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第6章

2 実家にて②

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「会う気ないならどんな人か聞く必要ないっしょ」
「会わなくても知っとかなきゃ心配じゃないの」
「いいよまだ知らなくて」
「亮ちゃんが教えてくれないなら、愛美に聞くからね!」
 皿に盛ったお節の残りをこちらに運んでくると、母親は拗ねたように言った。
「はいはい。俺、手洗ってくる」
 俺は立ち上がってリビングを出た。
 そしてすかさずポケットからスマホを取り出し、急いで姉ちゃんにメッセージを送った。
 "なんで優子さんのこと父母に言ったの!?"
 "どんな人か姉ちゃんに聞くって言ってたから、絶対絶対何も言わないでね"
 "何も知らないフリして!!"
 "絶対面倒なことになるから!!"
 すると、すぐに既読がついて姉ちゃんから返事が来た。
 "あけおめ"
 お前もか、と思う。
 "ごめんごめんつい"
 "りょーかい"
 そしてなんか変な猫のスタンプが送られてきた。
 本当にわかってんのかな?
 かなり不安だが、もう後はどう防ぎようもないので、信じて様子を見ることにした。

 別に優子さんのことを両親に知られたくないわけじゃない。
 ただ、先に年齢を聞いてどうこう文句を言われるよりは――父親はさておき、母親は間違いなく文句を言うタイプだ――直接会ってから年齢を知ってほしいと思っている。
 まずは優子さんの魅力に触れてからものを言ってほしいのだ。
 その後も食事をしながらあれこれ聞かれたが、俺はとことん口をつぐんだ。
 そのうち諦めたようで、姉ちゃんの結婚の話や親戚の話など、他のことに話題が移っていったのでようやくホッとした。

「あ、そうだ。後で晃輝が来るから」
「晃ちゃん? こんな年明けにわざわざ?」
「なんか、話があるんだってさ。今日帰ってくるって言ったら、夕方までに少し行くわって」
「あらどうしよう、これから新宿に行こうと思ってたんだけど」
「いいよ行ってきて。別に俺がいれば事足りるから」
「でも……亮弥は今夜帰るんだろ?」
 そのつもりでいたけど、両親の顔を見ると、なんだか淋しそうにしている。どうやら、一緒の時間が減るのが嫌みたいだ。

 これまでは両親の気持ちまで考えることはあまり無く、ここに来てもわりと自由に過ごしていた。
 でも、いつも優子さんの優しさの恩恵を受けているうちに、自分の言動を省みることが多くなった。
 優子さんは、俺が別れ際に淋しいと思っていると、一緒にいる時間を少しでも伸ばしてくれたり、抱きしめてくれたりして、満足したのを確認してくれる。
 本当は俺がそれをすべきなんだろうことは、さておき。俺もたまに実家に帰ってきたからには、できるだけ多く両親との時間を持つようにしよう。
「それじゃ、明日まで居るよ。別に予定もないし」
 両親の顔がほころんだのを見て、親孝行ってこういう簡単なことなのかもなって思った。
 
 両親は三時頃に出掛けていった。
 暇になったので、晃輝と食べるお菓子でも買おうと近くのコンビニに行ったり、ついでに土地の神社にお参りしたりと、一時間ほどのんびり過ごした。

 家に戻り、リビングを少し片づけて、ソファに寝転がってスマホを見ていると、インターホンが鳴った。
 玄関を開けたら、少し髪の伸びた晃輝が立っていた。
「うっす」
「おー」
「あけおめ」
 またあけおめか、と俺は諦めのため息をついた。
「……あけおめ」
「なんだ、暗いなぁ! 彼女とうまくいってねーの?」
「暗いのは生まれつき。あがれよ」
「お邪魔しまっす!」
 いつもなら自分の部屋に連れて行くが、今は半分物置になっているので、二階には上がらずにリビングに通した。
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