大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

本編

噂の十五号室と可能性

人だかりが凄いな…自分の周り以外だけど。
「やあ！凄いじゃないかレィアさん！」
「お、ラウクム、もう終わったのか？」
確かルール上、必ず一回は戦わないといけないはずだが？
「トップファイブは狙えないから、表にあった部屋の人に挑んでね。勝ったあと、二回ぐらいは勝てたんだけど…その後、戦い方を読まれたみたいでね…負けちゃったよ」
「そりゃご愁傷様」
「でも、一五五号室じゃないからセーフだよ！あそこは…魔窟だからね…」
一五五号室、よっぽどだな。
どんな部屋か気にならないでもないが、絶対に身をもって知りたくはない。
「レィアさんは死守したの？」
「一応ね。挑戦者はいないからそうなるのかな？」
このまま終わる気はないけど。
「じゃ、ラウクム、一番イイ部屋とってこようと思うんだけど、どこで誰が戦ってる？」
「うぇ！？あーそうか、レィアさんは新一年だから知らないのか…」
ん？どした？
「十五番号室の隣部屋って、じつは十四号室と、一七号室なんだ」
「…おかしくない？それ？十六号室はどこいったの？」
「…十五号室がブチ抜いて合体してるんだ…。だから、十五番号室には二人まで入れるんだ。争奪戦のときはその関係で、二対一か二対二になるんだ」
「あれ？一対一のタイマンは？」
普通にありえるだろうに？
「レィアさん、普通に考えて、一人でメチャ強い人がいて、タイマン挑むよりも相棒組んで戦う勝率高いと思わない？だから一対一にはまずならないね」
なるほど、理解した。
「さて、じゃあ場所はどこだ？」
「…そして最後にだけど」
何？まだあるの？
「二人組になることがほとんどだから、通称、恋人部屋って言ってね…」
目が点になった。
「待て待て待て待て待て待て待て待て、落ち着け落ち着け落ち着いていこうぜラウクムくん？」
「僕はすごく落ちついているよ。レィアさん」
「ちなみに同性同士の入室になった場合、どうなるんだ？」
主に風聞的な意味合いで。
「え？そりゃ…『デキて』るってことになる…」
「事実無根でも？」
「事実無根でも…」
マジか…。
「いや待て！一人で勝てばいいじゃないか！」
そうだ、そうじゃないか！
「いや、あれ見てまだ言える？」
ラウクムくんが指さした方をみるが…だめだ、人だかりが凄すぎて見えない。
仕方なく、剣を地面に刺してその上に登る
さて一言、絶景かな、絶景かな。
いや、そんな場合じゃなくて！
「なんんんんんじゃありゃ？」
「あ、見えた？」
ラウクムくんの『もうとっくの昔に諦めました』みたいな、一周回って清々しい声が聞こえた。
他のフィールドと比べて明らかにデカいそのフィールドでは、凄まじいスパークと、その余波で観客(？)が震えてる。
というか、最前列の観客なんて盾と鎧つけて完全防備じゃん！
「あの魔法打ってる姉妹が去年の十五号室に住んでた二人組だね。今年三年生になった、正真正銘の化物だよ」
三年生ってことは、準英雄級…ってラウクムくんが教えてくれた。
それが二人組で、なおかつ息ピッタリに魔法打ってるの？しかもよく見たら内一人は魔法打ちながら、デカい盾と槍を持ってやがる。
どんなハイスペックだよ。
ラウクムくんの方を見ると、『ね？』みたいな目線送ってきた。
正直、今の部屋でもいっかなーって思ってきた。
けど、ラウクムくんが重要な一言をラストに落としていった。
「まぁ、諦めなよ…。二十四号室もいい所だよ？まぁ、十五号室には唯一」
――お風呂があるけどね。
なんだとッ！
「ラウクム！それホントか!?」
「うぇぇぇ！？うん、確かに二十四号室もいい部屋だよ！？もちろん！保証するよ！」
「違うバカ！風呂だ！」
え、いや、バカって…。とかラウクムくんがダメージ受けてるけど、一応しっかりと答えてくれた。
「そうだよ…寮の部屋の中で唯一だけど、だいぶんしっかりしたヤツだよ…噂だけど…」
バカ…バカ…バカ…とか呟きながらだけど。
そうと決まれば絶対に取らねば！
自分の髪はすぐに痒くなるし、毎日洗わないとすぐ茶色くなる！それは避けたい！
タッグを組む相手…ラウクムくんは…ダメか！負けてる！というか、流石に男同士でデキてるとか噂流されたら死ぬ！
それに、魔法をくぐり抜けて攻撃できる近接か、もしくは…。
けど風呂！あー！うー！
「見つけましたわ！」
どっかで聞いた声だけど、誰だっけ？とか思って振り返ると、目の前にいたのは、もしくは、の方の可能性。
アーネ・ケイナズという高火力魔法使い！