大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

賭け金とメリット

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「私と決闘ぉ…?嫌だよぉ…?私にメリット無いしぃ…」
「俺が勝ったら、お前は《フェンリル》云々の事はテメェで否定してケリつけろ。暴動が起きたなら全力で解決しろ」
「だからぁ…私がその決闘受けてもぉ…利益出ないでしょお…?レイくん、君は今、チェスで言う所の詰みチェック・メイトに限りなく近いところにいるんだよぉ…?私がどうしてそんなリスクを負わなきゃいけないのぉ…?」
暴動を恐れる俺は《フェンリル》につくしかない。
そして周りは俺が《フェンリル》に入っていると思い込んでいる。
そして《シェパード》からは敵視、《キャット・シー》から見ても恐らく似たような視線を受けるだろう。
無傷で事を終えるには《剣姫》の口から真実を吐かせるしかないが、《剣姫》はそれをしないと言う。
《剣姫》からすれば、放っておけばいずれ《フェンリル》に入るのに、この一度の決闘で計画が崩れるのはどうしても避けたいだろう…と言うより、彼女にとっては全くメリットがない。
だから。
「剣を、賭けよう」
「んぅ~?」
彼女を戦いに引き込むためには、ある程度のリスクを背負おう。
「お前が勝てば、俺が持っている金剣銀剣、その二本をお前にやる」
「あぁ、あのピカピカしてる剣ねぇ…私、あんまりあの剣、欲しいって思わないんだけどなぁ…」
「そうか?そりゃ残念だ。本来、ありゃどこぞの大貴族が宝剣として大事にしているような代物なんだがなぁ…いやはや残念だ。お前なんかじゃ二度と手に入るチャンスは無いだろうなぁ…本当に残念だ」
《剣姫》が目の色を変える。
「大貴族のぉ…宝剣……?……まさか」
かかった。
どんなものがそれかは知らなかったらしいが、存在そのものは知っていたらしい。もしも知らなかったら、なんて懸念は杞憂だったようだ。
「どのまさかか知らないが、正真正銘本物だぜ。無闇矢鱈と口外しちゃいけないが、ちょうどこの学校にはどちらの大貴族も揃ってやがる。ちょっくら聞いてこいよ。本物か偽物かぐらい、本人達に聞けば…まぁ、隠そうとするかもしれないが、俺から聞いたって言えば教えてくれると思うぜ」
「なんでぇ…レイくんがそんなのを持ってぇ…」
「それは秘密。けどま、一応俺が宝剣を持ってることを向こうは知っていて、その上でちょっかいは出してない…つまり、この剣の所有権は俺が持ってる。お前に渡しても横取りしようとする大貴族はここにゃいねぇよ」
嘘は言っていない。ユーリアもルト先輩も俺が宝剣を持つことを許可しているし、この学校にいる大貴族はその事に文句は言わない。
もっとも、王都に行けばどうなるかは知らないがな。
「さぁ、乗るか?どうする《剣姫》?」
俺があえてそう聞くと、《剣姫》は一つ条件を出しつつ、決闘を受け入れた。
今週の土曜日、二年生の訓練所で。
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