大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

共闘と第三夜

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ドッ、と魔獣の首が跳ねて転がる。
「汚ぇな、おい」
噴水のごとく吹き出る血をひょいと避け、また次の魔獣へ。
『被弾ゼロで連続討伐か…また大変な事になったな』
「仕方ない。…にしてもヤツキはいつまで寝てる気かね?」
『そろそろ起きるだろ』
「って返事を結構前に聞いたんだがな」
俺が一人で戦い始めて大体…五時間ぐらいか?多分。
マキナに聞けば一発で答えが出そうだが、別にそこまでして知りたいわけではない。
だが……そろそろ。
そろそろ日が落ちる。
日が落ちれば…結界が破られ、今まで以上の魔獣が攻め込んでくる。
「《散華》」
戦技アーツを発動させ、魔獣をまた一体屠る。
『…日が完全に沈むまで…あと五分ってところか。気ィ抜くなよ?ここには回復手段なんてないからな』
「当然。…と言うか、俺はスキルの恩恵があるから避けるのは比較的簡単だし、魔法の類いは当たってもほとんど消えるんだが──」
轟、と俺の顔の真横を巨岩が飛んでいく。
一応確認すると、ヤツキの方とはてんで見当違い。あっちは大丈夫そうだ。
『あっぶねぇな。大丈夫か?』
「大丈夫大丈夫。話を戻すとだな」
巨岩を投げてきた猿に向かって握り拳大の大きさの石を握り、血呪と銀腕を併用した腕力で投げ返す。
高速で飛んだ石が相手の顔を爆散させ、この三日で馬鹿になった鼻をさらにおかしくさせる。
「俺なら出来なくはないが、ヤツキもそんなこと出来るのか?ってことだ」
『お前と似たようなスキルなら出来るんじゃね?…あるいは超回復系のスキルか』
「そんなモンあるのか?便利だな。羨ましいスキルだ」
『…知らね。超回復系のスキルの場合、何らかの縛りがあるだろうがな。使う度に体力を消耗する、とかその辺か?』
『なんだ、私のスキルか?』
「お、ヤツキ。起きたか?」
『あぁ。素晴らしい目覚めだよ。まぶたを開けて最初に会ったのは白目剥いた虎の生首。名前はボブ。これから仲良くやれそうだ』
俺がついさっき刎ねた首を拾い上げ、クルクルと指先で回しながらヤツキが答える。
「大丈夫か?寝てるうちに頭でも打ったか?」
『最高に最悪な夢を見たもんでな。ちょっとばかり巫山戯てみた』
「はっ。お前にゃ似合わねぇよ」
パチン、と指を鳴らすとそれに反応して《千変》が俺の所へ戻ってくる。
しかし…鎧にはならず、腰元に集まり始める。
「魔力が切れたか?」
『申し訳ありません・貯蓄が尽きました』
「いい。よくやった」
『ありがとうございます・せめて・僅かばかりの支援をさせて頂きます』
そう言って《千変》が僅かに変化、両手にのみ装備される。少し右腕を弄れば、そこに黒剣を装着も出来る仕様は先程と変わらない。
それからマキナは完全に沈黙する。
「…さて。起きたところで悪いが」
「第三夜の始まりだろう?分かってるさ」
「金剣…いるか?」
「金剣?あぁ理か。いや、いい。こいつもお前につくって言ってるしな」
そう言ってヤツキが金剣をじっと見つめる。
まるで誰か中にいるような言い方だが、別にそういう表現も悪くないだろう。
「じゃあ──「始めよう」」
次はこちらから仕掛ける番だ。
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