大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

過去と剣

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それから暫く…五日ほど、昔懐かしい家で二人きりで過ごした。
その間にあった事は…特にないな。いつも通り魔獣が攻めてきて、それをいつも通り倒したり、家の地下を(ヤツキが手伝ってくれないので)一人で片付けたり、シャルと喋ったり、森を散策したり…まぁ色々したけど、特に言うようなことは無い。
あぁでも、たまにヤツキに《勇者》関連の事や金剣銀剣の事を聞いたりしたっけ。
かなり渋々だったが、ヤツキはそれにある程度答えてくれた。半分ぐらいは「いい加減自分で考えろ」か「後で《亡霊》の方の私に聞け」か「記憶を漁れ。許可しただろう」と言われたが、それでも五日もあればそれなりに聞き出せた。
本人に聞くようにしていたのはこっちの気分の問題。やはり許可されたとは言え、勝手に覗くのはなぁ…必要な情報と個人的な記憶が絡んでいる事が多いから、未だに記憶を勝手に見るのは少し抵抗があるしな…
シャル?あいつは結構誤魔化すんだよ。《勇者》としての記憶が厚みを持ちすぎていて、あまり人に話したがらないような感じを受ける。
その点ヤツキはある程度…なんというか、《勇者》としてのシャルレーゼと、今のホムンクルスとしてのヤツキを切り離している気がする。
そのせいか、淡々と絵本の物語を読み聞かせるようにしてその事を話す。
──そんな彼女でも、つらなりことわりの事を聞いた時は、少々顔を顰めていた。
まるで、その事を聞いて欲しくなかったと言わんばかりに。
「連と理がどういう剣なのか、か…」
朝早く、珍しくヤツキが起きていたので、シャルがいないうちにと思ってそう聞いてみた。
「そうだな、連は元々、機人が造った作品だ。それを私がとある都市を落とした時に頂戴した」
「さらっと凄ぇ事言ってんな、アンタ」
「そりゃあ私だって元《勇者》だ。それも大戦が休戦する前の激戦時代にひと種族消したのは私だ。まぁ厳密に言うと、その一因なのだが…並の《勇者》より働いたつもりではあるぞ」
眉間の皺を揉みながらヤツキが事も無げに言う。いや、記憶を少し覗いた感じ、機人って化物集団だったんだが。それも魔族と違って連携もするし、下手したら魔族より厄介なんじゃないか…?
「じゃあきんけ…理は?」
「理?理は…」
そこでヤツキが少し口ごもる。が、すぐに口を開く。
「理も元は私の部下の剣だ。それを私が譲り受けた」
「……そうか」
恐らくその部下というのは志半ばで死んだのだろう。そう言えばシャルは昔軍にいたとか言っていたな。その時の部下だろうか。
「何にせよ、その時と比べると多少変質しているがな」
「うん?そりゃまたどう言う」
「自分の記憶を掘り返せ。話はここまでだ」
…過去に何かあったのだろうか。
それはまた後日、時間がある時にでも掘り返すとしよう。
さて、休みもそろそろ終わりか。出ていくとしよう。
「じゃあな、ヤツキ」
「あぁ。またそのうち帰ってこい。働く手足は大歓迎だ」
そう言って俺は住み慣れた家を出、再び南の荒野を目指す。
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