辺境伯。あの、僕を訪ねてギルドへウォーレン=パッコンって方が来ました」
「パッコン? ひょっとしたらラフシモンズ男爵家の陪臣パッコン家の?」
「5男と言っていました。僕が叙勲されるから新設される貴族に支えたいと」
「フム。短絡的だが積極的だな。フフ、嫌いじゃないな、そういう活気ある若者は」
「僕が叙勲されても断るって、王国はわかってはいるのではなかったのですか? リックさんからは『叙勲されなければ王国の信用・信頼が揺らぐ』って言われたし。この叙勲は止められない?」
そこへメイドがオヤツのケーキを持ってくる。辺境伯にコーヒー、ロックにはミルクの入ったカップを渡す。アルナーグ辺境伯は、コーヒーを1口飲むと、
「大人の理不尽だ。それについては、私の頭でよければ何度でも下げる。だが、ギルドの管理官リックの言う通り、君に叙勲という名誉を与えないと、ライカー王国は『信賞必罰』を知らぬ蛮族の国と呼ばれてしまう。国家の威信、信用、信頼が全て地に落ちる。それは君も望まないと思うし、それくらいの愛着は、この国に持っていてくれていると信じている」
1度は頭を下げ、顔を上げた後微笑んでロックに話し掛けた。
「それは…。それ以上は持っているつもりです。僕は外国人じゃありませんし。タラム村の、辺境伯の領内で生まれ育ってます」
「ありがとう、ロック君。まだ本決まりではないよ?爵位叙勲もだけど、レフィーナ王女との婚約という話があるんだ」
「はい?」
目を丸くし、『聞いてないよ?』という表情。やや童顔のロックは、こういう時は益々幼く見える。
「国王陛下の次女で御年10歳。1つ下だね。王妃様似の美しいお方だ。君に婚約者がいるのは充分承知だ。これも大人の理不尽だからね。逆に君に出奔されそうで悩んでいるんだ。ウィリス王太子やライカー公爵を通して、君が出ていく可能性を考えて欲しいと訴えているんだけどね」
「……」
「これは、本当に出奔されそうだな。最悪の場合は、君に攻め込まれる可能性も…」
「流石にそれは…。王国に殺されそうになるなら兎も角」
「そうか。君からの先手必勝は無しか。有難いな。うん。とは言え、貴族の中にはね。これだけの厚遇を断る訳が無いって。もっと言うと貴族に逆らう事を考えられない者がいてね。『宰相派』もだけど、勿論『貴族派』にもね。私が言う可能性を理解してくれないんだ」
「じゃあ、その可能性がとても強まったって、言っててください。テイマーである以上、お屋敷の何処に従魔を置くか、とか。出来ない話が多すぎます。まぁ、先手必勝は勿論、王国と戦うつもりも今だって無いんですけど」
「わかった。話してはみる。まぁ、最悪、その場で断ってもいいよ。王太子殿下や私で何とかフォローする。これでも少しは発言力あるんだよ。多分」
「えーと、そういう辺境伯の事、とても大好きです。よろしくお願いします」
子供らしい謝意。だが大人として、素直なお願いだからこそ何とかしなくては! と思い起こされてしまう。
「あぁ。無意味な口約束はしない。とことん話してみるよ」
「…本当に叙勲断るんですね…。トホホ」
翌日、ロックは、ギルドに赴き、昨日のアルナーグ辺境伯との話を1部話した。
ギルド併設の酒場。テーブルを『竜の息吹』が囲んでいるのだが、ちゃっかりウォーレンも交ざっている。
ロックは、未だに『竜の息吹』に所属していた。
コミリア達は上のパーティーへの所属やリルフィンとの独立パーティーの話を呼び掛け、説得もした。
頑としてロックが拒否し、留まっている。
コミリア達にとっては願ってもない、自分達にとっては都合のいい話なので、結局パーティーはそのままになっている。B1人とC4人という、ギルドにとっても有難い高ランクパーティーだ。
構成が構成なので『ハーレムパーティー』と言われるのは仕方ない? ロックは頑なに否定したが、当の女性4人が全く否定していない。其れ処か5人全員で温泉に行った事等を話して、パーティーの仲の良さをアピールしたりしていた。
「温泉? って、ロックも?」
「僕は断ったんです! 嫌だったのに」
「ウフフ、皆で一緒に入ったの! 彼処は家族風呂あるからパーティーで貸切にしてね」
立ち上る嫉妬と怨嗟!
「クスクス。なので、ロックにとっては大小味わい放題かな? 眼福だったでしょ?」
マッキーの悪戯っぽい笑い。しかも自らの胸を指差し他の3人を順に指していく。指されたコミリアもソニアもリルフィンも、同じように笑みを浮かべてしまう。
「ロック、リルフィンより真っ赤ちゃんだったもんね」
「せっかく選りどりみどりだったのにね」
マジかー!! 中には血の涙を流す者もいた。
アゥゴー・ギルド1と言える美少女パーティー。
コミリア達3人の時も人気は高かったのだが、リルフィンが加入し美少女4人となった今、その人気はうなぎ登りである。約1名を除いてとてつもない数の男性ファンがいる。まぁ、その約1名も普通位のファンとデートの誘いは有る事は明記しておこう。他の3人のそれが破格過ぎるのだ。だが、人気者3人の内1人は婚約同棲中である。その子が1番人気なのが、男性冒険者の悲劇と言えた。
リルフィン…。
その癒しの微笑みはギルド1と呼び声高い。成長途中の肢体は、成長期もあってか、日々眩しくなっていき、仄かな色気も放ち始めている。尤も左薬指の指輪が男性諸氏の淡い期待を打ち砕いてはいるが。
『とって代わりたい!』
ロックが只の冒険者ならば袋叩きにあったかもしれない。男性諸氏が血涙を流して諦めているのは、ロックの年齢が幼すぎるのと、戦闘力がもはやSランク相当と言うことが大きい。
ぶっちゃけ敵わない。単純明快である。
女性諸氏の呆れた目をを浴びつつ、ギルドに嫉妬と怨嗟の声が響く。
今回は、ウォーレンの嘆きの声のほうが大きかった。それでも、逆転ワンチャンに掛けてはいたようだが。
王都ライドパレス。
ライカー公爵やウィリス王太子を通して、ロックが報奨辞退、出奔の可能性有りとアルナーグ辺境伯から連絡があり、王城は大騒ぎとなる。
確かに、敵対するという最悪の事態は避けられそうなものの、出ていかれてもかなり困るのだ。トライギドラス以下の従魔の存在もだが、ロック本人の戦闘力と人気は、とても失う訳にはいかない。
アルナーグ辺境伯の奇手。
「未成人の子供に爵位叙勲は、前例がありません。確かに功績は多大ではありますが、どうか御再考戴きたく存じます」
貴族は勿論、宰相も同意せざるを得ない理屈。しかも、これなら王国の威信、信用、信頼を傷付けずにすむ! 報奨は大金メインになる事が決まる。
そして、叙勲されず平民のままなので王女との婚約も当然あり得ない話になる。
「ちょっと屁理屈だが、これで勘弁して欲しいな、ロック君」
肩の荷が降りた気がするアルナーグ辺境伯。
これで八方丸く収まったと思えたのだ。
そして、ロックは王城に呼び出される。
そこには、ある決意を胸に秘めた少女がいた。
「会う前に振られるのは納得いきませんわ、ロック様。シャーリィ、首尾は?」
「全て万全ですわ、姫様」
「お兄様や叔父様、お姉様の動きは?」
「そちらも万事抜かりなく。ウィリス王太子殿下やレムライナ姫様、公爵閣下の方へはリンダ以下私の配下が見張っております」
「流石はシャーリィですわ! それでは、私の英雄に会いに行きますわよ」
爵位叙勲の噂もあり、商人や下級騎士等が、アゥゴーの街にロックを訪ねてくるようになった。
尤も、ロックは冒険者ギルドやテイマーズギルドには所属しているものの、アゥゴーに住んでいる訳ではない。常宿や住居を訪ね、アゥゴーに存在しない事を知り気落ちする者。『わざわざ訪ねて来たのに』とギルド等に喰ってかかる者。領主アルナーグ辺境伯にとりなしを頼む者。色々いたのだが、中々ロックと会えなかったのだった。
中にはタラム村へ行こうとする猛者もいたが、以前と違い結界が無くなっている為、B ~ Cランクの魔物がうろうろする3つ首竜の森を抜けねばならず、つまりはBランク以上の冒険者パーティーを雇う必要がある為、ハードルがかなり高い。
それでも、会える奴は会える。
アゥゴー・ギルドの訓練場。
冒険者達が合間を縫って鍛練や特訓、模擬戦を行う場所。結構高ランクの冒険者が見守る中、木剣で戦っている子供が2人。
子供らしからぬ剣術!
フェイントや魔力を込めた1激!
子供同士の模擬戦とは思えないハイレベルな剣戟。
だが、小柄な方が少し推している様にも見える。
「剣技の実力は伯仲。だが魔力は…」
「あの魔力に勝てるのは神竜位ね。私ですら足元にも及ばないもの」
止めの1激とも言える魔力の込められた必殺剣で、悉く大柄な方が推し負けているのだ。
大きい少年がジャン=ノリス。
小さい方がロックだ。
両親、アランとティアの見守る中、ジャンがロックと模擬戦を行っている。同じ歳の2人だが、アラン似の体格を持つジャンが、2 ~ 3 歳は違うのでは? と言える位大柄であり、勿論力も比例して強かった。
だが、2人共に魔力を込める剣技の使い手であった事から、剣の威力が変わってきた。単純な力もだが、込められた魔力量も威力に関わってくる。伝説竜にも匹敵する魔力量を誇るロックに、ガチで魔力を込められてしまえば、その威力は木剣と言えど半端無いものがある。母ティアに言われてわかっていた事とは言え、これ程の体格差を跳ね返されては、ジャンとしても簡単には引き下がれない。
「本当に同じ歳かよ? 父さんと戦う時みたいに重い剣戟だ」
「流石はアランさんの子供。同じ歳だなんて、羨まし過ぎ」
「剣じゃなければどうだ?」
木剣を投げ、控えの武器がある一角から長めの棒、棍と言える木棒を構えるジャン。
飛んでくる木剣を弾くと、同じ様に棍に持ちかえるロック。
「棒術も槍術も、厳しく仕込まれてます。負けませんよ!」
槍の様に突いたり、棒術として振り回す2人。
技量としては、これも互角だ。
「頼もしいな。流石は次世代トップの2人だ」
ギルドの幹部で、技量指導監督も勤めているリックが子供とは思えない技量に感心する。
「ウィンドカッター!」
「アースウォール」
ロックが風の刄を放てば、ジャンは土壁で防御する。
「サンダー・ジャッジメント!」
「サンダー・ガード」
ジャンが放ったのは雷属性上位魔法。だがロックの雷属性防御魔法で軽く防がれてしまう。
「『ジャッジメント』を『ガード』で防ぐ? どうしても魔力量の差が出るわね。タイプ的には2人共に魔法戦士だし」
感心するティア。回りで見ている魔法使いも、
「普通は『ガイアシールド』なのに。大地属性上位防御魔法でも使わないと『ジャッジメント』は防げないのに…。何かもう、常識超えすぎだわ」
「本当に、ある意味魔法使い泣かせよ? コミリア?」
「大丈夫! 剣士の私も常識疑ってる。って言うか、元々姉より強い弟なのよ、彼奴」
7つも歳上のコミリアが、先日ランクアップしてC。ロックはB。先日までは2ランクの差があったのだ。
「あれ? まだB? 功績考えるとAに上がっても?」
「依頼件数が昇格基準を満たしていないんだ。実力は誰が見てもAだと思うんだが」
そんなリックの呟きに、
「もうSだと思うぞ! 俺がガチで相手してんだ」
アランの声に、驚嘆と、ある意味ため息。
「アゥゴー初のSSも夢じゃないんじゃね?」
アゥゴー処か、世界中で数名しかいないSS。
『黒き大賢者』も噂ではこのランクらしい。あくまでも『薬師』と言い張った偏屈爺は冒険者登録等していない。だが武芸十八般と言われ、伝説的な武具道具を造り上げた錬金術師というのを考えると、Sでも不足?と思ってしまう。何せ、ロックの戦技と魔法の師匠なのだ。莫大な魔力があっても、魔法を知らなければ意味は無い。ロックが高位呪文処か、遺失に近い古の呪文を使えるのは、師の極悪非道に無理矢理な『脳転写』のお蔭なのだから。
この辺り女神ルーシアンの仕事は、やはり神業である。後付けなのに、コルニクスの関係者全員に弟子苛め?の記憶を入れているのだから。
なので、タラム村の出身者にとっては、幼い子供の悲鳴?と愉しげな老人の笑い声は日常茶飯事だったのだ。
「そのお蔭で、ロックは遺失呪文すら使えるのよ」
「剣士の私は、つくづく魔法使いじゃなくて良かったと思っていたけどね」
姉弟子と幼友達の魔法使いとの凶悪な会話。
ティア以下の魔法使いにとっては、『御愁傷様』としか言い様が無い。
「私もした方が良かったのかな? でも、躊躇するわね」
魔力もだが、覚えている魔法の差も出始めているのを見ると、息子に無理矢理にでも魔法を覚えさせていれば良かったのかと思うティアである。
「普通はしないと思う。師匠の性格の悪さは天下一品だったから。私も…」
「散々セクハラされてたしね」
コミリアの呟きに同情するマッキー。
「何かあれば、直ぐ胸を触るの。何度、あの手を斬り捨てようと思った事か」
「ププッ、『大賢者』様、コミリアの胸を育てる事に凄い情熱持ってたからね。良かったじゃない。人並み以上に育ったわよ」
「マッキー? そう言えば他人事だったわよね」
少し愉しげなマッキーと仏頂面のコミリア。
「チックショー」
推されだしたジャンの忍耐が切れかけている。
剣技もだが、やはり魔法の連続技が『やってられっか』というレベルになっているのだ。
「ロック、本当に風属性が好きね」
「ウィンドカッターって、あんなに連射が効くの?」
「効くわ。相手の体勢を崩すのには、本当に手っ取り早い呪文だし。あれ、魔力も溜めも、それほど必要無いし」
ティアにしてもマッキーにしても、咄嗟に使おうと思った時、やはり1番使うのは『ウィンドカッター』だろうという意識はある。これはもう、魔法使い全般と言って良い。
尤も、咄嗟で出す風の刄は5 ~ 6位が普通なのだが。
「連射で30近い刄を出されてはねぇ」
勿論、溜めも魔力も使っていない刄なので威力もほとんど無い。魔力を込めた棒の1振りで飛散してしまう。…のだが、その魔力込めの暇を与えてくれない為、必死に避ける羽目になる。回避しか出来なくなるのだ。
この事はジャンに、身体的より精神に大変な負担を強いている。本来攻撃的なジャンに、回避のみを強いているのだから。
「戦術、相手の分析、対応。2手3手先を読む力。わかってはいたけど、やはりあの子には高い壁ね」
「へっ。納得はしても諦めはしねぇよ。俺達の子はな」
ニヤリと笑う夫婦。息子への期待の高さ。
「くっ、ここまでかよ! 降参だ! でも次はこうはいかねぇ。いかせねぇ!!」
棒を放り出すジャン。ロックも構えを解き、魔力を収める。
「次? 次は従魔を使っていい? 僕はテイマーなんだけど? 剣士でも魔法戦士でもないんだけど?」
「何で勝ってる方の味方が増えんだよ? それに従魔って、まさかトライギドラスじゃねぇだろうな!?」
反則にも程がある。そう言いたいジャンに笑う回りの大人達。11歳の子供らしい、ある意味子供のケンカに近いやり取りが微笑ましいのだ。なまじ剣術や魔法が大人顔負けな分、言ってる事が子供っぽいのに皆ホッとしていた。
「み、見つけました! ロックさん、ロックさんですよね? あぁ、やっとお会い出来たぁー! あの私、下級騎士家のウォーレン=パッコンと言いまして」
訓練場に飛び込んできた…、まだ少年と言っていいかもしれない男。明るい、めげない、へこたれない、諦めない少年ウォーレン、この時13歳。騎士爵位家の5男という、未来も前途も無い存在だった。
なので、おそらくは男爵位を叙勲されるであろうロックに、自分を売り込みに来たのだ。
「えーと、叙勲は…無いと思うし、…あっても…断るつもりだから…」
「そ、そんなぁ…」
泣き崩れるウォーレン。
「パッコン家の5男? あぁ、気持ちは分かるけどなぁ」
ジャンが頷く。
「ジャン、って言うか、アランさんの処は? 貴族…」
「ウチも下級騎士爵位。冒険者やってんだから、それ以外の訳ないだろ?」
ムリムリ! と、ばかりに手を振るジャン。アランとティアは? 見ないふりをしている?
「貴族って一杯いるだろ? 何でロックの処に?」
「家というか爵位というか、枠というか、兎に角数決まっていて、ほとんど世襲制です。長男かあっても次男。それ以下に枠なんか回って来ないんです! だから新設は滅多に無いチャンスなんです!そう思って、やっとお会い出来たと思ったのに…」
「元々何処の陪臣?その関係には空きがないの?」
「ラフシモンズ男爵家です。旧来の家臣でガッチリ固まってまして」
「いっそ冒険者になったら? せっかくアゥゴーに来たんだし」
回りの冒険者が声をかける。貴族なんかよりいいぞぉー! そんな声も聞こえるが…。
「若者にあまり無責任な事を言うなよ?」
流石に注意を促すリック。アランも苦笑している。
「アランさんも、何処かの陪臣なんですか?」
ロックの素朴な疑問。
「いや。まぁ、ある程度功績のある冒険者に叙勲するのは、そこまで珍しい事ではないんだ」
「Aランクだと王国からの依頼もある。本当に国家レベル、世界レベルの災厄や難事件の解決依頼もあるの。それを達成すると、王国の危機を救った報奨という位の話になる訳。金は勿論、名誉も与えられるので叙勲されるの。まぁ、でも、騎士爵位を得た冒険者が領地を得たりというのは殆ど無いし、騎士として支えないといけない事もない。勿論騎士として誰彼の貴族に支えたいというのも有り。で、私達ノリス家は名誉としての騎士爵位を持っていると思えばいいわ」
アランの話をティアが補足する。領地も主も無い、名前だけの騎士がいる事を。
「それでも、ジャンも貴族の子としての権利を持つ事になる。地味に大きいのよ、この権利」
姓があるのは、やはり特別な存在なのだ。
「話は戻って、『戦争の勝利に貢献』と『不治の病の原因特定と特効薬の製法』だろ。さっき言った国家への貢献と世界レベルの災厄の解決。誰に聞いても納得するぞ?叙勲されなきゃ、国家の体裁が悪い。世界がライカー王国をケチンボと思う。国家の信用・信頼が揺らぐよ、これ。なので、叙勲されるのは諦めとけ」
リックの解説は正論だ。あまり納得いかないが、ロックも仕方ないのかな、と諦めつつあった。
それを見て、少し希望を持つウォーレン。男爵位でも叙勲されれば! 瞳キラキラさせているウォーレンを見ない振りをして、ロックは再度アルナーグ辺境伯を訪ねようと思っていた。
冒険者が訪ねて来た。アポがあった訳では無い。
いつもならば、その様な冒険者は追い返される。
執務室で書類に埋もれていたケイン=アルナーグ辺境伯は、ロックの訪問に驚き、何とか時間を作り応接室に招き入れた。
「珍しいね。君の方から訪ねてくるとは? うん、どうしたね、ロック君」
「忙しい処をすみません、辺境伯。あの、僕を訪ねてギルドへウォーレン=パッコンって方が来ました」
「パッコン? ひょっとしたらラフシモンズ男爵家の陪臣パッコン家の?」
「5男と言っていました。僕が叙勲されるから新設される貴族に支えたいと」
「フム。短絡的だが積極的だな。フフ、嫌いじゃないな、そういう活気ある若者は」
「僕が叙勲されても断るって、王国はわかってはいるのではなかったのですか? リックさんからは『叙勲されなければ王国の信用・信頼が揺らぐ』って言われたし。この叙勲は止められない?」
そこへメイドがオヤツのケーキを持ってくる。辺境伯にコーヒー、ロックにはミルクの入ったカップを渡す。アルナーグ辺境伯は、コーヒーを1口飲むと、
「大人の理不尽だ。それについては、私の頭でよければ何度でも下げる。だが、ギルドの管理官リックの言う通り、君に叙勲という名誉を与えないと、ライカー王国は『信賞必罰』を知らぬ蛮族の国と呼ばれてしまう。国家の威信、信用、信頼が全て地に落ちる。それは君も望まないと思うし、それくらいの愛着は、この国に持っていてくれていると信じている」
1度は頭を下げ、顔を上げた後微笑んでロックに話し掛けた。
「それは…。それ以上は持っているつもりです。僕は外国人じゃありませんし。タラム村の、辺境伯の領内で生まれ育ってます」
「ありがとう、ロック君。まだ本決まりではないよ?爵位叙勲もだけど、レフィーナ王女との婚約という話があるんだ」
「はい?」
目を丸くし、『聞いてないよ?』という表情。やや童顔のロックは、こういう時は益々幼く見える。
「国王陛下の次女で御年10歳。1つ下だね。王妃様似の美しいお方だ。君に婚約者がいるのは充分承知だ。これも大人の理不尽だからね。逆に君に出奔されそうで悩んでいるんだ。ウィリス王太子やライカー公爵を通して、君が出ていく可能性を考えて欲しいと訴えているんだけどね」
「……」
「これは、本当に出奔されそうだな。最悪の場合は、君に攻め込まれる可能性も…」
「流石にそれは…。王国に殺されそうになるなら兎も角」
「そうか。君からの先手必勝は無しか。有難いな。うん。とは言え、貴族の中にはね。これだけの厚遇を断る訳が無いって。もっと言うと貴族に逆らう事を考えられない者がいてね。『宰相派』もだけど、勿論『貴族派』にもね。私が言う可能性を理解してくれないんだ」
「じゃあ、その可能性がとても強まったって、言っててください。テイマーである以上、お屋敷の何処に従魔を置くか、とか。出来ない話が多すぎます。まぁ、先手必勝は勿論、王国と戦うつもりも今だって無いんですけど」
「わかった。話してはみる。まぁ、最悪、その場で断ってもいいよ。王太子殿下や私で何とかフォローする。これでも少しは発言力あるんだよ。多分」
「えーと、そういう辺境伯の事、とても大好きです。よろしくお願いします」
子供らしい謝意。だが大人として、素直なお願いだからこそ何とかしなくては! と思い起こされてしまう。
「あぁ。無意味な口約束はしない。とことん話してみるよ」
「…本当に叙勲断るんですね…。トホホ」
翌日、ロックは、ギルドに赴き、昨日のアルナーグ辺境伯との話を1部話した。
ギルド併設の酒場。テーブルを『竜の息吹』が囲んでいるのだが、ちゃっかりウォーレンも交ざっている。
ロックは、未だに『竜の息吹』に所属していた。
コミリア達は上のパーティーへの所属やリルフィンとの独立パーティーの話を呼び掛け、説得もした。
頑としてロックが拒否し、留まっている。
コミリア達にとっては願ってもない、自分達にとっては都合のいい話なので、結局パーティーはそのままになっている。B1人とC4人という、ギルドにとっても有難い高ランクパーティーだ。
構成が構成なので『ハーレムパーティー』と言われるのは仕方ない? ロックは頑なに否定したが、当の女性4人が全く否定していない。其れ処か5人全員で温泉に行った事等を話して、パーティーの仲の良さをアピールしたりしていた。
「温泉? って、ロックも?」
「僕は断ったんです! 嫌だったのに」
「ウフフ、皆で一緒に入ったの! 彼処は家族風呂あるからパーティーで貸切にしてね」
立ち上る嫉妬と怨嗟!
「クスクス。なので、ロックにとっては大小味わい放題かな? 眼福だったでしょ?」
マッキーの悪戯っぽい笑い。しかも自らの胸を指差し他の3人を順に指していく。指されたコミリアもソニアもリルフィンも、同じように笑みを浮かべてしまう。
「ロック、リルフィンより真っ赤ちゃんだったもんね」
「せっかく選りどりみどりだったのにね」
マジかー!! 中には血の涙を流す者もいた。
アゥゴー・ギルド1と言える美少女パーティー。
コミリア達3人の時も人気は高かったのだが、リルフィンが加入し美少女4人となった今、その人気はうなぎ登りである。約1名を除いてとてつもない数の男性ファンがいる。まぁ、その約1名も普通位のファンとデートの誘いは有る事は明記しておこう。他の3人のそれが破格過ぎるのだ。だが、人気者3人の内1人は婚約同棲中である。その子が1番人気なのが、男性冒険者の悲劇と言えた。
リルフィン…。
その癒しの微笑みはギルド1と呼び声高い。成長途中の肢体は、成長期もあってか、日々眩しくなっていき、仄かな色気も放ち始めている。尤も左薬指の指輪が男性諸氏の淡い期待を打ち砕いてはいるが。
『とって代わりたい!』
ロックが只の冒険者ならば袋叩きにあったかもしれない。男性諸氏が血涙を流して諦めているのは、ロックの年齢が幼すぎるのと、戦闘力がもはやSランク相当と言うことが大きい。
ぶっちゃけ敵わない。単純明快である。
女性諸氏の呆れた目をを浴びつつ、ギルドに嫉妬と怨嗟の声が響く。
今回は、ウォーレンの嘆きの声のほうが大きかった。それでも、逆転ワンチャンに掛けてはいたようだが。
王都ライドパレス。
ライカー公爵やウィリス王太子を通して、ロックが報奨辞退、出奔の可能性有りとアルナーグ辺境伯から連絡があり、王城は大騒ぎとなる。
確かに、敵対するという最悪の事態は避けられそうなものの、出ていかれてもかなり困るのだ。トライギドラス以下の従魔の存在もだが、ロック本人の戦闘力と人気は、とても失う訳にはいかない。
アルナーグ辺境伯の奇手。
「未成人の子供に爵位叙勲は、前例がありません。確かに功績は多大ではありますが、どうか御再考戴きたく存じます」
貴族は勿論、宰相も同意せざるを得ない理屈。しかも、これなら王国の威信、信用、信頼を傷付けずにすむ! 報奨は大金メインになる事が決まる。
そして、叙勲されず平民のままなので王女との婚約も当然あり得ない話になる。
「ちょっと屁理屈だが、これで勘弁して欲しいな、ロック君」
肩の荷が降りた気がするアルナーグ辺境伯。
これで八方丸く収まったと思えたのだ。
そして、ロックは王城に呼び出される。
そこには、ある決意を胸に秘めた少女がいた。
「会う前に振られるのは納得いきませんわ、ロック様。シャーリィ、首尾は?」
「全て万全ですわ、姫様」
「お兄様や叔父様、お姉様の動きは?」
「そちらも万事抜かりなく。ウィリス王太子殿下やレムライナ姫様、公爵閣下の方へはリンダ以下私の配下が見張っております」
「流石はシャーリィですわ! それでは、私の英雄に会いに行きますわよ」
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