大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

着替えと不満

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向こうに着いてから渡されたのは、この前見た通りの制服。もちろん学校のものではなく店の物。
「…なぁこれ、ホントに着るのか?着なきゃならんのか?」
「ええもちろんです。特にあなたの場合は絶対です」
そう言って俺にウェイトレスの制服を渡す学級委員。
せめてもと精一杯睨むが、睨まれた当人は知らん顔。早く着てこいと手を払われた。
そんな訳で渋々ながら店の控え室で俺用に誂えられたそれを着ていく。
「………。」
袖を通して分かったのだが。
学級委員長、狙いやがったな?
胸にパッド詰め物が仕込まれてやがる。大き過ぎずに小さ過ぎない程度のそれは、俺の外見とバランスの良い、程よい大きさだ。
それもわざわざ、服の内側に縫い込まれているので取り除くことは難しいだろう…忌々しい。
下着とかは無かったが、かわりにスパッツがあった。…まぁ、穿かないわけには行くまい。
一緒にあった白いリボンは、多分これで髪を結べという事だろう。
長さ三メートル近い自慢の髪を畳み上げ、首の上のあたりで適当に縛って長さを約二分の一にしてみるが──まだ長いな。普通に足元ぐらいまである。
仕方なく、もう一度さらに畳んで縛る。
…よし、こんなもんだろ。部屋にあった鏡を見て──不機嫌になる俺。
『ふははっ、お前、ちょ、すっげぇ似合ってるぞ』
「あっそ。最ッ高に嬉しかないね」
シャルが俺の姿を客観的に、それでいて非常に良く教えてくれた。テメェ許さんぞ。
控え室から出ると、非常に嬉しくない類いの声がクラスメイト全員から掛けられる。
「どうです?どこかキツい所や小さいところはありますか?」
「残念極まりないが完璧だ。文句があるとしたら、少しばかり冗談がキツい事ぐらいか」
「心が小さいですね」
女にしては自然な、しかし男にしては不自然な膨らみを指さして製作者学級委員長に文句を言うが取り合ってもらえない。
「ほら、皆さん散って散って!接客組はすぐ着替えて、厨房組は準備!今日休みの人は用事があればメッセージで呼びますが、それまでは休みです!二日目、頑張りますよ!!」
各自が思い思いの声を上げ、その呼びかけに呼応する。
「…なぁ、昨日って繁盛した…んだよな?」
「えぇ。常に人でいっぱいでしたよ」
「………。」
一階に二人用の座席が四つ、カウンター席は四つ。
二階には二人用の座席と四人用の座席がそれぞれ三つずつあったはずだ。
それが全部埋まっていたのか…よっぽどだったのだろう。
「あぁ、そういえば昨日、そんなサービスはやっていないと言いましたし、いないとも言ったんですが」
「ん?」
ふと何か思い出したらしい学級委員長が俺に向けて声をかける。
「レィアさんをわざわざ指名してきた人がいましたので気をつけてくださいね?」
「………今からでも宿に逃げていいか?」
「ダメです」
逃げたい。今すぐ。
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