大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

スキルと寝起き

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一晩明けて、俺はベッドから天井を見上げつつ、一人昨日の考察について思い出していた。
…結局、というか。
情報が少なすぎた。
どれだけ頭を捻っても、《臨界点》の黄色がかった液体を使った爆炎は、予想しか出来なかった。
個人が尋常じゃない練習を経て習得した技術や、あるいは魔法ならギリギリ分からないこともないかも知れなかったが、不確定要素であるスキルが絡んでくる可能性が非常に高いため、どうしてもかなり不確定な予想しか出来ない。
そもそもこの学校で、スキルに一切頼らずにいる生徒を、俺はクアイちゃんぐらいしか知らないし、それ以外の生徒はどんな形であれスキルの恩恵を受けている。
大雑把に分けると。
ほぼ常に使っているが、戦闘などに応用も出来る、俺のような常時発動型。
アーネやシエル…あるいは《雷光》のような、戦闘において、それを軸にバトルスタイルを確立させた戦闘型。
あとはラウクムくんのようなここぞと言う場面で力を出せる切り札型などか。
他にも多岐に渡るだろうが、切り札をそう簡単に俺に見せる訳もないだろうし、切り札型はないだろう。
だが、逆に言うとそれ以外ならなんでもあり得そうだ。
極論、触れたものをすべて爆弾に変える、どこかで有名になっていそうなラスボスのみたいなスキルの可能性も無きにしもあらずな訳で。
つまりは、俺達の頭は結局、思考放棄を選んだ訳だ。
出来る事なら、あの《臨界点》が誰かと戦っている所…いや、そこまでは言わないにしても、あいつがもう一度あの試験管を使う所を見ることが出来れば……。
が、意図しての事だろうが《臨界点》についての情報は非常に…というか異常に少ない。
もはや俺と《臨界点》が敵対しない事を祈るしかない。
「…やっぱり情報が少なすぎん…よっ!!」
未だ寝ているアーネとシエルを起こす意味も込めて一気に跳ね起きると、アーネの抗議の声がしたが、気にしない気にしない。
ちなみにシエルは静かに用意を始めていた。
さて、俺も早く着替えて支度を…。
「……昨晩は遅かったんですのね…」
「…!?」
「…なんで驚いているんですの?」
「…いや、お前が朝、マトモに起きているのって見たことなかったからな」
いつもなら、明らかにヒトの言葉じゃない音を口から漏らすことはあった。が、こうして喋るというのは軽く異常事態。
「口から心の声が漏れてますわよ。異常事態とは酷いですわね」
だらしなく着崩れたパジャマの裾を直そうともせずにアーネがそう言う。
「おっとすまん。まぁ、隠す気は無いんだがな。むしろ、羞恥心とかそう言ったものを覚えて、これから俺の手を煩わせないようにしてくれ」
俺が知りうる限り、女子ってのは男子がいればその裾を正したりするモンだと思っているんだが…。
………いや、よく考えれば、俺が知ってる女子ってのはナナキしかいない訳で、彼女もよく考えればこんなモンだったか。
「あの子…シエルは寂しがってましたわよ」
「…あぁ」
そうか、自分のことだけ考えてちゃダメだったな…。
夜練…どうするかな…。
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