大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

文字の大きさ
上 下
1,082 / 2,022
本編

女神と聖女

しおりを挟む
結局、俺達が部屋に入っていいと言われたのは外に出されてから三十分以上経ってから。
しかも入ってみれば明らかに機嫌を損ねた女神サマと気まずそうな聖女サマ。
部屋の隅を覗き込めば蹴っ転がされた椅子………の、破片が約一つ分。…所でこれって弁償すんの俺なのかね?
多分音などを遮断する結界を部屋一杯に張ったのだろう。じゃなきゃ壊れた音で俺や英雄がすっ飛んできただろう。
「話し合いは終わりましたか?聖女様」
何も言えない空気の中、まるで気にしていないように英雄が口を開いた。
「えぇ……。よろしいですか?システナ様」
「構わぬ。余は構わぬよ」
外見も相まって小さな子供が拗ねたような言い方になるが、本当は怒り八割呆れ一割、諦念一割と言った所だろう。
「もう話は終わりだ。帰って良いぞ」
顎でしゃくって出口を示すシステナ。
ワンピースであると言うのに椅子の上で立膝。さらに頬杖をついて睨む姿はとても女神とは思えないが、聖女サマがそれでも頭を下げて部屋から出ていく。
「それでは失礼します。システナ様、良い星夜を」
「良いも悪いもない。星も夜も余は嫌いだ」
閉じた後の扉を睨むシステナ。その眉間にはさらに深い皺が刻まれていた。
「何の話をしていたんだ?」
「貴様には関係ない」
ここまで綺麗にバッサリ切り捨てられれば続ける言葉もない。実際、俺になにか関係しているなら一緒に話し合いの場にいただろうし。
『あるいはお前にどうしても教えたくない情報か、だな。俺はこっちだと思うけどな』
俺に教えたくない情報って何よ。
『それが分かれば苦労はしないっての。なんか心当たりは無いのか?』
無いね。今んとこ。
パッと思い当たる節も……無いな。無理矢理挙げるとしたらシエル関連か?いや、聖女サマはシエルがハーフとは知らんからな…じゃあ他はなんだ?聖女サマが被害を受けた半年前の襲撃の話か?いや、それをシステナが知る方法が無いよな。俺達も口外禁止って言い含められてるし。
「余は寝る。貴様との契約も終了した。あとは好きにするが良い」
「え?あ、あぁ」
これで契約終了か。まぁ確かに怪我を治してもらった対価が聖女サマに会わせろって話だったし、話し合いも終わったし、完璧に終わっている。
神様との契約だって話だから、もっと面倒な事になるのかと思っていたが、終わってみればそんな物だな。
「ふん!!」
システナの蹴り飛ばしたテーブルが壁にぶつかり、半ばからへし折れた。
音が全くしなくて本当に良かった。例の膜のような結界はまだ部屋に作用しているらしい。
さて、俺も寝るか。と思ってベッドに入ったら蹴り出された。入ってくるなということだろうが…どこで寝ようか。
しおりを挟む
1 / 2

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

種族統合 ~宝玉編~

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:481

まほカン

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:32

【完結】辺境の魔法使い この世界に翻弄される

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:94

特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:120pt お気に入り:666

処理中です...