大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

告白と血 終

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「はっ、シャルよぉ。色々と突っ込み所はあるが、仮にそのアベルが《勇者》になれたとして、純粋な《勇者》であるお前と偽物の《勇者》の間に生まれた子はどうしたって《勇者》だろ。アーネがお前の孫だって言うなら、その親はどうやって子を作ったんだよ」
『正直知らん。一応推測を立てるなら、《全なる一》は汎用性は高いが、出来ることに限度はあった。《勇者》という存在になりきれず、別の何かの存在を混ぜて傘増しをした《勇者》になっていたとしたら、一番《勇者》に近しい存在と言えばヒトだろう』
「……つまりなんだ、完全な《勇者》じゃなくて、ヒトを混ぜてたってことか?」
この際、出来るかどうかはさておき、ヒトを混ぜていたというのなら、一応《勇者》と《勇者》の子でありながら、《勇者》とヒトの子であるとも言える訳か。
なら、このハーフがヒトと子を作っても同じ理屈で子は生まれる……はず。
『ま、俺も子を産んですぐに預けて戦場に出たからあくまで予測だがな。だが見た感じ、そしてお前もまた感じたように……いや、感じられないように、アーネの両親からは《勇者》の気配がしない。アーネ本人からも同様だ。何らかの原因で、《勇者》の力そのものもは受け継がれなかったと見るべきだろう』
「結果、アーネには《勇者》の血に対する耐性だけが残った、って訳か」
『恐らく』
しばし沈黙。
そして大きく息を吸い、鼻から長く、抜くように息を吐く。
「証拠は?血が繋がってる」
『んなもん簡単だ。顔が俺に似てんだよ』
いや知るか。まさかそれだけか?と思っていると、まだ一応続いた。
『あとは俺のスキルと似てる。元の俺の能力は…例えばそうだな、剣の切れ味と長さを二倍にするみたいな、倍率を掛ける能力だった』
そう言えば当たり前の話だが、ナナキとシャルではスキルが違うのか。
アーネの能力は先の例で言うなら、剣の長さを短くする代わりに切れ味を数倍にするみたいな能力かね。実際はどうかさておいて。
「…他は?」
『目とか髪の色が俺と全く一緒』
「それ容姿と被らないか?いや、まぁいいが……つかアーネの親の名前を聞きゃいいか。その子に何て名前付けたんだ?つか男?女?」
そう聞くと、シャルが黙る。
『いや、その、名前は……つけたんだが……急いでて、預けた奴に名前を教えずに行って、そのまま戻らなかったから多分名前は違うと思う。女の子だった』
「チッ、馬鹿かお前……まぁいいや。で、名前は」
『使われてないだろう名前を聞く必要は無いだろ?』
「実際どうかは聞かにゃ分からんだろ。ほら教えろ」
何隠してんだ。たかが名前だろ。ネーミングセンスがどうとかは笑うつもりは微塵もないから。そう言ってしつこく聞くと、シャルは小さく、今にも消え入りそうな声で答えた。
『……レイア』
「………。」
なる、ほど?
確かに前々から妙だ妙だと思っていなくもない名前だったが、そういう由来だったか。レィアはともかく、レイアで女の名前なら割とよくある名前だし、腑に落ちた。腑には落ちても、気分がいいかどうかはまた別の話だが。
「ま、そうか。今度アーネに聞いてみるとしよう」
この際、名前についてはあまり触れないでおこう。
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