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本編
飯と不満
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「やってらんねぇな……」
黒剣を額から生やして息絶えた巨大な狼の背中に乗り、髪の中をまさぐりながらそう呟く。
深く繁った木々によって陽の光はかなり減衰させられているが、それでも太陽の位置ぐらいは分かる。太陽の位置が分かれば時間も大体分かる。
ざっと午後三時…と言ったところか。
「くそ、本当にやってらんねぇ。ナナキはたった一人でこんな所を守ってたのかよ」
荒く髪の中に手を突っ込み、さらにまさぐるが…うん?
『…さっきからお前は何を探しているんだ…?』
「飯」
おっかしーなー?初日に詰めた芋団子、そろそろ食えなくなるし、朝のうちに拭った血の匂い(とやたら濃い獣臭)がつかないうちに食っちまおうと思ったんだが…無い?
『落っことしたんじゃねぇの?』
「そんな事、万が一にもないと思うんだがなぁ…いやでも、ついさっき寝てた時に落としたかな?」
そうなら流石に拾って食べられないだろうし、さっさと諦めて──
「お?なんかあった」
『よかったじゃねぇの』
取り出してみると、それは握り拳より少し小さいぐらいの石ころ。それが二つ三つほどころりと出てきた。
「………。」
『……これは…どういう事だ?』
考えて出る答えは一つだけ。
「まさかあの女、俺の分の飯まで食いやがったか…?」
偽装工作としてご丁寧に石ころを入れて。
「……マジかよ」
『あー…まぁ、腹が減ったんだろ』
いや、だからってくすねて食っていいって訳じゃねぇだろうに…。
『あんまり怒らねぇのな』
「お前もな。まぁ、ある意味感心してる。俺が髪に触れられて俺が気づかないだなんて、下手したら生まれて初めてかもしれん」
だからと言って怒ってない訳じゃないんだが…今回は許すか。取られた俺にも責任があるし。
大方、例の弱点を見つけるスキルだか何だか忘れたが、そのスキルで俺の警戒が薄い所を縫って取ったのだろうが。
にしても………腹減ったな。
魔獣は食えるらしいし、実際に何度か食べているが…日持ちはしないらしいし、そもそも火を通していない魔獣の肉は食っちゃまずい。二重の意味で。
『腹減ったって言ってないで剣握れ。そら、次のが来たぞ』
「あー…せめて魔法で炎を起こせるか火種を手軽に起こせる道具でも持ってきてれば良かったな…」
ボヤきつつ立ち上がり、狼の額から剣を引き抜く。
『シャハアアアアアアアアアアア!!』
奇声を上げながら頭が三つと腕が六本あるヒトガタの化物が突っ込んでくる。
手には剣だの槍だの斧だの鉈だの…まぁ沢山の武器だ。
全く──
「何でもかんでも、多けりゃいいってもんじゃねぇんだよ!」
『それ、多刀流が言うセリフかね?』
やかましい。俺は今、空腹で少しばかり気がたってるんだ。
黒剣を額から生やして息絶えた巨大な狼の背中に乗り、髪の中をまさぐりながらそう呟く。
深く繁った木々によって陽の光はかなり減衰させられているが、それでも太陽の位置ぐらいは分かる。太陽の位置が分かれば時間も大体分かる。
ざっと午後三時…と言ったところか。
「くそ、本当にやってらんねぇ。ナナキはたった一人でこんな所を守ってたのかよ」
荒く髪の中に手を突っ込み、さらにまさぐるが…うん?
『…さっきからお前は何を探しているんだ…?』
「飯」
おっかしーなー?初日に詰めた芋団子、そろそろ食えなくなるし、朝のうちに拭った血の匂い(とやたら濃い獣臭)がつかないうちに食っちまおうと思ったんだが…無い?
『落っことしたんじゃねぇの?』
「そんな事、万が一にもないと思うんだがなぁ…いやでも、ついさっき寝てた時に落としたかな?」
そうなら流石に拾って食べられないだろうし、さっさと諦めて──
「お?なんかあった」
『よかったじゃねぇの』
取り出してみると、それは握り拳より少し小さいぐらいの石ころ。それが二つ三つほどころりと出てきた。
「………。」
『……これは…どういう事だ?』
考えて出る答えは一つだけ。
「まさかあの女、俺の分の飯まで食いやがったか…?」
偽装工作としてご丁寧に石ころを入れて。
「……マジかよ」
『あー…まぁ、腹が減ったんだろ』
いや、だからってくすねて食っていいって訳じゃねぇだろうに…。
『あんまり怒らねぇのな』
「お前もな。まぁ、ある意味感心してる。俺が髪に触れられて俺が気づかないだなんて、下手したら生まれて初めてかもしれん」
だからと言って怒ってない訳じゃないんだが…今回は許すか。取られた俺にも責任があるし。
大方、例の弱点を見つけるスキルだか何だか忘れたが、そのスキルで俺の警戒が薄い所を縫って取ったのだろうが。
にしても………腹減ったな。
魔獣は食えるらしいし、実際に何度か食べているが…日持ちはしないらしいし、そもそも火を通していない魔獣の肉は食っちゃまずい。二重の意味で。
『腹減ったって言ってないで剣握れ。そら、次のが来たぞ』
「あー…せめて魔法で炎を起こせるか火種を手軽に起こせる道具でも持ってきてれば良かったな…」
ボヤきつつ立ち上がり、狼の額から剣を引き抜く。
『シャハアアアアアアアアアアア!!』
奇声を上げながら頭が三つと腕が六本あるヒトガタの化物が突っ込んでくる。
手には剣だの槍だの斧だの鉈だの…まぁ沢山の武器だ。
全く──
「何でもかんでも、多けりゃいいってもんじゃねぇんだよ!」
『それ、多刀流が言うセリフかね?』
やかましい。俺は今、空腹で少しばかり気がたってるんだ。
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