大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

血界と産獣師

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あっさりと破られる結界、耳が潰れそうなほどうるさい叫び声、踏み荒らされ、なぎ倒される木々。
最初に動いたのは──ヤツキだった。
ッ!!」
極太の手足の間を縫い、半秒すらかからずにその内一体の身体を駆け上がる。
その勢いのまま飛び上がり、剣の切っ先が狙うのはギガースのうなじ。
黒の長剣を身体を横にひねって限界まで力を溜めると、剣が赤い輝きを宿す。
「《緋閃ひせん》ッ!!」
振り抜いた後、一拍遅れてキュボッ!!と音がした。
次いでゆっくりと落ちてくるヤツキが思いっきりギガースの後頭部を蹴りつけると、簡単に首が落ちる。
「やはりか…」
ヤツキの口がそう動いたのが見えた。
残りあと四体──やるっきゃない!!
『「血界を使え!!」』
「言われなくとも!!」
全く同じ事を言ったシャルとヤツキにそう返し、血海で今さっき出来た死体から血を引き抜く。
背中が熱くなるのを感じつつ能力を解放。使う血界は──
「第一血界《血鎖》──」
右手から飛び出したのは、何重もの連なりを見せる血で編まれた鎖。
魔法を弾くそれは物理を多様するギガースには一見無駄が多いように見えるが──俺の目的は魔法を弾き返すことではない。

「第三血界《血刃》!並列解放!!」
瞬間、血鎖の至る所に短い血の刃が形成される。即席の血で出来た鞭だ。
プクナイムの時の並列解放の改造版を鋭く振り抜く。
「っ、せいッ!!」
滑るようにして波打つ血界が強かにギガースの身体を打ち、胸から腰にかけて斜めに大量の血を吹き出してギガースが
「!?」
このギガース──脆い!!
俺が戦った奴より圧倒的に…いや、もはや別物と言っても過言じゃない。
『三大魔候《産獣師》──』
シャルが唐突に口を開く。
『奴は元々、取り込んだ獣の精をはらの中で混ぜ合わせ、新たにキメラのような生物を作り上げる魔法の持ち主だった…それが魔獣と出逢えば──どうなるか分かるな?』
分からないわけがない。同時にどうしてこんなにギガースがいるのかも理解出来た。
「ギガースの胤貰って他の魔獣と掛け合わせて増やしたって事かよ…!!」
『実際に産む必要はないからな。バカスカ産んでも有り得なくはない。そして産まれた魔獣は《産獣師》の子として従順に従う。恐らくギガースの純度を多少下げてでも複数産むことを優先したんだろう』
それなら──勝てる可能性は充分にある。
「………おかあさん、おわっ、たよ?」
「よしシエル、怪我しないように気を付けろよ?」
「………うん!」
「いくぞ!!」
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