大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

侵入と探索

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入口にはさっき言ったように門番が二人いたが、システナが魔法だか魔術で眠らせたおかげで難なくクリア。門番と表現していたが、実際に門があるわけではなく、扉もない。ただただあけ放たれたまま、文字通りの入口。
…門番をそれほど信頼していたのだろうか。結果はかなりあっけなくオチた訳だが。
まぁ、侵入者俺達が入りやすくなるのだから、全く問題はないのだが。
ついでに言うと、ここからそれなりに離れた位置にこの建物をぐるりと囲むようにして柵があるらしい。屋根から落ちるときにちょい見えた。
そして──
「…魔族の気配がないな。貴様の逆探知、失敗したか間違えたのではないか?」
「否定が出来ないのが悲しいが、そこを否定しちゃどうしようもなくなっちまう」
力なく笑みを浮かべて答えるが、システナでなくとも、誰だって同じ事を思っただろう。そう思えるほど静か。
建物の中は恐ろしく綺麗で、泥どころか埃一つない。
何者かがここにいるのなら、多少汚れるなりなんなりするだろうが…そういったものが一切ない。俺達の靴跡だけが白く磨き上げられた硬質な床を汚していく。
「ふむ、余の眠らせた魔族しかおらなんだか…?」
「流石にそれは都合が良すぎるだろ」
いや。
もうすでにこの時点で都合が良すぎる。
ロクな警備もなく、他の魔族からも見つかりにくく、その上建物の中にもまるで魔族の気配がない。
逆探知に気づいているだろうに、なぜこんなにも無防備なんだ?
答えは簡単に出た。
──罠、か。
まぁそれでも、進むしかないのだが。
「ふ──ぅ」
「む?どうした《勇者》。急に立ち止まって」
「ちょっと、な」
呼吸を整え立ち止まり、ゆっくりと目を閉じて集中する。
イメージとしては、身体の様々な感覚を蛇口でも捻るようにして少しずつ絞り、代わりにある一点を限界まで開くようなイメージ。
そのある一点とはすなわち──聴覚。
いつだったか、ユーリアと初めて戦った時にやったものより何倍も精度と範囲が広いそれは、すぐさま誰かの発する音を拾った。
音源は──二箇所から。
一つはこのキノコ型の建物の上、キノコのカサにあたる部分の方。
もう一つは真逆、地下の方。
俺は一瞬たりとも迷うことはなく、すぐにどちらへ行くか決めた。
「──見つけたぞ」
「ほう?不要な感覚を極力落とし、一点に集中させたか。器用なものだな」
どこだ、と短く聞くシステナに、人差し指を地下に向けて二度三度示すと「地下か」と素早く飲み込む。
地下へ通じる階段を探すと、一分もしないうちにそれを発見。
罠は無い、よな?
二人共口を開くことなく、そのまま静かに地下へと進んで行った。
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