大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

リハビリと相手

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いつだったかに、魔獣には二種類いると言ったのを覚えているだろうか?
結界の外で、何も無いところから発生する魔獣と。
結界の内で、既にいる獣が突然変異で成る魔獣と。
前者は固有の種族名が与えられ、全体的に強力であり、後者に固有の種族名が与えられることはほとんど無く、外の魔獣と比較してやや弱い。
さて、そういった中で今日戦う魔獣は少しばかり…異色。
「狂犬…マッドハウンドか」
『狂犬?…まぁ確かに、これは犬………か?』
フィールドの中、緩く肩に銀剣を担ぎながらそう呟くと、シャルが微妙に同意しかねる風に頭の中でそう言う。
狂犬マッドハウンド
見た目はその名の通り犬。犬種?詳しく知らんが、ドーベルマンに近いと思う。
もっとも、三倍怖くて、十倍デカくて、百倍厄介だが。
非常に強靭な四肢。尽きることないスタミナ。一度噛み付けば、対象が千切れるまで絶対に話さない牙。
どこをとっても非常に強力で、実際に広い広野などで相手取るとそのフットワークと凄まじい咬合力によって、あっという間に四肢をぶちりと持って行かれるケースが多いようだ。
さて、そんなマッドハウンド、ここまで聞けば普通の魔獣と大差ないように思うだろう。
確かに強いが、逆に言えばそれだけ。
強い魔獣というのは、掃いて捨てるほどいる。
が、しかし。
マッドハウンドは、個にして軍。

「全く…嫌なヤツ連れてくるねぇ」
ほかの班を見ると、一時的に合同班になっているらしい。張られているフィールドの数が明らかに少ない。
しかしその分、フィールド一つひとつの広さは大きくなり、広く大きく使えそうだ。
ちなみに、俺は元々一人で広かったフィールドなので変化はない。
そのフィールドの中に、他の班のマッドハウンドと比べても明らかに大きな体躯を誇る黒い犬。
それが四肢を鎖に繋がれ、暴れ回っている。
…よく縛れたな。
そんなことを思いつつ、担いでいた銀剣を下ろし、構える。
右肘を大きく上げ、切っ先をマッドハウンドに向けて静止。
いつ始まってもすぐに対処できるように。
久しぶり過ぎるといってもいい程久しぶりに魔獣と戦う。
それがコレとは、流石に少しやり過ぎな気がするが、自分から望んだのだから、仕方ない。
『緋眼を起こせ。あと、肩に力が入り過ぎだ』
シャルに注意されてから気づき、緋眼を起動、少し肩から力を抜く。
『らしくないな』
まぁ、相手が相手だしな。
シャルが『それってどういう──』と言ったところで、先生が鎖を外すと訓練所に響き渡る声で伝えると、次の瞬間には鎖が外され。
黒い暴風が吹き荒れる。
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