大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

整理と状態

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ここで一度、状況を整理したい。
《緋眼騎士》こと俺の率いる聖学パーティの今現在の戦力についてだ。
まず俺。魔族との連戦、《腐死者》との戦闘、そしてアーネの治療で心身共に年末のパレード並に疲弊が溜まってる。更にマキナに貯めておいた血はもう空。半休止状態スリープモードにして、最低限の事を俺の指示で出せるようにぐらいはしてあるが、それもそのうち使えなくなる程に血を使い切った。身体に残っている血も、さて一体どれだけ使える事やら。
特に《腐死者》から一発魔術を貰ったのがかなり堪える。多分また肋骨が逝ったんだろう。後で補強しておかなくては。
次にアーネ。俺と行動を一緒にしていたので似たようなもの。魔力も空とは言わないが、かなり甘く見積って残り三割程しかない。魔力や魔法については門外漢なので何とも言えないが、真正面から魔族と戦うには正直心許ないのではないだろうか。
未だ意識は戻らず、俺が髪で巻き付けて背負っている状態。やはり体温が僅かに高いようだが、うなされている様子はない。身体が体力の回復に務めているのだろう。
最後に《勇者》。俺達とはぐれた後、一人で魔族を片っ端から狩りながら塔へ向かっていたらしい。しかしその途中でギガースが突然方向を変えた事に《亡霊》が反応し、急いで方向転換。俺達の方へ魔族を倒しながら来たらしい。
その際、大量の血を消費、血海も発動出来なかったので相当の消耗をしたようだ。
身体へのダメージは全て肉までで、骨や内臓まで届いた物はひとつもないというのは流石本物の《勇者》と言った所。だが、疲労は溜まるし傷がつけば体力は落ちる。普通に辛いのは同じか。
で、だ。
今魔族の方には、少なくとも《魔王》の器であるシエルと、俺の持っていた魔力を生み出し続ける石との二つがある。
《魔王》を呼び出すのにどんな条件があるかは不明だが、急な魔族の行動や、《勇者》視点の長い目で歴史的に見ても、明らかに異様な速度で《魔王》が出る条件らしき物が整いつつある点等から、やれるのはほぼ間違いないだろう。
いや、と言うよりも。
俺の持っていた石では無く、狭間の子で魔力を代用しようとしていたあたり、もしかすると「やれる」のではなく、「やるしかない」のかもしれない。
だとしたら尚更厄介。それが成功であれ失敗であれ、シエルの身に危険が及ぶのは変わりない。
だが一方で、少々妙な所がある。
先程《勇者》は一時間はかかってない程度はアーネに付きっきりだったと言っていた。言い方的に、どう好意的にとっても三十分は過ぎているだろう。
それだけ時間をかけているはずなのに、どうも《魔王》が出た様子も気配も感じられない。
そして未だロクな反応がない西学の奴らはどうなったのか。少なくとも都市を落とす前は居たはず。これだけ魔族が出たのだから、もしかすると既に死んだか。
等と思いながら塔へ向かって走って行く。
流石にあれだけの魔族と戦えば、この都市の魔族も狩り尽くされたか。
塔へは、まるで何の邪魔も無く辿り着くことが出来た。
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