大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

モノと通信

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「起きたか。気分どうや?」
「最悪だ。頭がガンガンする。視界もちょいぐらつくな。あと身体がだるい」
そう言って身を起こすと、頭の芯が強く痛む。大丈夫なのかこれ。
「ほぉ、じゃあ魔法の副作用とかは大丈夫そうやな。けどそれ多分脱水症状起きかけてるで」
そりゃ、こんなところで寝てりゃそうなるか。早く出た方がいいな。
「水ねぇ?」
「あるけど、飲めば治るもんやないぞ。寝とくんが一番かもしれんわ」
と言いつつ、水筒を渡してくれるのは優しさだろうか。
「で、どんだけ経った?」
「きっかり十分や」
幸運なことに、あの中と外では時間の流れ方が少し違うらしい。本当に良かった。
「そんで、マキナどうやった?」
「ん……」
ぶっちゃけ、マキナの話聞いて、真っ向から「ふざけんな」と言って終わっただけだから、どうなるかは分からないんだよな。
「まぁ、マキナの意識自体はあったぞ。破損はしてたが、そこまで問題じゃなさそうだった。あいつ自身も身体さえあればまた元通りにやれるってさ」
「そうか。なら良かったわ」
とベルが言った後、少し間を開けて彼女が「なぁ」と俺に声をかける。それに俺は「なんだ」とだけ聞く。
「マキナ、使えるけ?」
「どういう意味だ?」
そう言いつつ、一応「問題ないが」と答えてはおく。するとベルは目を細めながら語り始めた。
「どうもこうもそのままの意味や。あれは特殊な鎧にウチのスキルで出来た精神を封じ込めたイレギュラーの塊や。ま、モノに精神ちゅうのも、ちょいおかしい話やけどな」
「で?それが?」
「あえてこの言葉使って直球で言うで。マキナは生きとる。心臓が動いてる動いてないとか、そもそもモノやんけとか、そういう馬鹿なこと言っとるんやないぞ。アレは自分で考えて成長するし、出来る限りの工夫もする。思考も発言も、多少おかしくてもヒトと大差ないんや。悩みもするし、当然迷走もするやろうな」
「……何が言いたい?」
「やからこそ、馬鹿な事で悩むこともある。間違えることもある。きっとな。そんだけの事や」
「まるで見てきたみたいに言うんだな」
口には出さず、ただそう思っただけだったのに、うっかりその言葉が出た。
「ん?何がや?」
「あぁいや、何でもな──」
その時、心の奥底で、俺は何かが反応するのを感じ取った。
即座に視線をマキナが入った袋に向ける。
その直後、袋の中から声がした。
『ます──ター』
「よぉ。遅かったな」
声にノイズが多い。それでもマキナは必死に声を出す。
「何用だ?」
『チョウセ──、終わっ……ない、ので…短く。──ます』
返事をする前にマキナが次の言葉を続けた。
『では、それでも私はいずれ貴方に追いつきます。貴方に誓って』
先程のノイズ混じりのそれと同じものが言ったのだと、にわかには信じられないような、鮮明な言葉が聞こえた。
「あぁ。俺も期待してる」
それだけ言うと、マキナは再度沈黙をした。
「ま、成長はしてるさ。間違いなくな」
そう言うと、ベルは「みたいやな」と、どこか安心したように言った。
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