大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

結界突破と裏切り者

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一応話を聞くと。
この前俺に接触してきた魔族と言ってることはほとんど同じだった。
かいつまんでしまうと、この前のゼランバの件、その幹部と思しき者達全員が全てスキルを抜き取られ、死に至っていた事。
そして──王都に潜む魔族が実際におり、数が予想以上に多いという事。
ただ、魔族が話した内容と違うことが二つ。
一つは狭間の子云々には一切触れない…と言うよりも、そもそも知らないような口ぶり。
そしてもう一つ──。
「本当に…間違いないのか?」
「間違いないじゃろう…でなければ説明がつかんのじゃ。しかし…」
そう言って頭を振る老人。
下を向いて表情はよく見えないが、恐らくその顔についた皺をより一層増やして悩んでいるのだろう。
「それにしては数が多すぎる…となると結界の外から新たに侵入したことになるのじゃが、その手段が分からぬのじゃ」
結界への侵入方法の話。
魔族の方は一応理由っぽいものを言っていたが…まぁ、あれも荒唐無稽な話だったか。
「穴でも掘ってくぐり抜けたんじゃね?」
「それは有り得ません」
茶化した答えはすぐに否定される。
「結界は半球状に見えますが、それは目に見えているところだけです。あまり知られていませんが、実は球体なんです。仮に穴を掘ったところで地面の下で結界とぶつかります」
それじゃあ確かに抜けられないな…。
「ふーん…まぁ分かった。で?俺にこの話をした理由は?」
「君に頼みがある」
だろうな。
じゃなきゃこんな話、する訳が無い。
「君に南の方の監視をお願いしたい」
「あ?監視ィ?」
「はい、監視です」
二対の目にじっと見つめられ、何となく姿勢を正す俺。まぁ、背もたれはそのままなんだが。
「儂らは恐らく、妖魔族あちら側からヒト種こちら側へ手引きしとる者がおると睨んでおる。ただ、その者はあまり多くはないじゃろうな」
『ヒト種の裏切り者が・存在すると言う事でしょうか・良ければ・あまり多くないと考える理由を伺っても宜しいでしょうか』
「その通りじゃマキナちゃん。そして、あまり多くはないと言うよりも…今は減ったと言うべきかの…」
『なるほど・有難うございます』
今は減った──つまり、反聖女派は既に使い捨てられた。
「私はまだ聖女になってから日が浅いので、結界の強度が他の歴代の聖女様より低いのです。もしも魔族を手引きする者がいるのなら、比較的容易に結界を抜ける事が出来るかも知れません…」
己の力が足りないがために…そう悔いる聖女サマは何となく…既視感が無い訳でも無かった。
ただ…少しばかり手のひらが広すぎるように俺は思ったが。
「ふーん…わかった。その裏切り者を見つけりゃ良いのか?」
「頼む。結界は東西南北の端が一番弱い。北は海であるから可能性は低く、東は…君の出身じゃったな。語る必要もあるまい。残るは南と西。つまり……言いにくい事じゃが、聖学か西学に裏切り者が潜んでおる可能性が高いのじゃ」
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