大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

乱戦の話と後継

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この聖学は力、品位、美しさが重要なんだと入学初日に聞いたのを覚えているだろうか。
随分と昔のことに思えるが、あれからまだ一年しか経ってないのか…いや、逆に一年も経ったのか。早いものだ。
って違う違う、回想は要らねぇ。
何が言いたいかっていうと、この聖学、聖女サマを護るために割と何でもしていいって言う方針なんだよな。まぁ何でもしていいってのはつまり、腕力的なアレとか魔法的なソレとか。要はそういうの。
もしも卑怯とか言われたら品位の方に引っかかるからなんとも言えないけど、少なくとも真っ当な剣とか魔法は文句は無い。俺達の目的は聖女サマを護り通すための英雄になる事だ。極論、この身を代わりにしてでも護る、それが英雄なのだが、もちろんその身を自力で守れるのならそれに越したことは無い。使い捨ての肉盾じゃないんだし。
おっと、また話が逸れかけた。
えーとなんだ、つまりこの三年で、どれだけ実力を付けたか、それを見せつける意味合いも兼ねて三年生対一、二年生の大乱戦が行われるらしい。
「と言っても、学校側が行う正式なイベントではないがな」
「どっちかと言うとぉ…鍵戦争みたいなぁ…黙認してる感じかなぁ…去年は去年でぇ…すんごいことにぃ…なったよぉ…」
去年経験のある《雷光》と《剣姫》がしみじみと頷く。何があったんだ。
「ちなみにここでぇ…二つ名のぉ…後継を選ぶ人もぉ…いるよぉ…」
「へぇ、二つ名の後継って言ったら……あぁ、丁度《雷光》か」
どのタイミングの何の話だったかすっかり忘れたが、確か《雷光》はそうだったと聞いたことがある。
「あぁ、私は先代の《雷閃》から二つ名を譲ってもらい、先代から《雷光》の名を頂いた。ちなみに後継の場合は試験は無い。その場ですぐに二つ名認定だ」
「だからぁ…いろんな生徒がぁ…少しでも目立とうとしてぇ…普段は中々見れないぃ…奥の手を引っ張り出してきたりするんだよぉ…実際はぁ…そんな簡単にぃ…なれるものじゃぁ…ないんだけどねぇ…」
そうだろうな。ぽこぽこなってもらっちゃ困る。
「卒業生は本気で来るぞ。卒業して恐らく二度と会わなくなる相手に手の内を隠す必要も無いし、私達在校生に負けてたまるかというプライドもある。ついでにこれまで溜まったいろんな鬱憤も晴らす先輩もいたな」
なんつー迷惑な。三年生って言ったらかなり化物揃いだぞ。それが奥の手の出し惜しみ無しで来るとか恐怖以外の何物でもない。
「去年と同じなら本当に大乱闘になる。二つ名持ちや一般生徒との隔たりはなく、《キャット・シー》も《シェパード》も背中を預け、一対一だけなく一対多もあるだろう、数では勝つが、質では遠く及ばない。それでも私達は卒業生の背中を目に焼き付け、いずれ超えるべき壁としてこれに挑まなくてはならない」
《雷光》が一度言葉を切り、ためを作る。
「だが、いつ超えていいかはこちらの勝手でもある。むしろ卒業生が忘れられないような最後の戦いにしようじゃないか」
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