大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

不動とタイマン3

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おかしい。
昨日《荒野》から聞いた二人のスキルは『リンケージ』とか言ってた。私達のスキル、と言った以上、《荒野》が『リンケージ』で、《不動》が他のスキル、それこそ今起きている超パワーアップとでも言おう状態になることはないはずなのに。
なのに。
相手の本気、全力とでも言うようなそれは、昨日予想した『二人の技術などを共有する』能力とは全く違う。
リミッターのようなものを外した?例えば、自分の剣の鞘のような物か?
でも、そんな感じでもない。第一、それにしたってここまで大規模な変化はないだろう。
イメージとして、《不動》の戦力(とかないけど、あったら便利そうだな)が二倍になったような。
相手が構える。この距離で?
距離は大体五メートル。槍の射程距離ではないし、当然、自分の剣の射程距離でもない。
煌覇こうはなら余裕で届くけど、鞘は少し離れたところに転がっている。
《荒野》の『イーヴィル・バイト』を破壊したあの投擲系の戦技アーツなら当たるだろうけど、今から槍を投げるとは考えにくい…。
「『ライトニング』!」
雷が槍に落ちた。
昨日の鍵戦争では、所々魔法を使うシーンもあったが、今回の魔法は明らかに昨日の威力を超えている。二倍のパワーアップと言ったのは、あながち間違いじゃないみたい。
「『ストライク・スラスト』!」
さっきの上に向かって撃った戦技アーツが自分に向けて突き出される。
けど、当たらな…。
「っえ?」
眼前に雷の槍が文字通り『飛んで』来た。
避け切れるか!?
ギリギリで避けたが、スパークを繰り返す雷の槍は、その跳ねた雷が自分に当たっただけでも自分には結構なダメージだった。
「!」
声は漏らさない。当たったとは思わせない。弱ったとは思わせない。絶対に!
相手を睨むと、さらにまた構え直している。
「『ストライク・」
またくる!
「スラスト』!」
二度目の雷の槍。剣で防いだとしても、絶対に雷が剣を伝い、自分に当たる。避けるしかない!
さっきより大きめに身体をひねりつつ、避けながら《不動》に接近するが…。
「『ファイブ・アローボルト』、展開」
その一言で雷の矢が五本、用意される。
「発射!」
一メートルと近づくことができずに相手の魔法の矢が飛んでくる。
横に走りながら、円を描きながら少しずつ接近していく。
「『ファイブ・アローボルト』、展開、発射、『ファイブ・アローボルト』、展開、発射、『ファイブ・アロ…」
止まらない《不動》の魔法!
「けど!ここなら!」
相手の懐に飛び込んだ。零距離、ナイトランスを振るうことも、ましてや魔法を撃つことのできる距離でもない。
自分の剣なら、ギリギリ切り込める、そんな距離!
もはや剣の戦技アーツなんかは一つもいらない。
けど、無防備な盾の内側!ここなら!
自分の剣が、綺麗に腹に入った。
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