大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

報告と変化

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「やぁっと終わったか」
特段凝ってはない肩をぐるぐると回しながら、学校長室を出てそう呟く。まぁ、やっと終わったと言いはしたものの、実際は三十分程しか経ってないようで、丁度いい感じに昼となっていた。
とりあえず、報告諸々は一応終わった。
まぁ、報告と言っても大したことは言ってないし、一週間で何があったかを俺が一方的に聞かされていたのだが。
まずこの一週間……というか、先日の襲撃があってから、大きく変わった事から数えていこう。
一つ目は学校のカリキュラムが変わった。
礼儀作法とかは根こそぎ無くなったし、そもそも座学がかなり少なくなった。
じゃあ代わりに何が入れられたのかと言うと──当然だが、実戦訓練が増えた。ヒトの減った今の聖学では、個人の戦力を上げるしかない。こうなるのもある種当然と言えた。
加えて次。生徒達には伏せられていたある情報が公開された。
それは先生達の死傷者リスト。何故先生達のリストだけを隠していたのか。
理由は至極単純。そこに居てはいけない名前がひとつあったのだ。
その名はウィルクライン・アウラング。僅か一年前まで《勇者》として指折りの実力を持っていた彼が、死にこそしていないものの、この戦いで致命的な重傷を負ったのだ。
下半身不随。魔族の魔法から生徒を守るため、文字通り身を呈して守った結果がそれらしい。
「うーん、その場にいた生徒が彼に回復魔法を使ったらしいんだけど、そのせいで神経が変に捻れて治っちゃったらしいんだよね。おかげで一命は取り留めたけど、代償は大きかった」
と、保健の先生はそう言っていた。
「下半身……というか足が動かないらしいんだ。彼。感覚も無くなってるらしくてね。身体開いて神経の形とか直したら動くようになるかもしれないけど、少し考えたいらしい。うん、もしも失敗したら、それこそ下半身が全く動かなくなるかもしれないしね」
聞けば、これを治すのは至難の業らしく、『そういう形』として治ってしまったので、回復魔法も治癒魔法も効きにくいそうだ。
なんにせよ、今のウィルは完全に戦力外。学生時代から複数の魔族を倒していた《勇者》という頼れる心の拠り所が無くなり、聖学は一時的に混乱に陥ったらしい。
加えて三つ目。オーリアンが王都に帰ったらしい。
しかもタイミングが悪く、ウィルの件が表に出たその日に突然「んじゃ帰るわ。頑張れよ若人」と言ってそのままさっさと出ていってしまったらしい。
当然混乱は加速したが、《雷光》が生徒を一喝。
「貴様らは自分達の意思でこの場に残った、誇り高い戦士だろうが!一体いつまで他人に守って貰うことに甘んじる!?お前達が目指すのは一体何だ!?ただの戦士ではなく、それすら守れる《英雄》だろうが!!」
そこから一日で立ち直ったのは流石聖学と言った所か。
あとは……とりあえずはこの辺でいいか。
あぁ、ついでにアーネのことにも触れておいて、次の話に入りやすくしておこうか。
どうやら、アーネが本格的に魔族の内偵者を探し始めることになったらしい。
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