大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

約束と全力

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自分の剣が、綺麗に腹に入った。
自分の剣が、綺麗に『自分の』腹に入った。
なんで?《不動》が剣で斬ったから。
どうやって?盾に刺さった剣を抜いて。
どうなる?結果、昨日のフィールドのように衝撃がくる訳ではなく、腹が斬れる。
「ぐふっ」
腹が熱い。熱い。熱い!
落ち着け、状況を理解しろ。
どのぐらい入った?剣幅の半分ぐらい。
内臓が少し切れたか?そこそこ重症。
けど、これぐらいじゃ死なない。
おかしいな。これ、模擬戦だよな?
あぁ、双子は熱くなると…。
今度からは二度と二人を監督につけるのは辞めよう。
「…っつう」
剣を腹から抜き、力の入らない腕でそのまま奪い返すが、《不動》はそのまま返してくれた。
血が溢れてくる。熱いと思っていた傷口がだんだん冷めてくる。
「私の勝ちだね!残念、レィアくん!」
目も、覚めてくる。
《不動》の勝ち?ということは自分の負け?負けは…死ぬんだっけ。
絶対に嫌だ。
既に応急処置は済ませた。
体から抜けた毛で腹を縫う。大丈夫、何度もしてきた。血はこれ以上出ないだろう。
「自分の故郷でな…負けるなって約束したんだよ。友達と」
「?だから何?」
ふつふつと腹の底から何かがこみ上げてくる。
あれ?なんで自分はこんなにイライラしてるんだろ?
でも、叫ばずにはいられない。
「殺し合いはする気はないが、当然自分は死んでもないし、膝をつく気もサラサラないぞ!」
たかが模擬戦?相手のリベンジ?それこそ、だから何?自分は新入生、相手は三年、しかも数人しかいない二つな持ち?知ったこっちゃない!
「負けてたまるか!ここで『負け』という足枷を、レッテルを貼られてたまるか!」
これは最早プライドの話。友達との約束すら守れないのに、聖女様も守れるかよ!
ぬるぬると自分の血で滑る自分の剣をしっかりつかんで構える。
コンディションは最悪、相手はパワーアップも済んで、状況も最悪。
背水の陣ってのも少し違うか?まぁ、似たようなもんだろ。
「相手が全力なら、こっちも全力でやらないとな」
戦技アーツには、第二段階がある。
一番近いのは、ラウクムくんの動き。
戦技アーツを繋げるという動き。
それを一つの戦技アーツとする。
けど、今それをしたら、内臓ぶちまけることになりそうだからやめとく。
せいぜい、戦技アーツを二、三発撃てるかどうかと言った感じだろうか?
「仕切り直し、じゃないけど、ここからが再スタートだぞ?『英雄もどき』の先輩?」
「模擬戦の範疇を超えることになりそうだね」
せいぜい、死なないでね?という音は、後から聞こえてきた。
足りないモノもしっかり『回収』した。
あぁ、こりゃあ終わった頃にはクードラル先生のお世話になるかなぁ?
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