大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

超巨人と激戦4

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俺は見た。
何十もの魔法がギガースへ向けて殺到する所を。
俺は視た。
ギガースの体内で膨大な魔力と生命力がせめぎあい、混ざりあっているのを。
そしてギガースに魔法が着弾する直前、魔法が消滅した。

『なんっ……!?』
「嘘…だろ…?」
絶句する俺と男、そして他の生徒達。
ギガースさえ黙り、やけに静かな空気の中、俺の中にだけ響く亡霊の声がした。
『あれ、ギガースって言うのか?俺の時は正式名称なんて無かったけどな…もう一度言う。あれは《勇者》に縁のある敵だ。結界なんてものが存在しなかった大戦の時に使われた化物だ──気をつけろ』
が来るぞ──シャルがそう言った途端、ギガースの体内で混ざり合い、反発していた二つの力が迫り上がるのが視えた。
ざわり、と背中がざわめき、危険だと言う思考が頭を埋め尽くす。
『ッッッ!!テメェら今すぐフィールドの外に出ろォォォォ!!ヤバイのがく──』
そこまで言った時点で、ギガースの口から白く輝く光が見えた。
見た瞬間、今までを超える警報が頭の中で喚き散らし始めた。
発射まで一秒も──ない。
身体は勝手に動いていた。
金剣の力を全て出し切り、男の襟首を掴んで後ろに飛ぶ。
後衛の前に着地、それと同時に金剣を地面に斜めに突き刺し、足を踏ん張る。
『入れ!!』
手近な魔法使いを強引に金剣の陰に入れ、構える。
と同時にギガースが上を向き、口から白い光が飛び出るのが金剣の陰から見えた。
『逃げろオオオオオオオオオオ!!』
間に合うか?間に合わないか?
分からないが叫んだ。
ギガースの口から飛び出した、白い光の塊は上空へ飛翔、フィールドをいとも容易く貫き、ギガースの身長の約二倍、地上からおよそ六十メートル程の地点で一瞬静止し──弾ける。
白い光の塊は白い光の欠片となって下へ──訓練所へ落ち、俺達を蹂躙する。
聞こえるのは光が訓練所そのものを破砕し尽くしていく轟音と、それに紛れるように微かに聞こえる生徒達の悲鳴。
『くっ…!!』
『歯ァ食いしばれ…来るぞ』
シャルがそう言った瞬間、両手と両足が有り得ない音を立てて軋む。
『ッッッ!?、────ガッ!!』
ミヂミヂ、ブヂブヂ、と嫌な音が身体の内側から聞こえる。
筋肉が千切れる音だろうか。それとも内臓が捩れる音だろうか。そんな事が脳裏を過ぎった。
血を吐きながら、俺は力ある言葉を叫ぶ。
『──《征…ッ断》!!』
途端に金剣を中心に青い膜が張られ、俺とほか数人を包む。
あとどれほど耐えればいいのだろうか。
金剣は魔砲との衝突の影響で熱を持ち、鎧を通して熱が俺の手のひらを焼く。
それでも──耐える!!
『ッッ、ラァッ!!』
無理に魔砲を押し逸らし、横に流す。
爆音と共に俺の横に着弾。
破片が飛び、俺のフェイスに大きく傷を付ける。
「あっ……ぐ!ひ、《緋眼騎士》……!どうなった!?」
『レィアでいい。訓練所はなくなった』
今の一撃で訓練所は完全に壊滅。傷ついた生徒も多い…多分死人も出た。
「そん……な」
でも。
『ここで引けねぇよな』
──「もしあなたが《シェパード》に入るなら、今日の訓練はすぐに終わり、だそうです」
こんな事になるなら、《シェパード》に入れば良かった──なんて、考えさせようとしているのだろうか?
そう思った瞬間はらわたが煮えくり返った。
『クソッタレ…気に入らねぇ』
心底気に入らねぇ。
『おい指揮官男、負傷者逃がせ』
「馬鹿言え、ギガースは逃げる背中を追いかけるって──」
『テメェ、誰に物言ってやがる』
宙を舞い、戻ってきた白剣を左手で掴みつつ、腹の底に溜まったイライラを八つ当たり気味に吐き出しつつ。
かなりの仲間がやられてしまった。それでも。
『《騎士》が人を守れなくてどうする』
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