大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

文字の大きさ
上 下
661 / 2,022
本編

防衛前と面子

しおりを挟む
今夜俺の防衛戦の手伝いをしてくれるのはなんと、いつだったか俺に「戦い方を教えてくれ」とクアイちゃんとリーザと一緒にお願いした男子くんと女子ちゃん。
ついでにアーネもいるが、アーネは基本控え室で寝てる。
まぁ、昨日も言ったが、魔法使いは今回の防衛戦においてはほとんど置物だからな。必要になれば起こせばいいが…アイツ、起きるかな?
一階には俺と女子ちゃん、二階には男子くん、控えにはアーネ。
あぁ、なんで男子くんだけが二階にいるのかと言うと、そこのバルコニーから外を見下ろして敵が来ないかどうかチェックしているためだ。
昨晩はさっさと寝たが──。
「あれ?教官は寝ないんですか?」
「………。」
学級委員長から貸し出された鍵を手で弄びながら、今かけられた言葉の意味を咀嚼する。
「その前にさ…俺、未だに教官って呼ばれてんの?俺何も教えてないんだからさ、それ止めない?」
そう言ってみるが、女子ちゃんは小首を傾げてもう一度同じセリフを俺にかける。
「で、なんで教官は寝ないんですか?」
「それ、普通は逆じゃね?普通聞くなら、もう寝るんですか?、とかじゃねぇの?」
「えー?だってアーネちゃんから聞いてましたしぃ」
「アーネから?」
あぁ、そう言えばアーネが伝えていてもおかしくはないか。
「いや、今日は俺がずっと起きとく。今日、万が一があるとヤバいからな」
割と割愛していたが、実は初日も二日目も昼の襲撃があった。
俺がいる時は俺が出て、俺がいない時はクラスメイトが力を合わせて撃退していたそうな。
それが今日、初めて一度もなかった。
つまり、今晩は何かあるはずなのだ。
俺が気遣うのも何か変な話だが、じゃないと西学の生徒の聖学祭…いや、西学祭か。ともかく、祭りはほとんど失敗になる。
三日目夕暮れ時の時点で、六ヶ所のポイントの所有は聖学が四に西学が二。
二年旧クラスと一年旧クラスのポイントが落とされ、西学の手に落ちたらしい。
リーザからのメッセージを受け取ったルト先輩から聞いた話だと、モンスターハウス用のモンスターの着ぐるみを受け取りに行く際に薄くなった店の方を奇襲されたらしい。
用意はほとんど終わっていたので、今晩奇襲し返して奪還するらしい。
つまり、西学あっちも同様の事を考えているはずだ。
「えー?でもぉ、ここが狙われる確率ってひくいんじゃないですか?ほら、ここはずっと防衛成功してますし、二つ名持ちはいるしで、相手は避けそうじゃないですかー」
「本当にそうか?残っているのは一年新クラス、二年新クラス、三年合同クラス、二つ名の四ヶ所だ。二年新クラスには《雷光》と…《臨界点》もだっけ?あの二人がいる。三年合同クラスは二つ名クラスとは言わないにしてもそれに近い化物の集まりだし、《勇者》と《逆鱗》、さらには《不動荒野》もいる。二つ名の所はいうに及ばないな?」
もっとも、《雷光》は二つ名の所の防衛をしているので、二年新クラスの防衛力は若干落ちているのだが、それでも《臨界点》が何とか…あれ、あの火力大丈夫なのか…?まぁ、何とかなるだろ。
「つ、つまり…もしかして…そのぅ…」
わかりやすく顔を青くした女子ちゃん。おい、だからあんな気楽にしてたのか?
「…まぁ、二つ名持ちが一人しかいなくて、一年生しかいないとなれば狙われやすいだろうな、って予想はつくよな?」
「れ、レィアさん!クラネシナさん!」
と、男子くんの焦った声。
「あぁ…来た?」
端的に聞くと、首を千切れんばかりに縦に振る。
…シャル、サポート頼むな。
返事は聞かずに、俺は銀剣と《千変》を起動した。
しおりを挟む

処理中です...