大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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14 / 2,022
本編

大っ嫌いなお前と共闘

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「アーネ!お前、まだ負けてないよな!?」
「何ですの不躾に?第一、負けていたら貴女に戦いを挑みに来ませんわよ」
「オーケー!次!お前が一呼吸の詠唱で使える魔法の最大火力は何級だ!?」
無詠唱で人気絶させれるぐらいの火力は正直異常だけど、今回はそれ以上が必要そうだ。
今回は、長大な詠唱する時間もないだろうから一呼吸分まででの最大火力で訊いてみる。
「ですから、何ですの?そもそも、今から戦う相手にそんな事教えるわけ無いじゃないですか」
そりゃそうか。
それでも律儀に答えるあたり、コイツも大概だよな。もちろん、思っても言わないけど。
「自分と戦うのはまた今度いくらでもやってやるから、今は部屋を取りたいんだ!」
「はぁ?貴女バカですの?貴女今、二十四号室の鍵をもってるのでしょう?これ以上となると、十五号室と五十二号し、つ…」
「気づいたか?手を組んでくれ!」
「嫌です!お断りですわ!貴女と同室なんて、死んでも!」
そりゃこっちもだ!
「頼む!」
「嫌です!だって、貴女と同室ということは、どちらの噂がたってもおかしくないのですわよ!?」
……しばし黙考…自分が男として見られた場合(残念ながら、限りなく低いが)アーネは自分とカップル、ということになる。
次の場合、自分が女として見られた場合(こちらは非常に高い。残念ながら)、アーネは『そっちの毛』があることになる。
……。
…。
「大丈夫だ!問題ない!」
自分なら死ねるけど。
「どこがデスの!?」
もはやテンパって一部片言になってるな。
「この部屋しか風呂がないんだぞ!」
「なん…ですって!?」
「それ、ホントだよ」
ラウクムくんが精神的ダメージから復帰した!
「この学校、シャワー室はあるけど、シャワーは一人一日十五分って厳しく決まってるから」
ラウクムくんナイス!この一言がトドメとなったようだ。
「……………………仕方ありませんわね」
よっしゃ!乗った!
「私が使える一呼吸で扱える魔法は最大、上二級相当ですわ。ちなみにスキルのブーストをつけての階級ですわ」
一瞬、上二級は一呼吸で使う魔法じゃない!と声を上げそうになったが、スキルが関与してるなら、有り得なくはない。
「スキルは?」
「…『圧縮』。ひたすらモノを押しつぶしますわ。魔法などでは、炸裂する時に普通に打った時より圧倒的に強力になりますわ」
…お前、マジで近接の方が強そうだよな。
まぁ、今回はその魔法に助けられる訳だけどさ…。
「了解!補助器は?」
補助器ってのは、要は杖とか本とか水晶とか、そういったもの。
「そこまで教える必要はありませんわね」
これは想定されてはいたけど、言われるとなんかちょっとイラッとくるよね。
「それより、貴女のスキルは?あ、武器はわかってるからいりませんので。手短に」
一々…ホントにもう…。
「自分は『自分の体を思った通り、自由に動かす』能力だ。範囲には髪も含まれる」
「なるほど、それでオカマもどきの完成ですのね」
やかましい。
けど、これで最低限、一通り互いのことは分ったハズだ。
剣の事とか言ってないけど、アッチも補助器のこととか言ってないからいいだろ!
二人して急いで十五号室の対戦のところへ向かうと、運良くちょうど途切れたところらしい。
ちなみに、あの魔法姉妹はそのまま。
打ち合わせなんてなし、能力のこととか少し知っただけだが、それでも勝たないと…。
流石に十五分で髪を洗い切るのは絶対ムリ!
「さぁ、用意はいいですの?オカマ子ちゃん?」
「デカい図体して途中でチビったりすんなよ?デカブツ?」
二人して罵りあった後、イラつき紛れに相手を殴ろうとしたが、相手も同じことを考えたらしく、ちょうど中間地点で拳同士がぶつかった。
周りの観客が『期待出来るな』『あぁ、息もピッタリだ』なんて言ってるのがわかる。
そんなつもりじゃなかったんだが…。
「はじめまして!」「私は《不動》のフロンド・シークル!」「私は《荒地》のシクラナ・シークル!」「よろしくね!」「赤と白のお二人さん!」
どちらも金髪をツインテールで纏めている。
身長とその髪型のせいで先輩という実感が湧かない。
…というか、器用に交互に喋ってるけど、喋りにくくないのだろうか?とか思いつつ、双子か!とも思う。
双子、なんか多くない?先生も双子だし。
挑戦者チャレンジャー、レィア・シィル」
「同じく挑戦者チャレンジャー、アーネ・ケイナズ」
観客の声が高まっていく。
そして、一瞬だけ。瞬きの間よりも短いような、そんな一瞬。
歓声が止んだその瞬間。
自分は地を蹴った。
鍵もらうぞ!先輩方!
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