大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

甲虫と大木

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もちろん、何事もない訳が無い。
クエスチョン.ここはどこですか?
アンサー.魔獣が毎日進行してくる、およそ人なんかが住めるわけが無い人外魔境。
という訳で早速魔獣と遭遇エンカウントした訳だが。
「ちょっとばかり大物過ぎねぇ…?」
俺が今いるのは、自分の胴体の倍ほどもある木の裏。そこからさらに同じような木を五、六本ほど挟んだ向こう側にドデカいカブトムシがいる。
体高およそ七メートル、全長にいたってはその三倍はあろうかという巨躯。
『デッケェカブトムシだなおい。色々と間違えてねぇか?サイズとか季節とかエサとか』
エサ。つまりは飯。
ドデカいカブトムシが食べているのは、紅の森に生えている木から漏れ出る樹液──などではもちろん無く、ソイツと同じぐらいの大きさの同類カブトムシ
本来カブトムシには有り得ない、見るからに強靭そうな顎でゴリゴリと砕いて食べている。
「……マキシマムビートルか?あれ」
『なんじゃそのド安直な名前』
「名前も見た目も性能もド安直だぞ。馬鹿力に笑えないぐらいの硬さがアレの売りだ」
『単純だな』
「あぁ。でもそれだからこそ強い」
硬いから刃が通らない。
力強いから掠っても致命傷になりかねない。
比較的動きは遅いが、それは遅くとも問題ない程硬く、体力もあるから。
そしてタフ。いや、タフというより、生命力が半端ではない。再生したりはしないが、頭がもげた程度では止まらないし、痛覚もないらしく、物理的に戦闘不能にするか確実に殺すぐらいしか止める方法はない。
加えて────その性格は獰猛。
そして見ての通り肉食。
「それにあの個体…共食い繰り返してとんでもない成長してんな…普通の五割増でデカイじゃねぇか」
『どうすんだ。これラウクムとか呼んでくるべきだろ』
「呼んだところで来る前にこっちが死ぬだろうが」
首に下げた銀剣を引っ張ると、キン、と澄んだ音と共にそれが大剣の形をとる。
「出来るだけ一撃…ないしはその次で仕留めたいな…マキナ」
『はい・マスター』
「起動しろ。ただし付けるのは俺じゃねぇ。銀剣だ」
『意図が不明です』
「超重量系の一撃を叩き込む。後はわかるな?」
『理解しました・全力でサポート致します』
「タイミングはこっちで言う。何秒かかる?」
『装備で一秒・さらに魔法発動で半秒です』
「上等」
理解が早くて助かる。
マキシマムビートルは耳も悪いから、奇襲で一撃で仕留めたい…!
そっと、羽のように軽く跳躍。
さらに今の今まで背中をつけていた大木を蹴り、向かいの木へと飛び移り、さらにさらにそれを蹴って大木をさらにさらにさらに蹴って…という風にして上へと登っていく。
「マキナ、今だ」
『起動します』
さぁ──
「勝負だ」
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