大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

休憩と質問

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そんな訳で、しばらく生まれたての小鹿のようになっていた聖女サマをおぶりながらあちこちを回ったりしていた。
その間、二回ほど人だかりが出来たが上手いこと脱出を繰り返した。
で、結局戻って来たのは広場の方。
比較的どうでもいい話だが、広場の周りの出店は聖学祭関係者俺達なら無料らしい。どうやって判別してるのかは知らんが、俺も聖女サマも無料だったが、その後ろのオッサンからは金とってたし。
「これ、おいひぃですね」
真っ青にしていた顔を幸せで真っ赤にしながら聖女サマがそう言う。
座ったベンチで足をプラプラとさせるその仕草は、年相応の少女ではなく、もっと幼いように見えた。
つーか…なんてーか、聖女とかってもっと上品に飯食ったりするんじゃねぇのか…?そんなハムスターみたいに頬張ってちゃ威厳も糞も無いんだが。
じっと聖女サマの頬を見つつそんな事を考え…。
………。
「………。」
「…な、なんですか、レィアさん。くすぐったいです」
「…いや、何でもない」
『何してんだお前』
特に意味もなく聖女サマ頬をつついてみた。
なんかあの頬袋、幸せ詰まってそうだよな。
それからしばらく、聖女サマが幸せそうに手に持った食べ物…太めの串に小麦っぽい物を芳ばしく焼いた肉と共に巻いてあるそれを、はむはむと食べる音だけが俺達の間に流れた。
辺りの喧騒や楽しそうな声、時たま聞こえてくる悲鳴にも似た叫び声も飛び交っていたが、俺達の間にあったのはそれだけだった。
ふと、少し前から気になっていた事を聞こうと思って口を開いた。
「なぁ──」「あの──」
向こうも何か言おうとしたらしく、俺と聖女サマのセリフが被る。
「あー、先言う?」
「い、いえ!レィアさん先にどうぞ!」
被ったのが恥ずかしかったのか、顔を真っ赤にして俯く聖女サマ。
「そか、なら遠慮なく」
少し考えて、少しだけ遠回りに言ってみる。
「聖女ってどんな生活してんだ?」
「えっ…と、ですね」
まだ少し赤い顔をなんとか上げ、たとえば昨日でしたら、と言ってから一つ一つ思い出すように言っていく。
「朝四時に起きて結界の維持を六時頃まで。その後七時頃まで朝食、その後は神に祈りを捧げ、再び結界の維持、十二時から一時まで昼食の後、六時まで結界の維持、そして軽食を食べてからレィアさんの所に行きましたね。あとは…はい、修行をしてから寝ました。ベッドに入ったのは一時頃…だったと思います」
「修行ねぇ。聖女の?大変だな」
「えぇまぁ。けど、前よりもかなり楽になったんですよ?」
これでもか。
こうして聞いてみると、やはり聖女というのはかなり大変な役なのだと再確認させられる。
「他にも結界周辺の魔獣狩りや、各地の教会を回ったりと、色々な事することもありますが、基本はそんな感じです」
「それで──」
聞こうと思った言葉が少し、つかえた。
それでも押し出す。
「それで辛い、とかキツい、とか、あるいは辞めたい、って思った事はないのか?」
「それは──」
何かを言いかけ、急に止まる聖女サマ。
そして緩く頭を横に振る。
「いいえ、言っても意味の無い事です。私は四代目聖女で、それは変わることの無い事実ですから」
「…そうか」
本当にそうだろうか。
「それよりレィアさん、私も聞きたいことが──」
「あ、レィアさーん!!」
このタイミングで来たのはラウクムくん。
そしてその大声に釣られる周りの生徒達。
「あのバカ…!逃げるぞ」
「えっ、その」
返事を聞かずに俺は聖女サマを抱き抱え、そのまま逃げた。
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