大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

アクシデントと未知の地

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「んあっ?」
結界を抜けた瞬間、微かに立ちくらみのような感覚が俺を襲い、すぐさま引いていく。
前に来た時、こんな感覚あったっけ。大した問題じゃないが……
「ラウクム、他のみんなは来れた──」
後ろを振り返ると、枯れた木が一本あるだけ。あとは砂と石だけの荒野が広がっている。
「ん……んん?」
待て、ここはどこだ?何でこんな所にいる?
慌てて辺りを見回すと、右の方──じゃ、分からないな。えっと、太陽の位置から方角を出して…ありゃ北…じゃなくて北西か。北西の方に結界の境界線が見えた。
北西の方に結界が見えたということは、結界の外には出られたのは間違いないらしい。間違いないらしいが──
何故こうなった?俺だけがこうなのか?全員散り散りになったのか?誰かが作為的にしたのか?それとも事故?
分からない。情報が不足しすぎている。
『今代の。とりあえず渡された袋の中身をチェックしとけ。余裕があるうちにな』
「あ、ああ」
シャルに言われて肩に担いでいた大して重くもない袋を下ろし、中のものを一つ一つ外に出しながら確認することにした。
ここに来る前、念入りに身体検査をされた挙句、所持品は武器と鎧を除いて全て没収された。
つまり、俺の持ち物は先生に渡された例の袋のみ。髪の中まで検査された時はぶん殴ってやろうかと思った。
「んー、言われた通りの物しかないな。時計に干し肉、あとは水が入った水筒だけ…ん?通行証はどこだ」
通行証と言うか、結界を通り抜けるために《聖女紋》を簡易的に描いた札みたいなものだが。
『時計の裏っかわに書いてあったぞ』
と、シャルに言われてひっくり返すと、確かに時計の裏側にはそれっぽいものが。ひび割れて今にも壊れそうなのは、多分使い捨てだからなだな。
さて。
「マキナ、メッセージだ。相手は…一班のメンバーなら誰でもいい」
『申し訳ありません・マスター・不可能です』
「…あん?」
『訂正します・ほぼ不可能です』
「そりゃまたどういう意味だ?」
出した荷物を片付けつつ聞き返す。…ん?この袋…
『強大な魔力が・妨害しています』
「あん?妨害?」
『はい・極めて無差別に放たれているようで・この辺り一帯が妨害範囲内です』
ふむ、そんな事をする奴の目的はよくわからないが、どんな奴がしているのかは馬鹿でもわかる。
「…魔族か」
『魔獣にゃ無理だろうよ』
ごもっともで。
「マキナ、妨害をしてるのって魔族かアイテムかわかるか?」
『高確率で・特定のアイテムです』
「場所はわかるか?」
『妨害が強い中心地へ向かっていけば・可能です』
「距離は?」
『不明です』
「………。」
『どうする?今代の』
ここから結界の中までどのぐらいの距離か、正直想像もつかない。正解があるのなら、恐らく今すぐに結界の方へと向かって走るべきなのだろう。
だが。
「行く」
『了解しました』『よく言った』
「んじゃマキナ、任せた」
『了解しました』
俺はそう言って、結界に背を向けた。
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