大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

合流と手紙

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まぁ、実は何にもなかったんだけどな。
更に十分ぐらい待って、流石に何か不味い事が起きたんだろう、ボロボロの身体に鞭打って探しに行こうかと思っていたところでシャルが
『来たぞ』
と短く俺に言ってきた。
『真っ直ぐこっちに向かってるが…』
よくわかるな。
『あいつ、走り方に変な癖があるからな。聞き分けは簡単だぞ』
つってもお前の簡単は割と難しいからな。癖ってのは少し気になるが話は後だな。聞き分けが出来なくても関係ない、俺にも足音が聞こえてきた。
「………ただい、ま」
「おかえり。ユーリアはいたか?」
そう言ってみるが、シエルしかいないことからユーリアと合流出来ていないのは明らかだ。
「………ん、いた」
と、思っていたのだが。
「へっ?」
「………ユーリア、いた」
『おい、いんじゃねぇか』
これは想定外。
「なら何でいないんだ?」
「………ユーリア、これわたせって」
「ん?」
そう言ってシエルが懐から二つ折りにされた一枚の紙を取り出す。開くと、几帳面な文字が書いてあった。
中身にザッと目を通し、最後にユーリア・グランデンジークと流麗なサインと家紋。判子っぽいが、それにしてもよくこの非常事態にそんなもの持ってたな。
『なんて書いてある?字ィ読めねぇんだよ俺』
「…シエル、これ、読んだか?」
「………みちゃだめって、ユーリア、が」
ふーん……
『で、なんて書いてあったんだ』
ほとんどお前が言ってたことと同じだな。嘘だらけだから信じるなって事。あと、何度か接敵した経験から、どんな特徴なあるか書いてあった。
なんでも、味方が強ければ強い程、それに比例して敵も強くなる傾向にあるらしい。
『はぁん。そりゃまぁ、ユーリアが合流を避けようとする訳だな』
シエルが知ってたら俺と合流するのを避けようとしたかもしれんな。素直な子でよかった。
『で?他になにか?』
合流は避けるが、共闘はしようって話だと。
原因はデューラも言ってたが海魔って言う魔獣らしい。見た目は全身に牙を生やしたみたいなヒトデって書いてあるけど…ヒトデって何。
『星型の水中生物だな。牙は生えてないけど』
その辺は流石魔獣と言ったところか。ちなみに陸上でも活動可能、どの個体も魔力を扱う事に長けていて、個体事に魔力を元にした特殊能力が強力なんだそうだ。今回の海魔は幻術、幻影系の個体の中でもさらに強力な特異個体だろうと予想がついてるらしい。この辺はデューラも言ってたな。
『そりゃわかったが、どこにいるんだ?』
わからんらしい。
『は?』
わからんから、炙り出すんだと。
『はぁん?』
「シエル、お前基礎的な魔法は出来るようになったんだっけ?」
「………ん、すこしだ、け」
「火って起こせるか?」
「………ん」
『まさか』
どうせ嘘なら思いっきり、だ。
根こそぎ焼き払ってやろう。
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