大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

起床と勇者紋

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「……………くぁ」
昨日丸一日寝たせいで、昨日の夜は全然眠れなかった。
その癖中途半端に寝たような起きたような状態だったため、微妙に眠気が身体を包んでいた。
とにかく、いつもよりかなり早く起きた俺は、着替え等を突っ込んであったバッグに手を突っ込み、新しい服を取り出す。昨日のボロ切れと化した服?あれはまた今度、時間がある時に少し繕って着られる物にする。
それはさておき、着替えながらに身体をあちこちを一応チェック。
昨日の傷はやはり痕が残っていて、消えそうにはない。
ま、既に背中あれだけ勇者紋を背負ってる訳だから、今更一つぐらい増えた所で…と思う気持ちはあるが、やはり身体に消えない傷があるというのは何となく嫌なものだ。
痕になってしまったものは仕方がない。服を着て着替え終わると、シエルの方を見る。
昨日は余程繁盛したのだろう、俺が部屋に戻った頃には既にぐったりと眠っていた。あぁ、ぐっすりではない。ぐったりと。
今も睡眠を貪るようにして寝ている彼女だが、確かシエルに割り振られた役は接客だったはず。小さな身体で働く彼女は一番大変だっただろう。
まだ朝は早く、日は昇ってないので、起こす必要は無いだろう。
そっと頬を撫で、全く反応しないシエルを確認してからマキナに話しかける。
「マキナ、起きてるか?」
『はい・マスター』
返事は即座に返ってくる。そう言えば、こいつ寝ないんだっけ。
小さく、シエルを起こさないように気をつけろと囁くと『了解しました』と素早く返ってくる。
「一つ、俺についての事だ。この事についちゃ、絶対に他言は無用だ」
安っぽい椅子に腰掛け、鎚に手を軽く乗せて切り出す。
『了解しました・どうぞ』
「俺の中にはもう一個人格がある。それが表側…身体を操る事はないが、色んなサポートをしてくれたり、俺が知らない情報を教えたりしてくれる事がある」
マキナは黙ったままだ。
「俺の中にそういう存在がいる、と言うことを覚えておいてくれ。それだけ──の、前に」
そうだ、一つ忘れてた。
シャルもこれを確認しないとか抜けてんな。
「マキナ、お前は俺の事をどこまで知ってる?」
『全てです』
答えは即座に返ってくる。
『身長・体重・癖・性別・体質・思考・過去・スキル・ありとあらゆる事を知っています・ですが』
唯一──と、続けるマキナ
『マスターの奥の手・これに関しての情報・マスターの目が戦闘時・自動で赤くなる現象についてなど・本来は起こり得ない欠落が生じています』
「…ふむ」
つまり、《勇者》に関しては分かっていないという事か?
背中の《勇者紋》を思い浮かべつつ、マキナに確認をとる。
「それに関しては全く分かっていない?」
『恐れながら・勝手にマスターの記憶と照らし合わせて・予測はついています』
あぁそうか、俺の記憶は過去として記録されてあるから。
「よし、それも他言無用だ。今度しっかり教えるが、今はダメだ」
『了解しました・マスター』
手を離し、もういいぞと言い、返事も聞かずに思いっきり身体を反らして天井を睨む。
なんとなく目に入ったシミをじっと見、今日の事を考えると、思わず口から一言漏れた。
「………ま、メイドよりかマシか」
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