大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

二つ名激突と二人の勇者

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俺の手には銀剣がひと振りだけ。金剣は右腕には畳んだ状態で待機。それでも金剣の効果は発動している。身体はいつものように軽い。
対するウィルは 右に長剣、左に盾。
正しく物語に出てくる騎士様ナイトのような出で立ち、構えも凛として絵になる。
俺は鎧の下で僅かに笑う。
なるほど、これは確かに《勇者》だな。
『オオッ!!』
「──ッ!!」
銀剣の一撃を、ウィルがその盾で受け止める。
『っ!?』
「重っ」
僅かな動揺が、足を一瞬にも満たない時間止めた。
その隙を突いてウィルが剣を振る。
狙いは胸、しかし流石に銀剣に押し負けたか、力の篭っていない一撃は俺の鎧に弾かれて届かない。
嘘だろ?普通、銀剣の一撃は真正面から防ごうとしたら、重さに耐えきれずに手が折れる。だと言うのにこの男は──
「びっくりした。凄い一撃だね」
防ぎきっても全く怯んだ様子すらない。
二人が同時に飛びずさり、奇妙な沈黙が生まれる。
『今代の、あの盾よく見ろ。ついでに剣も』
あん?装飾が結構されてはいるけど…別に変わった所は──
『その装飾に紛れて槌人種ドワーフの刻印が入ってる。製作者が誰かは知らんが、槌人種ドワーフが作った物ってのは確かだろうよ』
『なっ』
なら何か効果が付与されている可能性が高い。銀剣を受け止めても大してダメージを受けていない所を見ると、ダメージ緩和系か?
「うん?あぁ、この剣と盾かい?昔、槌人種ドワーフの友人に作ってもらってね。大した効果は付与されてないんだけど、よく使わせてもらってるんだ」
『へぇ、どんな効果が付与されてんだ?』
冗談半分で聞いてみた。別に答えは期待していなかったが、ウィルはあっさりと答えてくれた。
「うん、剣も盾も『絶対に壊れない』って能力。それだけだけど、無理な扱い方をしても大丈夫だから良く使うんだ」
にっこり笑うウィルに、俺は逆にやや空恐ろしくなった。
この話が本当なら、ウィルは自力で銀剣の一撃を受け止めきったということになる。
『っ……化けモンが…』
「心外だな、僕はれっきとしたヒトだよ」
僅かにズレた答えを返したウィル。なら可能性として他にあるなら──
「僕のスキルを知りたいのかな?」
『ま、教えてくれるなら教えて欲しいがな。教えてくれるか?』
「流石にそれはなぁ…勝てたら教えてあげるよ」
少し困ったように笑ったウィルが僅かに腰を落とす。お喋りはここまでか。ため息と共に銀剣を握りしめる。
『スキルか、ダメージ軽減系、重量増減系、身体強化系、あとは……どうやったか想像もつかないが、本人の技術で受け流したか』
三番の可能性が高そうだな。最後のは考えたくもない。
もしそうなら──崩せる気がしない。
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