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外伝
死の理由
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「副隊長!大丈夫ですか!?」
「……。」
その声に反応せず、副隊長は音もなく腰からやや短めの短剣を取り出し、両手で握り逆手で構える。
「フ──ッ」
鋭く息を吐くと同時に振り下ろした短剣は、確実に魔族の額に突き刺さり、さらに硬い頭蓋をも叩き割り、脳を完全に潰す。
「──大丈夫だ。もういいぞ」
「やはり魔族で?」
「あァ。だが…妙だな」
「えぇ、そうですね」
ユンと副隊長が頷き合い、ゼッペルがほかの隊員を連れて少し遅れてやって来る。
「敵は…魔族でしたか。副隊長が?」
「いや、オレじゃねェ」
血と肉がこびりついた短剣を一振りし、汚れを一度に振り払う。
「オレが来た時には既に死んでた。お前達の内、誰か殺ッたか?」
分かりきったことを聞く副隊長。当然、誰も首を縦に振らない。
「私達が出来るわけないじゃないですか。力量的にも、スキル的にも副隊長位しか魔族の単独討伐なんて出来ませんって。それにその魔族、とっくの昔に冷えきってるじゃないですか」
「だよな──それと一つ訂正だ、キキ。喉を一裂き、一撃で魔族を仕留める技量なんざオレにはねェよ」
てことは、だ。副隊長がそう言いながら鋭い目で辺りを見渡す。
周りの兵士達も、緊張を膨らませる。
「新しい敵はそこに転がってる魔族なんかよりもずっと強い、ってことだ」
その存在がどこへ行ったのか。
少なくとも自分達とはすれ違わなかった。
では、引き返したのか?
いや、違う。
絶対にこの村のどこかに、その存在がいる。
戦士としての勘が、副隊長の警鐘を最大限に鳴らしていた。
どこだ?どこにいる?
探していないのは、もうこの広場ぐらいで──。
──まさか。
「…副隊長?」
背中に背負った、身の丈程もありそうな大剣を抜き放ち、副隊長が広場にある真っ黒なオブジェクトに近づく。
「一体何を──」
ぎらり、と獰猛な銀の輝きを放つ大剣を肩当ての上に乗せ、両手で強く握りしめた上で目を閉じる。
僅かに唇を震わせて空気に溶けた言葉は、弔いの言葉か、それとも謝罪の言葉か。
次の瞬間、不意に赤い輝きを放ち出す。
「戦技…《刃断》」
名前がその口から漏れ出ると同時に、さらにその輝きが強くなる。
カッ!と目を見開き、副隊長が目にも止まらない勢いで剣を振るう。
その場にいる誰もが、動作の始めと終わりしか見えなかった。
肩に担がれていた大剣が地面に突き立った瞬間、黒い死体の山は真っ二つに割れた。
「…スッゲェ…」
そう呟いたのは誰であっただろうか。
「ッチ。ハズレか…この中に潜んでるかも、と思ッたんだけどなー。んじゃあ帰るぞー」
「「「「はい!」」」」
その時だった。
モゾモゾと、死んだハズの魔族の死骸がむくり、と起き上がる。
いや、違う。
魔族の腹にあたる所から刃物が突き出、そのまま引き裂かれる。
兵士達が注目する中、ゆっくりとその中にいた、彼女が起き上がる。
「…うるさい」
真っ赤な頭と目をした少女が。
「……。」
その声に反応せず、副隊長は音もなく腰からやや短めの短剣を取り出し、両手で握り逆手で構える。
「フ──ッ」
鋭く息を吐くと同時に振り下ろした短剣は、確実に魔族の額に突き刺さり、さらに硬い頭蓋をも叩き割り、脳を完全に潰す。
「──大丈夫だ。もういいぞ」
「やはり魔族で?」
「あァ。だが…妙だな」
「えぇ、そうですね」
ユンと副隊長が頷き合い、ゼッペルがほかの隊員を連れて少し遅れてやって来る。
「敵は…魔族でしたか。副隊長が?」
「いや、オレじゃねェ」
血と肉がこびりついた短剣を一振りし、汚れを一度に振り払う。
「オレが来た時には既に死んでた。お前達の内、誰か殺ッたか?」
分かりきったことを聞く副隊長。当然、誰も首を縦に振らない。
「私達が出来るわけないじゃないですか。力量的にも、スキル的にも副隊長位しか魔族の単独討伐なんて出来ませんって。それにその魔族、とっくの昔に冷えきってるじゃないですか」
「だよな──それと一つ訂正だ、キキ。喉を一裂き、一撃で魔族を仕留める技量なんざオレにはねェよ」
てことは、だ。副隊長がそう言いながら鋭い目で辺りを見渡す。
周りの兵士達も、緊張を膨らませる。
「新しい敵はそこに転がってる魔族なんかよりもずっと強い、ってことだ」
その存在がどこへ行ったのか。
少なくとも自分達とはすれ違わなかった。
では、引き返したのか?
いや、違う。
絶対にこの村のどこかに、その存在がいる。
戦士としての勘が、副隊長の警鐘を最大限に鳴らしていた。
どこだ?どこにいる?
探していないのは、もうこの広場ぐらいで──。
──まさか。
「…副隊長?」
背中に背負った、身の丈程もありそうな大剣を抜き放ち、副隊長が広場にある真っ黒なオブジェクトに近づく。
「一体何を──」
ぎらり、と獰猛な銀の輝きを放つ大剣を肩当ての上に乗せ、両手で強く握りしめた上で目を閉じる。
僅かに唇を震わせて空気に溶けた言葉は、弔いの言葉か、それとも謝罪の言葉か。
次の瞬間、不意に赤い輝きを放ち出す。
「戦技…《刃断》」
名前がその口から漏れ出ると同時に、さらにその輝きが強くなる。
カッ!と目を見開き、副隊長が目にも止まらない勢いで剣を振るう。
その場にいる誰もが、動作の始めと終わりしか見えなかった。
肩に担がれていた大剣が地面に突き立った瞬間、黒い死体の山は真っ二つに割れた。
「…スッゲェ…」
そう呟いたのは誰であっただろうか。
「ッチ。ハズレか…この中に潜んでるかも、と思ッたんだけどなー。んじゃあ帰るぞー」
「「「「はい!」」」」
その時だった。
モゾモゾと、死んだハズの魔族の死骸がむくり、と起き上がる。
いや、違う。
魔族の腹にあたる所から刃物が突き出、そのまま引き裂かれる。
兵士達が注目する中、ゆっくりとその中にいた、彼女が起き上がる。
「…うるさい」
真っ赤な頭と目をした少女が。
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